2016年8月4日 第32号

 あまり聞きなれない病名かもしれませんが、帯下(おりもの)と痒みが主な症状です。帯下は白色~黄色~緑色調で量が増えてきます。時には膿性、泡沫状で悪臭を伴ったりします。外陰部は掻痒感に留まらず爛(ただれ)れたり、膣の粘膜が赤くはれたり、出血し易く成る事もあります。また一方では人によってですが、殆ど痒みすら感じない方も居られます。これらの原因となるものは、トリコモナス原虫と呼ばれる微生物が膣に感染、寄生して炎症を起します。感染経路は主として性行為によって感染するので性感染症の1 つに数えられています。一方では、性行為のない女性への感染も存在する為、他の感染経路も考えられています。

 トリコモナス原虫は水分のある場所では暫くの間宿主から離れていても生存可能とも言われています。ただし熱には弱く、温泉や湯船の中での感染は否定的ですが、全く偶然に原虫が生存している場所に接触してしまった時などが想定されています。これらを避けるために、慎重な方は衣類をビニール袋に入れたり、下着のまま床に座ることは避ける、入浴時には浴槽の縁などに座らない等、注意を喚起なさる方も居られます。いずれにしても、異常に気が付けば医療機関を受診する事に論を待ちませんが、トリコモナス膣炎は上述のように大多数は性感染症の範疇なので、貴女のみの受診、治療では済まないのです。パートナーである男性の診断、治療が同時に平行して行なわれなければ、ピンポン感染と言われるように治癒に到ることなく病気が行ったり来たりする事になります。絶対に双方同時治療が必要になります。

 トリコモナス膣炎は卵管にまで炎症が波及する事も有り、卵管性不妊の原因とも指摘されています。また生殖器感染に留まらず、尿路系の感染にも波及する事があります。繰り返し何回も排尿したい感じ(頻尿)や尿が残っているような感じ(残尿感)、排尿が終わる頃に感じる痛み(排尿終末時痛)など尿道炎や膀胱炎を惹き起こすことも有ります。一方男性では殆ど症状が無い事が多いので、受診を拒む方も少なくありませんが、男性では尿道炎に留まらず、前立腺炎、精嚢炎を罹患している事も否定出来ませんので、診断、治療が必要である事は申すまでも有りません。

 女性の治療には膣座薬単独あるいは内服薬との併用治療が一般的です。男性には内服治療ですが、多くの場合に用いられる内服薬はアルコール分解を阻害する成分が含まれているため、飲酒の習慣のある方には治療期間中の禁酒が絶対必要条件になります。アルコール分解を阻害してしまうので、悪酔いや急性のアルコール中毒を来たしてしまう危険性が非常に高くなってしまいます。パートナーとご一緒に必要とされる薬の量を必要とされる期間服用(座薬使用を含む)して、その後、治癒あるいは追加治療の選択を含め、治癒判定を御受け戴く事になります。この際、服用量と服用期間を守ることがとても大切になります。見た目にはいかにも完治しているように見えても、徹底的に原虫を駆逐しておかなければ不完全治癒となってしまいます。不完全治癒は早晩再燃してきますので、また再度初めから診断、治療をやり直さなければならなくなります。 

 決して恐れる病気ではありません。勿論、完治します。どの疾患でも大切な事は、早期発見、早期治療によって後遺症を残すことなく、完治に到る事です。すべての医療者は優しく思いやりを持って、手を差し伸べてくれます。異常に気が付いたら勇気を持って受診してみましょう。必ず身も心も楽に清清しく感じられる日々が待っていますよ!

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

 

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