2019年6月13日 第24号

いま考えている事があなたの未来を作ります

 「ザ・シークレット」。“引寄せの法則”を主テーマにしたインタビューを集めたドキュメンタリー映画でしたが書籍化され、50か国で翻訳され2千万部以上を売り上げる話題作になり、日本でも出版されています。“引寄せの法則”とは、思考が現実になる・精神が物質化するという思考で、近年ニューエイジのみならず世界中の人々に影響を与えている思考です。この考え方は、いまの瞬間最も自分が夢中になれることに集中することで、希望的思いが具現化し人生が好転するというマインドフルネスの幸福理念にもつながりました。自分が夢中になれること、それはすなわち本当の自分が好きな事、望んでいる事であり、そこには唯一無二の自分の個性や本質があります。

 今月は、愛媛県在住のヒカルさんが作られた物語、「雲の上のメリー」をご紹介します。この物語の主人公メリーは自分の直感的な強い思いで、欲しかった物を引寄せます。さあ、そのあとメリーはどうなったでしょう!?

  ヨーロッパの、海に面したとある街から空を見上げると、雲の合間になにか、小さい人影のようなものが見えるときがごくたまにある。それは、幻ではなくて、本当に雲の上に女の子が住んでいたからだ。彼女の名前はメリー、3歳。いつも身にまとっている、ふわふわの白のワンピースが風にたなびく。やわらかな布がたくさん合わさってできた、どこかの民族衣装のような長いワンピースだ。メリーのやわらかいウェーブの栗毛も、生まれてから一度も切っていないから、風が吹くと背中まで長くたなびいている。

 メリーはいつも雲の上にうつぶせ寝をして、雲の合間から、古くから変わらない美しい街並み、美しい海、清々しい山並みを見て過ごす。海面にはたまに魚が上がってくるのが見えるし、クラゲも浮かんでいる。山からは、白い鳥がたまにふらっとメリーの近くを通っては、ちらりとメリーを見るだけで、何も言わずに海のほうへ遊びに行く。メリーも、そんな鳥にはとくにあいさつもせず、ちらりと見るだけでさよならする。

 そんなメリーのすることといえば、いつもの下の世界を見ているだけで、少しつまらないな、物足りないな、とも淡々と思っていた。そう思うのは、ずっとある物が心に残っているからだった。

 ある物とは、雲の下の街で、住人の女の子がつけていた赤い花の髪飾りだ。雲の上から見かけたのだ。赤い花は直径6㎝くらいの大きさのレプリカだったが、とってもきれいな赤色だった。雲の合間で白ばかりの世界にいるメリーには、その赤色がものすごく魅力的に見えた。見た瞬間に、これがものすごく好きだ、と直感で感じた。心の全部に鳥肌が立つような感覚で、色の可愛さにキュンキュンして、見ているだけで気分が上がった。それを最近、物事が分かるようになってきて、「私もあれがほしい」と思うようになっていた。しかし、メリーはどうしても手に入れられなかった。探しに行きたいけれど、もし雲から出たら、落ちてしまうのはものすごく怖かったからだ。

 ある日の夕方、夕立で空が一気に荒れた。いつもならメリーは、嵐が来るときはカプセルに入って身を守り、風に翻弄されながら嵐が去るのを待ってやり過ごしていた。だが、今回はなぜかカプセルに入るのが間に合わず、強い風に体を持っていかれてしまった。そして次の瞬間には、メリーは水の中にいた。海に落ちてしまったのだ。

 海面に浮かびながらメリーは思った。「なんだ、落ちたってどうってことないや。」落ちるときにはあまり怖いと思う暇もなかったし、実際落ちてみたら、海水は意外と暖かく気持ちよくて、メリーを優しく包み込んでくれているようだった。後から思えば、身を守るのが間に合わなかったのは、本当は風にでも飛ばされてどこかへ行ってしまいたいと思っていたから、自然とそうなったのかもしれない。夕立が去った海に浮かぶメリーを、通りがかりの漁船が見つけ、拾ってくれた。

 ずっと上から見下ろしていた街に降り立ったメリーは、身寄りがない子ということで児童養護施設に預けられることになった。施設まで、大人に手を引かれながら歩くメリーには、道すがらの何もかもが新鮮で魅力的に思えた。かわいいアクセサリー、おいしそうなお菓子、おもしろそうなおもちゃ…。こんな世界に触れることができるなんて、夢のようだった。

