2018年7月5日 第27号

 妊娠を希望しながら2年が経過してもなお妊娠に至 らない場合を不妊症と呼んでいます。

 若い2人がたくさんの友人達に祝福されて始まった新婚生活。楽しくて嬉しくてその上充実して夢のような毎日を過していると気がつけば2年が過ぎ3年が過ぎて・・・と言ったケースが良くあるのです。そうしてある日“赤ちゃんつくらないの”とか“赤ちゃんできた?”とか、そうかと思えば“そろそろ孫の顔をみたいな”などと言われる事が増えてきます。言われれば言われるほどその言葉がわが身に突き刺さってくるのです。周りの人は何気なく口にする言葉がどれほどご夫婦を傷つけているかなどはおそらく想像すらしていない事でしょう。言った本人は“傷つけた”どころか“心配して”或いは“思いやって”口にした言葉なのですから。・・・“まだいらないから”と笑ってその場を立ち去って家に帰って流している涙をどれだけの人が知っているのでしょう。・・・・・どうですか?もうそろそろ自分の殻に閉じこもっていないで思い切って妊娠に立ち向かってみませんか?まず身近な事から始めてみましょう。もうご存知の事と思いますが基礎体温を測ってみる事から始めてみましょう。案外色々なことが分かるものです。“毎日朝目が覚めたら動く前に口の中で婦人体温計を使って測るんですよね?!”といった質問をなさる方が良く居られます。まず答えは“ノー”です。こんなにキビシイ仕事などできません!!もっともっと肩のチカラを抜いて緊張しないで出来るときから出来る範囲で始めてみれば良いと思います。朝起きて歯磨きするように習慣になってしまえば結構できてしまうものです。1日、2日、3日ぐらい抜けたからといって気にしなければ良いのです。また続けていけば其れで良いと思いませんか。気楽に始める事の方が大切です。何日分か抜けていてもそこは空欄にしておいて測った日だけを基礎体温表に記録していけば良いのです。日記代わりにエピソードを書き込んでおくと思いがけないヒントが隠されている事も有ります。過労が続いていたり、睡眠時間が短かったり、ストレスが溜まっていたり・・・これらが原因で排卵されない(無排卵)事もあります。過度な恐怖や不安が無排卵をひき起こす事は理解しやすい事柄ですが気がつかないうちに精神的に追い詰められていることもあるのです。あるいは基礎体温で言う低温期から高温期になるときが排卵期と言われていますが、一般的には生理開始後14 日です。しかし月経周期が長い人は排卵も遅れ気味になったり反対に短い人は早くなったりする事もあります。ホルモンの検査や超音波検査によって排卵を推定する方法がありますが基礎体温は排卵の目安を知る上では手軽で簡便な方法と言えます。排卵日と信じていた人が基礎体温を測るうちに全くタイミングがずれていた事がわかった方も居られました。修正や改善できる所は直してみてもまだ妊娠に至らなければ2〜3か月分の基礎体温表をお持ちになって医療機関を受診してみるのも良いと思います。貴方の少しの勇気とご主人の大きな後押しとやがて生まれてくる可愛い赤ちゃんの夢を乗せて受診してみて下さい。どの医療機関でも貴方と同じ目的地、同じゴールを目指して進んで行くのです。皆貴女の味方です。喜んでチカラを貸してくれます。現在では様々な検査法が開発され、また治療法も飛躍的な進歩を遂げています。どうか貴方の前に夢が現実のものとなって訪れる事を願わずには居られません。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

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