ストレスは、あって当たり前

聖徳太子の17条憲法に「和をもって貴し…」とあるように、その当時から、人々の間に軋みがあったのだろう。元来、「ストレス」は工学用語で、外部圧力による「ゆがみ」や「ひずみ」を表す言葉。これが、医学に導入されたのは1936年のことであった。カナダ人のハンス・セリエが、「ストレッサーに」よって生じる生体反応をストレスと呼んだことにはじまる。
日常生活を営むうえでストレスが生じるのは当然のことで、これをうまく制御、軽減して体調不良の症状を軽くし、病気に至らないようにしたい。

理解すれば、やさしくなれる

ストレスは視床下部、間脳、下垂体、副腎系に影響を与える。自律神経失調症、内分泌の異常(生理不順)、精神不調をもたらす。
更年期障害は、その代表的なもので、自分の意思ではなかなかコントロールできないやっかいなもの。女性だけにあるように思われがちだが、男性にも更年期障害はある。
このことを理解すれば、やさしくなれる。ともに乗り越えようと協調できるようになる。こうしたことは他の症状も多くあるので、ストレスが要因になっていないか、を理解することでお互いをやさしく対応できるというもの。

4000年前に中国で生まれた東洋医学。漢字が多いけれど、ストレスにならない程度に…

「東洋医学的弁証論治」、これも分解してみると、「弁証論」は体の源をさぐり、「治」なおす、というように理解できる。
東洋医学では、今回は、2つの角度から弁証論治を行う。ひとつは『気血津液弁証』。「気」という生命エネルギー、「血」がエネルギーを運搬、「津液」は汗や血液の水成分の3方向から検証する。もうひとつは『臓腑弁証』。肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓の「五臓」、そして、胆のう、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦の「六腑」。
これらの一つ一つを検証していき、治療法を見出す。そのために東洋医学では、「舌を見て、脈を取ることで」、変調をきたしている原因を探るのが一般的だ。

ストレスに影響されやすい「肝臓」

肝臓に不調をきたすと…「胸の中がほてり、イラだつ」、「落ち着きがなくなる」、「めまい」、「手足のしびれ」、「生理不順」などの症状がある。これらをさらに詳しく見ていくと…
●肝気鬱結証(かんきうっけつしょう)
「知らない間にため息をつく」、「憂鬱な感じがする」、「言葉が出にくくなる」、「食べ物を飲み込みにくくなる」、「乳房が張り、痛い」などの症状があり、舌苔(じたい)の色が薄白く、脈拍が弱い感じがある。
●肝火上炎証(かんかじょうえんしょう)
「めまい」、「頭痛」、「口が乾く、苦い」、「イライラ」、「不眠」、「悪夢を見る」、「便秘」、「尿が黄色い」、「耳鳴り」などの症状があり、舌が赤かったり、舌苔が黄色になっていて、脈拍数が多くなる。
●肝陽上こう証(かんようじょうこうしょう)
「めまい、耳鳴り」、「目がいたみ、赤くなる」、「イライラ、不眠、多夢」、「頭が重く、足がふらつく」、「腰や膝がだるい」などの症状があり、舌の色が赤く、脈拍が速い、または細く、弱々しくなっている。
●このほか、ストレス関連の疾患には…
「胃の痛み」、「下痢」、「便秘」、「頭痛」、「皮膚の乾燥」、「食欲不振」、「肩こり」、「腰痛」、「冷え性」などの症状もあるが、ストレスが原因になっていることが多々ある。

講演の後、座談会があり、参加者が抱えるさまざまな悩みに、端的なヒントを杉原先生が与えていた。
日本の中高年の、特に男性の間での話題の多くは「体調、老後、友人の消息」だという。体調に関しては病院へ行く機会も当然多くなり、自らも医学知識を探求する。なかでも東洋医学に関する入門書籍は多く出版されていて、愛読書にしている人も多い。
今回の座談会でも、杉原先生が感心するほどの知識で自分自身の健康管理をしている人もいた。
そんななかで、「私は、糖尿病を患っていて、好きなものをなかなか食べられない。これが自分のストレスのもと。そこで、私は、『好きなものをいま食べずに、楽しみを先のばししている』、という考え方に変えることで忍んでいます」と。同じ病に悩む筆者としては大いに参考になったのであった。

杉原義信医師 プロフィール

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。日加ヘルスケア協会理事。

日加ヘルスケア協会

日本語を話す、または日本の文化的背景を大切にする人々の心身を、より健康にすることを目指して設立された非営利団体。活動の一部として2005年度より講演会を開催し、西洋医学、東洋医学をはじめとして様々な視点から健康に関する情報を提供し、幅広い知識や健康になるための実践的な方法を共有することで健康の維持増進に貢献していくのが目的。
http://nikkahealth.org

(取材 笹川守)

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