御神輿を担いで、観衆との一体感を覚えたときの感動を、ぜひ、あなたにも。

「楽一」の知名度は、ここバンクーバーで相当に高まっているように思います。いかがですか、実感はありますか?
そうですね、いろいろなイベントなどに呼ばれるようになりましたからね。

去年のサーモンフェスティバル、ダウンタウンのパレードにはどれぐらいの御神輿担ぎ手が集まったんですか?
担ぎ手の総数では、150人を超えていました。

観衆もすごい人出ですよね。
とくにダウンタウンはすごい人数でした。マスコミの報道では8万人の人出といっていましたが、あのどよめくような歓声、掛け声の『セイヤ〜!』が担ぎ手だけではなく観衆の人々にまで広がり、高層ビル群の間にこだまし、何か異次元にいるような感動を覚えました。

衆御神輿、笛や太鼓、掛け声、そして担ぎ手のいでたち、まさしく日本。日本のお祭り文化をナマで多くの人に紹介されたんですね。初めて見る人がほとんどでしょうし、異彩を放っていました。
あのパレードに参加した団体は100を超えるのですが、けっこう目立っていたようです。観客のある日本人の方が、「私は長い間、日本のお祭りを見ていなかったのですが、今日、久しぶりにこの姿を見てほんとうにうれしかった。誇らしかった」と声をかけてくださって、それまでの疲れがいっぺんに吹き飛びました。

 

バンクーバー・オリジナル御神輿を。

「楽一」の10年について、お話いただけますか。
2002年に「バンクーバー御神輿の会」が結成され山本実氏を頭にお祭り好きの連中が集まりバンクーバー御神輿の会「楽一」ができました。印半纏を作ってカナダのいろんなイベントに御神輿を担いで参加したりして日本のお祭り文化を紹介しています。

御神輿だけではなく、笛や、太鼓、獅子舞も加わり、いまや、もうすっかり日本のお祭り姿ですね。そうした道具や装束などはどのようにして集められたんですか?
日本へ行ったときに買い集めたり、日本の業者さんにオーダーしたり、獅子頭などはバンクーバー在住の日系人の方が寄贈してくださいました。

新しい御神輿は…?
これもバンクーバー在住の宮大工の方がおられて、自ら進んで製作し、寄贈されたものです。また、外観の木部の部分は多くの人の協力で完成しました。ただ、飾り金具などは、日本で特注製作しました。

 

費用はどのようにして調達されたのですか?
ファンドレージングキャンペーンをしたり、寄付を募ったりで、何とか…バンクーバー生粋の御神輿が、あと一歩のところです。何とか皆さんにお見せできる形にはなりましたが、最終的な完成までには、まだ、費用もかかります。引き続きご寄付、ご協力をお願いしているところです。

御神輿の様式はどのようにして決められたのですか?日本の祭りに担ぐ御神輿は、全国各地で独特の様式や掛け声も違いますね。
日本各地にある御神輿は、その地の神社のお祭りのとき、神霊を乗せて移す輿(こし)のことですが、バンクーバーには神社もありませんし、「楽一」のメンバーも全国各地から集まっていますからそれぞれイメージが違います。それぞれの思いを集約してデザインを決めました。また、御神輿に乗せるものは、「皆さんの健康、家内安全、幸せを祈り、参加する全員の気持ち」を乗せています。ですから、まったくのオリジナルの御神輿なんです。

 

日系人にだけではなく、世界各地から来ている人にも楽しんでほしい。

掛け声も「楽一」では『セイヤッ』ですが、これはどこから…
通常、『ワッショイ』というのが多いと思いますが、英語圏の人には発音しづらいような感じでしたので、『セイヤッ』になったんです。『ワッショイ』は和につながり、捨てがたいのですが、誰もが気持ちよくのれることを優先しました。

担ぎ手には、日系人以外の人もいますね。
多くなってきました。けっこう関心が高いように思います。

印半纏や、喧嘩札(木札)、雪駄、Tシャツなどの衣装、小道具などにも関心があるでしょうね。また、勘亭流の「楽一」のロゴなどは、タトゥーに使われたりして。
英語に訳するのがむずかしいものもありますが、日本の文化、伝統を理解してもらうよう挑戦しています。

日本の伝統文化というと、能や歌舞伎などが海外にも広く知られていますが、お祭りという庶民の伝統文化は、あまり知られていないと思いますので、とても意義ある活動ですね。
祭りを通して日本のすばらしい伝統、文化を紹介し続けていきたいと思います。こちらの人は背の高い人も多いので、バランスよく担げるのか、と言われるのですが、そこは協調、和の精神、他人を思いやる日本文化のよさで乗り切っています。

もしかすると、日本にいるより日本的なのかもしれない…若い日本の人には、日本を見直すきっかけになるかもしれませんね。ところで、担ぎ手の参加資格はありますか?
日系人ばかりではなく、男女を問わず、また、永住者に限らず、ワーホリ、駐在員、旅の人も自由参加が基本。とにかく「楽しさ一番」、略して「楽一」なんです。

うまい!ありがとうございました。

 

(取材 笹川守)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。