創立30周年記念パーティは、独特の振りとダイナミックなバチさばきが魅力の、バンクーバー友愛会琉球太鼓による演舞で始まった。続いてJTBIカナダの30年の歴史が、2つの大きな画面にスライドショーで映し出されると、社員だけでなく、業者や取引企業からの招待客が、懐かしい顔ぶれや光景を見て、これまでの月日に思いを馳せた。

挨拶したJTBIカナダ、取締役社長 翁長功氏は、まず、JTBIカナダが82年に創設してから、現在に至るまでを振り返った。以前はニューヨーク支店が管轄していたカナダ東部を、カナダ会社が扱うことになった87年、日本からカナダへの観光がピークを迎えた96年から98年と上り調子で推移してきた時代。そして同時多発テロ、SARS、イラク戦争で日本からの観光客が減った2000年台初めと、歩んできた道のりは決して平坦ではなかった。そのような中で多様化を図り、2008年2月にはSilkwayを買収して、日本からの旅行客以外をターゲットに拡大した。「旅行業界は予測できないさまざまなものの影響を受けます」と、業界の脆弱性を理解した上で努力を続けてきたものだ。

「30年間、支えてきてくれた、観光局、サプライヤー、スタッフ、大切な顧客の皆さんに感謝します」という翁長氏は、「今後は東部カナダにもっと投資していきたい、グローバルマインドセットで広い視野で取り組んでいく」との決意を述べ、「栄えある未来をともに楽しみましょう」と締めくくった。

次に、ゲストとして壇上にのぼったカナダ観光局のRegional Managing Director、Siobhan Chretien氏は、観光業界の伝説的存在とJTBIカナダを称し、30年に対して、日本語で「ありがとう」「おめでとう」と感謝とお祝いの言葉を贈った。さらに、「このチャレンジの時代に新しいカナダを一緒に作っていきましょう」と呼びかけた。

在バンクーバー日本国総領事、伊藤秀樹氏は、30年を支えてきた、おもてなし精神について触れるとともに、「日本政府も観光業は日本の経済回復の重要な要素のひとつであると認識しています」と今後のさらなる活躍を期待して、エールを送った。

翁長社長をはじめとするJTBIカナダの経営陣、伊藤総領事らによるケーキカットの後は、食事、歓談に移った。

かつてトップガイドの一人として活躍、現在はケローナ市在住のナギサ・ウッドさんは、「引退した私まで呼んでくださって嬉しいです」と語った。「ガイドになった当初は、会社とお客様、レストランやホテル、バスといった業者の間で、辛い思いもしましたが、(JTBIカナダで)仕事をしているうちに、真のおもてなしの心に気づくことができました。そうすると、間でしんどい…なんてことはなくなり、楽しく仕事をすることができました。引退した今も、JTBでのガイド生活で得たことを活かしてボランティアをさせていただいたりしています。」

「この30周年記念パーティの前に、以前、働いた人たちがお祝いの集まりを開いてくれました。100人ほどが集まったと思います」(翁長社長)と、スタッフ同士のつながりも強い。会には日系社会の主な顔ぶれに加え、旅行業界関係者、ホテルなどの業者も集まり、盛大ながら、なごやかな雰囲気となった。

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JTBIカナダ取締役副社長北川博幸氏に話を聞いた。

今後の展望について教えてください

もともとJTBIカナダは日本からのお客様の手配のために創業された会社です。それが、日本以外、アジアからのお客様の受け入れ態勢ができて、その後、アウトバウンド、シルクウエイと、グローバル化を進めてきました。次の10年間で、このグローバル事業をさらに拡大していきたいと思います。

JTBではDMCという経営の考え方があります。DMCとは、デスティネーション・マネジメント・カンパニーの略で、地域に根ざして、地域の魅力を更に引き出し、地域と共に発展していく企業を目指すというものです。DMC戦略をJTBの世界各地の拠点で展開していき、日本はもとより世界中をネットワークして繋げることにより、グローバル事業を進化させていきます。

もちろんJTBIは日本の企業ですので、おもてなしの心といった、「日本ならでは」の強みも同時に活用します。今までのノウハウの蓄積がありますから、最高のクオリティのものをカナダから世界にお届けしていきます。シルクウエイにはシルク・ホリディズというホールセラー部があり、カナダの約4000社と取引しています。当社のサービスを用いて、人種、民族を問わず、カナダのすべての人たちにすばらしい旅行を楽しんでいただきたいですね。

近年、インターネットの普及で、予約の際にも旅行会社を通さず、インターネットで自分で行ったりと、旅行業界の環境も変わってきているのではないですか

もちろん当社でもインターネットを用いたプロモーションや販売を行っているので、ネットからの予約も増えています。一方、インターネットは情報量が膨大ですので、何を選べばよいのかわからないというお客様も多数います。それらの情報をしぼりこんで、クオリティの高い、それぞれのニーズにあった旅行を提供していく、いわばコンシェルジュ的サービスを提供していきます。単品販売ではなく、プロダクトを組み合わせることにより、商品の価値を高めてまいります。

当社には過去30年で築いたパートナーとの信頼関係という財産がありますので、それを最大限に活かしていきます。CSV、Create Shared Value、共通価値の創造で、カナダの人たち、カナダという国に共通の価値を生み出し、シェアしていく事業展開も重視しています。たとえば、日本の皆さんにはまだまだ認知度の低い、カナダの素晴らしい中小の街や農場、ワイナリー、様々なアクティビティをどんどん商品化していきたいと思います。

実はカナダはリピーターが少ない国です。特にナイアガラの滝は一度行くと満足してしまう方が多いので、初めての方を呼び込み、かつリピーターを増やしていくことが課題であり目標です。一方、教育旅行においては、非常に人気が高い国です。今後、学生向けのプログラムをさらに充実させていきます。

 

(取材 西川桂子)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。