ケアのある生活

日系センターに隣接する2つの高齢者向け住宅施設。日系社会で高齢者介護が問題になり始めた1980年初め、日系シニアが快適に暮らせるケア付き施設を作ろうという動きが始まり1986年に日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会が発足。98年にシニアの集合住宅『新さくら荘』、02年にケア付きシニア住宅『日系ホーム』が完成し、同協会がその運営に当たっている。
多くの高齢者はかなりの後年にあってもある程度の自立性を維持しながら、やがてあるレベルのサポートが必要となる。日系ホームでは訓練を受けた資格のあるスタッフが個人的なサポートとケアを24時間提供しているが特徴だ。

住所:6680 Southoaks Crescent, Burnaby, BC V5E 4N3
日系ホームおよび新さくら荘への入居に関する問い合わせは電話:(604) 777-5000まで

日本語や和食のある環境

今回訪ねたのはBC州初のケア付きシニア住宅としてオープンし、今年10年目を迎えた『日系ホーム』。現在でも施設運営者や建築関係者など、国内のみならず、日本からも見学団体が訪れるという。
同協会会長のルース・コールズ氏はマウント・セント・ジョセフ病院で長い間ソーシャルワーカーとして働いてきたことから、言葉や食事、日本語を話すスタッフがいないなど、日系シニアが抱える問題を実際に見て来たひとりだ。エレベーター内で会った車椅子に乗ったシニアに「調子はどう?これから生け花ですか?」と日本語で語りかける。「このくらいの日本語なら出来るんですよ」と笑う気さくな日系2世だ。

入居資格と条件

入居資格は55歳以上で、18歳以降10年間BC州に居住した人、多少のケアを必要としながらアパート生活を続けることの出来るシニアだ。

入居希望者は各地区の保健局に連絡し、日系ホームへの入居に興味と必要性のあることを伝え、ケア付き住宅プログラムへのアセスメント(査定)を申請する必要がある。すでにホームヘルスサービスを受けている場合は、自分のケースマネージャーに相談して申請を進めることになる。
入居資格の審査は、日系ホームのレジデントサービス・マネージャーとフレーザー保健支局がBC州保健省の方針に従って行う。バーナビー居住者や所得による優先はないという。「満室で入居しにくいのでは?」という質問が多いが、入居者の交代もあり、入居資格条件とタイミングさえ合えば、待たずに入居というケースもある。
入居者のニーズに合わせたケア&サービスプランは4カ月ごとに見直される。

 

居室と費用

広々としたワンベッドルーム(600〜700平方フィート)が59室。そのうち3室は車椅子使用型。キッチン、手すり付きバスルーム、洗濯・乾燥機、バルコニー付き。夫婦での入居も可。スタジオタイプ3室には簡易キッチンとバスルームがあり、洗濯はランドリーサービスを利用。前もって通知すればゲストも数日滞在可能。全館禁煙、ペット禁止。
入居者の支払い額は月収(年金や資産の歩合を含む全収入)に基いて計算され、月間715ドルから2500ドル(平均額は月1500ドル)。月収の30%が家賃、35%がホスピタリティ費用に当てられる。

ケアとサービス

歩行や移動のための介助、介護士による薬の管理、着替えや入浴、排泄後の手助け、リネンの取替えと洗濯など。病気のときは配膳サービスもある。フルタイム、パートタイム、オンコールを合わせた約40人のスタッフのうち、准看護師、介護士は24時間体制で、処方箋薬、常備薬の管理もしてくれる。
テレビ室、カラオケルーム、図書室完備。施設内でのアクティビティーほか、送迎つきの外出も人気。日系のグループや日本語学校の生徒が訪問したり、日系文化センターでのプログラムに参加するなど、日系コミュニティとのつながりを維持することが出来る。

ある日のメニュー

朝食・夕食は家賃に含まれており、昼食は別途料金でハイゲンキ・レストランが別途料金で提供している。
昼食:チキン・ガンボスープ、ホットドック、ミルクプリン。ツナ・サンドも可。
夕食:ミネストローネ、グリーンサラダ、魚の衣焼きタルタルソース、ポテトと野菜添え。もしくは野菜入り味噌汁、チンジャオロース、ポテト添え、ご飯。デザートはエクレアかフルーツ。
ハイゲンキ・レストランでは、体の調子が良くないときはお粥やうどんも作ってくれる。マネージャーの東美幸さんによると、当初は朝食にご飯に味噌汁、焼き魚といった和食を用意したが、カナダ生活が長いシニアはむしろオートミールやシリアル、パンケーキを好むため、メニューを変更したという。

認知症への対処

入居者の平均年齢は88歳。白寿(100歳)到達は9人。平均入居年数は5年。現在入居者の4分の3は日系人とのこと。
日系ホームがオープンして10年。現在求められているのは、軽度から中程度の認知症の症状が見られ始めた入居者へのケアの必要性だ。極端な混乱、24時間体制での専門的なケアが必要になると、中程度(インターミディエート)以上の介護施設に移る必要がある。日系ホームでは、軽度の認知症(ディメンシア)患者を介護するサービス『アシステッド・リビング・プラス』を提供できる認可を受けるため、1階部分の改築を計画中だ。認知症の症状が見られ始めた人専用の部屋とケアを提供することにより、入居者が引き続き日系ホーム内で暮らせるようになることが目標だという。

 

(取材 ルイーズ阿久沢)

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