 施設についたメリーを、施設長のおばあさんが出迎えてくれた。とても優しい人だった。何も知らずに育ったメリーを、施設長も施設のスタッフも温かく迎え入れ、身の回りの世話をしてくれた。施設の子供たちともすぐに仲良くなって、メリーは雲の上での暮らしが嘘だったかのように楽しく暮らし始めた。そうやって楽しく過ごしているうちに、雲の上での感覚や、赤い花の髪飾りのことも、少しずつ忘れていった。

 施設での月日が過ぎたある日、施設長のおばあさんはメリーに話しかけた。

 「メリー、あなたがここにやってきて今日で1年になるの。今日があなたの誕生日ってことにしない? 誕生日プレゼントをあげたいの。何か欲しいものはある?」メリーは悩んだ。「かわいいアクセサリーや服もいいけど、やっぱりおもちゃかなぁ…」

 少し考えているうちに、メリーは思い出した。ずっと、あの赤い花の髪飾りが欲しかったこと。メリーは施設長に雲の上での暮らしのこと、そして赤い花の髪飾りがどれだけ気に入っていたかを話した。施設長は驚いたが、メリーの申し出を温かく受け入れた。施設のスタッフたちも協力して、赤い花の髪飾りを探した。

 数日して、施設長はメリーにプレゼントの箱を渡して言った。「あなたの欲しいもの、探してみたの。同じものではないでしょうけど、気に入ってくれるかしら。」メリーが箱を開けると、確かに赤い花の髪飾りが入っていた。もちろんあのときの髪飾りとは違うのだろう。それにそもそも、物心ついてすぐに見たものだったから、詳しく覚えているわけではなかった。でも、箱の中の髪飾りを手に取って、メリーの心は確かに、ものすごくときめいた。心の全部に鳥肌が立つような感覚で、可愛くてキュンキュンして、見ているだけで気分がすごく上がる赤色。

 メリーは心から強く思った。「あぁ、これだ。この感覚だ。」メリーが心からそう思った瞬間、メリーはパッと消えてしまった。たくさんの布でできた白いワンピースだけが、その場にぱさりと落ちた。

 欲しかった物を手にしたあと消えてしまうメリー。衝撃的なラストシーンです。ヒカルさんは何故メリーが消えてしまったかについて、このように説明してくれました。 「メリーは全くの“無”の状態になりました。心から味わいたかった感覚を味わえて、それでもう十分だから」。メリーが欲しかったのは赤い花の髪飾りではなく、『無』に値するほどの再体験したい感覚だったのです。「するすると自然に出て来た表現は、自分が何を得たいのかを表しているのだと感じてうれしかったです。ずっとめぐりあいたかった感覚だと思いました」。

 ヒカルさんは物語を作ったあとは自分に新しい翼が生えたような高揚感と達成感があり、自分が作り出した主人公は人生の目標なのだと感じたと言います。

 あなたはいま何を考え何を引寄せたいですか?引き寄せのマジックが働くのは、本当に欲しい物がわかった時かもしれません。ノベル・セラピーで本当に引寄せたいものを潜在意識の深いところまで探しにいきませんか?

 


Ojha Emu Goto ノベルセラピスト

 日本で雑誌,広告制作者として活躍していたが、98 年にカナダに移民。光の色波動を用いるZenith Omega Healing( ゼニス・オメガ・ヒーリング)のマスターティーチャーヒーラー。月刊ウェブ・マガジン “Cradle Our Sprit! ” www.ojha-angel-vancouver.net / 編集長。しらゆきのゆめ出版代表。

 著書に「アカシック・レコードの扉を開ける〜光の鍵」明窓出版(2010 年)。 ノベル・セラピーのテキストを兼ねた小説集「しらゆきのゆめ」を昨年末出版した。同時に 『しらゆきのゆめ』出版を設立し、バンクーバーの日系社会のみなさまの自費出版をお手伝いさせていただいている。

 昨年3月に日本縦断ノベル・セラピーワークショップツアーを行い、現在ノベル・セラピーで誕生した物語を Pod Cast での世界に向けたインターネット配信を準備中。ノベル・セラピーワークショップは随時開催している。ノベル・セラピー協会HPは、https://ojhaemugoto.wixsite.com/novel 自費出版及ノベル・セラピーのお問い合わせはThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. まで。 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。