世代と世代を結ぶために
さまざまな行事や展示が行われる日系プレースは、名称とロゴを新たに今年で12年めを迎えた。
募金活動ディナーは日系プレース基金の主催で、今年はカナディアン・タイヤ社が協賛。これまで日系プレース、日系コミュニティに貢献したたくさんの人の中からその年に特に活躍したコミュニティ・リーダーの表彰を行い、コミュニティに感謝するのが目的だ。
カナディアン・タイヤ2店舗の共同経営者であるロス&ワード・サイトウ両氏は、日系カナダ人の文化、歴史、足跡を守りたいという強い思いから、このイベントに賛同した。
天井に映し出された紅葉が秋のムードをかもし出す会場にはサイレント・オークションの品々が豪華に並べられ、ジャスティン・オルト氏の軽快な司会でスタートした。
林光夫氏の挨拶に続き、伊藤秀樹氏が日系プレースでの活発な活動は理事やボランティア、たくさんの人たちの協力や支援で成り立っていることをあげ、感謝の言葉を述べた。約3年の赴任を終え帰国を控えた伊藤氏は「バンクーバーの日系社会とみなさんに感謝します」と英語で挨拶した。
メアリー・キタガワ氏が語る感動の卒業式
Fujiyaが用意した食事を楽しみながら、メアリー・キタガワ氏の基調講演に移った。
太平洋戦争が始まったのはキタガワ氏が7歳のとき。ヘイスティングス・パークに収容され、内陸へ強制移動した体験を語った。
キタガワ氏は日系カナダ人市民協会・人権委員会でボランティアをしていた2008年、大戦中UBCを追われた日系人に名誉学位を与える要請の手紙をUBC大学当局や市議会に送った。この要請が拒まれると署名集めや運動を続け、メディアを通して働きかけた。3年後、UBCから76人に対して学位ならびに名誉学位を授与するとの連絡を受け、去る5月30日にUBC内チャンセンターで彼らの卒業式が行われたのである。
会場に設置されたスクリーンにロイ三木博士のコメントや、沖縄から卒業式に出席したロイ・オオシロ氏の感想など感動的な卒業式の様子が映し出されると、会場には割れんばかりの拍手が起こった。出席者のひとりで日系3世のタナカさんは「両親から強制移動の話は聞いています。こうして卒業式の映像を見て感慨深いものを感じました」と目頭を押さえた。
受賞者8人に連邦政府、州政府からも祝辞
コミュニティ賞授賞式では受賞者8人が友人や同僚から紹介され、事前に録画したそれぞれのコメントがスクリーンに映し出された。受賞者は日系プレースからの表彰状と記念品に加え、連邦政府議員ピーター・ジュリアン氏(バーナビー・ニューウエストミンスター地区代表)からの祝辞証明書、BC州首相クリスティ・クラーク氏とBC州多様文化担当大臣ジョン・ヤップ氏からも祝辞の文書を受け取った。
受賞者の中には閉会後、伊藤秀樹氏とBC州多様文化担当大臣ジョン・ヤップ氏と記念撮影に望んだ人もいた。
活気にあふれたオークション
この後マーリンさんにバトンタッチされると、テンポのある進行で次々にライブ・オークションの品の競り値が引き揚げられた。ラッフルチケット販売では2055ドルが集まり、半額が日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会に寄付され、残りの金額が当選者に振り分けられた。
日系プレース支援のための熱意と意気込みでオークションはさらに活気を増し、コミュニティ・スピリットに包まれ盛会のうちに幕を閉じた。
日系プレース基金のエグゼクティブ・ディレクター、ジョシュ・カワード氏によると、今回のイベントで集まった募金額は約9万6千ドル。日系文化センターでのプログラムやイベント開催、博物館の展示、また日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会の運営などに使われる。イベント終了後にもまだ寄付の問い合わせがあるという。
(取材 ルイーズ阿久沢)