伝統的衣装からカジュアルファッションまで
入場が無料ということもあって、会場には定員数を上回る数の人々が訪れ、入場できなかった人も。受付で配られるドアプライズチケットは最後のほうは数が足りなくなってしまったという。たくさんの人の関心を集めたこのショーは彩月会による日本舞踊「花の宴」から始まった。続いて、着物を着たモデルが順番にレッドカーペットを歩いていく。モデルを務めたのは、松野洋子さん(西川佳洋師範)、竹内祐紀名さん、吉武真理さん、吉武詠美さん、大河内南穂子さん(実行委員会の一人)。白地に椿の花模様の着物や、華やかな赤の振袖などを着たモデルが傘や羽子板、扇子などの小道具を手にしずしずと歩いていく姿に、観客たちは賞賛の拍手を送った。今回の着物は日本舞踊の松野洋子さんから提供されたとのこと。
その後はスティーブストンでビジネスを展開する4店から様々なファッションが披露された。ビンテージドレスやアクセサリーを扱うVintage Wear by Lennyからは1920年代のものも含むドレスを着たモデルが登場した。古さを感じさせない美しいドレスの数々は、女性にとっては憧れてしまうものばかりだ。続いてFrom Seeds to Fashionから、天然素材を使った夏にもぴったりな涼しげで着心地の良さそうな服が紹介された。次はがらりと変わって、スケートボードやカジュアルウェアを扱うSteve's Board Shopから、サマードレスの女性モデルやショーツにパーカーを羽織った男性モデルが登場した。コンサインメントショップのBon Retourからは各種ブランド製品をまとったモデルが、お洒落なパンツスーツや60年代風のドレスなどを披露した。今回のモデルを務めたのは素人ばかりだという。
ショーの最後は、再び彩月会による舞踊が披露された。「十日町小唄」では手ぬぐいを持って、「花笠音頭」では花の飾りをつけた笠を持ち優雅に舞う姿に観客もじっくりと見入っていた。
様々なベンダーの出店も
会場にはマーケットプレースのコーナーも設置された。今回のイベント企画にも大きく関わっているAsk Hair StudioやBon Retourなどがそれぞれのサービスを宣伝したり取り扱う商品の販売を行っていた。また、写真家の斉藤光一さんによるペットや風景のカード、カステラとドラ焼きを販売するテーブルもあった。着物や和風小物を販売しているFumiko StyleやPac Westからの出店もあり、どのテーブルにもたくさんの人が訪れて商品を購入したり、問い合わせをするなど活発な交流をしている姿が見られた。
毎年恒例のイベントを目指して
このショーの実行委員会のメンバーはボランティアとして運営に携わってきたという。そのメンバーの一人である大河内南穂子さんは、「これはスティーブストンに活気を取り戻そう、という町おこしとして企画されました。初めての試みでしたが、会場の雰囲気も食事や飲み物を楽しみながらリラックスして楽しんでいる様子で良かったですね。和風の小物や着物などを扱う日本のビジネスの方に販売テーブルを出して頂いたのも好評でした」と感想を語ってくれた。
また企画担当者のキム・マークさんは、「計画を立ち上げたのは3カ月くらい前です。参加してくれたビジネスの方々がみな協力的で大いに助けられてきました」と言う。日本の着物や舞踊をショーに取り入れたことについては「スティーブストンには元々漁業を営む日系コミュニティーがありました。最近ではそのことが忘れられがちですが、日系コミュニティーがこの地を形成してきたことを振り返る意味もありました」と語る。キムさんと共に企画に携わったアリシア・ジョンソンさんも「日系コミュニティーがスティーブストンを作り上げた重要な一員であったことに感謝の気持ちも込めています」と言う。そして「モデルを務めたのはほとんどここの地元の人たちなんです。そうすることで私たちのコミュニティーがどんなところであり、どんなことを提供できるのかをあらわしたいと思いました。これが私たちのコミュニティーだ、といえるようなショーをお届けしたかったのです」と語ってくれた。
ショーが終わってどのような反応を受けたか尋ねると「とても楽しかったという声をたくさんいただきました。進行もスムーズだったし、着物のモデルさんや日本舞踊も美しくてとても良かったという、ポジティブな反応をたくさん頂いたのでとても嬉しいです」とのことだった。さらに、これを毎年恒例のイベントにしていきたいと今後の抱負も語ってくれた。
取材 大島多紀子
撮影 斉藤光一