2019年1月10日 第2号

平成30年最後(2018年)の「もちつき大会」が、12月27日にバンクーバー日本語学校並びに日系人会館で開催された。入場者は、なんと300人を超えるにぎわい。同校の生徒や保護者ばかりではなく、コミュ二ティの人々も多数参加していて、バンクーバー・ダウンタウン地域の毎年吉例の行事になってきたように見える。

 

若い男性保護者が威勢よく

 

保護者、先生、関係者一丸となって、“ぺったんこ!”

 300人を超える参加者を迎え入れる準備は、大変な労力が必要だ。もち米を洗い、水切りをし、蒸す。当校のキッチン設備と、保護者の方々の協力なくしてはできない作業だ。蒸しあがったもち米を順次、会場の石臼まで運び、杵でこねてつく。この杵でつく作業は、保護者の若い男性が担当。つき上がる間のもちに、お湯を差したり、向きを変えたりする“合いの手”を担当したのは、元理事長の水田治司さん(85才)。病の後を感じさせないリズミカルな調子で合いの手を取っていた。それも、一人で、約2時間ぶっ続けの作業であった。臼と杵でつくもちつきの姿は、日本でも最近すっかり見なくなったが、このもちつき体験を園児や当校の生徒たちも満喫。つきあがったもちをきな粉やあべかわ、大根おろしをつけておかわりしながら食べていた。

 

昔なつかしい日本の伝統文化、遊びも体験

 最近、日本でもブレイクしている「けん玉遊び」。その曲芸的な技を披露、教えてくれたのが、けん玉検定6段の腕前を持つ中村有美さん。けん玉競技で何度も日本一や、世界一に輝いたことがあるという。また、お手玉、かるた取り、習字体験など、日本の伝統文化を紹介し、体験できるコーナーで楽しんでいた。このさまざまな日本文化紹介プログラムをコーディネートしたのが、当校教諭のベイリー氏家智子さん。「今日のようななつかしい遊びの他、例えば、梅干し入りのおにぎり作りの実演・体験などもプログラムに入れて紹介しています。呼ばれれば、どこへでもいきますよ」と、心強い日本伝統文化の伝道師なのである。

 

明けて5日は『獅子舞』お正月と始業式
同時に創立113年記念のお話も

 同校の玄関には、バンクーバー・ガーデナーズ協会寄贈の堂々たる門松が飾ってあり、笛や太鼓の音頭で獅子が舞う。ここは日本のお正月風景だ。この獅子舞は、お神輿でおなじみの「楽一」の厚意で続けられている吉例行事。高学年の生徒は、慣れたもので縁起のいい獅子に噛まれようと頭を向けたり、獅子頭をなでたり、一方、初めて経験する低学年の生徒には、泣き出す子もいたりの大はしゃぎだった。

 午後からは、高校クラスの生徒を対象に、「年のはじめのお話」として、内藤邦彦校長から、「当校が創立されたのは、1906年1月です。日露戦争が1904年に始まって翌年の1905年に終戦。当時の外務大臣の小村寿太郎が、アメリカ・ニューハンプシャー州ポーツマスで行われた『ポーツマス講和条約』の調印から帰国の際、バンクーバーに立ち寄ったとき、当時、移民して間もない日本人の人々から『ぜひ、私たちの子どもたちに日本語の学校を』と請願を受け、その教育熱心な申し出に感銘し、自らも自費を拠出し、当校の現在地そばに小さな校舎を建設し、翌年(1906年)の1月から授業を開始しました。このように1月は、私たちの学校にとって、年の初めと同時に、気持ちを改めるときでもあります。新たな目標を定め、挑戦してください」と激励した。この言葉に続き、当校の元理事長の水田治司さんが、歴史の荒波に流され“移民の子”として育った体験談を苦労話ではなく、小学生から高校生までの人間形成期を日本で過ごし、約75年間をカナダで過ごした経験での言葉、文化比較を紹介した。その一端…「カナダでは、12月31日をカウントダウンで盛り上がりますが、明けて1日は何事もなかったようになりますね。一方、日本は、“明けましておめでとう”と、約10日間、神社へ初詣に行ったり、親戚や友だち同士が集まって正月を祝い気持ちを新たにする日々になります。これは、何故でしょうか、お正月のおせち料理のそれぞれにも意味があります。そんな何故、何故を、先生や先輩たちに質問し、もっと日本語を深く勉強してください。知れば知るほど面白いものです。日本に『聞くは一時の恥、聞かないは一生の恥』という言葉がありますが、自分の意志表示をはっきりするカナダ人気質を発揮して、探求してください」と、元理事長の水田さんが、新年のお話を贈っていた。

(取材 笹川守)

 

“合いの手”を入れる水田さん。子どもたちも「きっと忘れない体験に」

 

おばあちゃんと孫達(左から)ビビアンさん、マッシュウくん(9才)、リックくん(6才)

 

おかあさんの新井恵さん、清十郎くん(3才)、ゆらちゃん(4才)

 

日本文化紹介プログラム・コーディネーターのベイリー氏家智子さん

 

けん玉を教える中村友美さんを中心に、ワーキングホリデー中の中村健太君(左)、杉山喜嗣君(右)

 

かるた取りも大盛況

 

初めてのお習字体験

 

笛や太鼓の囃子に乗って獅子舞に大にぎわい

 

新年のお話をする元理事長の水田治司さん

 

内藤邦彦校長

 

玄関には堂々たる門松が

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。