2019年6月6日 第23号

 女性のきれいな動きをリードしながら、堂々と胸を張り、自らも一番美しい姿勢を保ってステップを踏む。その華麗な姿に観客の視線が集まる。ー社交ダンス界の第一線で活躍する指導者のジミーさんこと竹下次郎さん(東京都調布市在住65歳)。彼をよく知る人たちは「ジミーさんは周りを幸せにするオーラのある人」と熱を込めて語る。

社交ダンスと第二の職場と

 ジミーさんには社交ダンスの日本ダンススポーツ連盟の名刺と、もう1枚「職業紹介事業アドバイザー」の名刺もある。二つの名刺を手にするまでのストーリーから、毎日が新鮮になる生き方が見えてくる。

ハードな生活の中でもダンスを継続

 1980年からミシンの製造機械のメーカーに勤め、輸出担当として海外経験を重ねていたジミーさんがダンスと出会ったのは1985年のソ連(現ロシア)のレストラン。現地の女性たちの手を取り、楽しそうにダンスを踊っていた「ダンパ」世代の上司たちが羨ましくて仕方がなかった。「『一緒に踊ってください』と言えばあとは言葉はいらない」点も魅力に映り、日本帰国後、勇気を振り絞ってダンススタジオへ。

 そのダンスを通じて人生のパートナーと出会い、共に競技ダンスに挑戦した。ハードな仕事をこなしながらの時間のやりくり、金銭面の負担は相当なものだったが、ダンスそのものの爽快感、人に注目され、順位が上がっていくワクワク感は他に代え難いものだった。

 そして念願のダンススポーツの指導員と審判員の資格も取り、2001年には社交ダンスサークルを開始。現在は約100人の生徒を抱えている。「まったくのド素人だった生徒さんがうまくなっていく。それが楽しい」。2017年にはアジアオリンピック評議会が開催する第5回アジアインドア&マーシャルアーツゲームズに出場するダンススポーツの日本代表専属コーチに選ばれ、中央アジアのトルクメニスタンへの遠征を経験した。「これまでダンスにかけたお金で1DKのマンションが買えるでしょう」。こうした思い切りの良さは、メーカー社員からの転身の意気込みにも現れていた。

次の人生への方向性を 決めたもの

 メーカー勤務を続けながらも 「自分を進化させる場はここではない」と後半人生の方向性を探っていた中、55歳で人事総務部の人材開発責任者に就任。その業務を通じてコーチングなどの外部講師たちとの出会い、講師の人間的魅力にぐいぐい引き込まれたことで、その後の方向性が見えてきた。

 目指したのは産業カウンセラーだ。そのためまず、産業能率大学の心理カウンセリングコースの3年生に編入を計画。家族会議を開き、「今から大学に行ってどうするの」と訝しく思う娘にも、思いを伝えて理解してもらった。

 勤めを続けながら58歳から2年間の通信教育を受講。休みをやりくりして40日間のスクーリングに出席した。「我が人生で最高に勉強した時」だった。「必死で勉強しても覚えられないんですよ。試験では漢字が出てこない」。それでも若い人たちとのクラスは楽しく、29科目の試験をパスして産業カウンセラー受験資格を手にした。

厚生労働省の委託事業を遂行する講師として

 会社を退職後には、さらに講座を受講して産業カウンセラーの資格を取得。現在は職業紹介事業の社団法人に属して、全国の職業紹介事業者が受ける法定講習会で講師を務めている。これまでの学びが生かせる仕事だ。ひと月に4回も地方を回るのはハードだが、営業成績に悩むことも、上司との人間関係のストレスもない。また「高齢であることはメリット」になっており、同じ講師役には最高齢で84歳の人物がいるという。

挑戦し続ける

 こうした目標達成の力になったのが夢を具体的に描く手法だった。メーカー勤務時代、バランスの取れた幸せにつながる夢を見つめる「ドリームマップ」という講座に参加。自らもその講師資格を取得するほど、その力を確信した。そして東日本大震災被災地の小学校を訪問して自分で講師を担当し、子どもの夢を広げている。「ジミーさん、東京から来てくれてありがとう」。子どもたちの感想文は宝物だ。

 自身のビジョンは「無限の可能性を信じて、新たな夢に挑戦し、笑顔に満ち溢れた仲間と一緒に夢を語り合える輪を広げていくこと」。そして2019年度の健康目標を「毎日適度なストレッチ、上腕二頭筋を鍛える。お酒と適度につきあう。薬と上手につきあっていく」と絵馬に書いた。

 日頃ダンスの生徒に接し、うまくならない人は「いい年だから」と言い訳をしていることに気づいた。ジミーさん自身は「あきらめなければ絶対に成功しかない」と言う。妻からは「あなたはマグロよね。動いていないと死んでしまう」と言われるそうだ。

 動き続ける間に直面する困難は、不満の種ではなく挑戦課題の一つになり、それをクリアするごとに笑顔が増える。周りを幸せにするオーラの生まれる理由が少しわかった気がした。

(取材 平野香利)

 

 

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