2018年11月15日 第46号
11月1日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市にあるロバート新見日系ホーム(以下、日系ホーム)の健康ウエルネスラウンジで、日系シニアズヘルスケア&住宅協会(以下、日系シニアズ)と日加ヘルスケア協会(以下、日加ヘルス)の共催による健康トークが開催された。バーナビー・ホーム・ヘルスのソーシャルワーカー、アーサー・リーさんが在宅ケアが難しくなった後の住まいの選択肢について説明した。 (メディアスポンサー:バンクーバー新報)
定員40人いっぱいとなった会場
介護や援助が必要となった際の選択肢
高齢になるにつれて自立した生活を送ることが困難になってきた場合、住まいの選択肢としてはどのようなものがあるだろうか。家族と同居するなどという場合でなければ、介護や援助を受けることのできる施設に入る必要も出てくるだろう。こうした施設には3つのタイプがある。
インディペンデント・リビングの施設(Independent Living Facility)
- 基本的には食事と掃除のみのサービスが受けられる(施設によっては追加料金で、その他のサービスを頼むこともできる)
- 移動、歩行が助けなしでできること。杖、歩行器、車イスの操作が自分でできること。ただし車イス利用者は入居できない施設もある
- 助けが必要なことを認識でき、助けを呼べること
- 食堂まで自分で行くことができ、食事を援助なしでとれること
- バスルーム、トイレ、キッチン付きの個室
- すべて営利団体で運営されているので、施設によって入居費などは異なる
- 身体介護を最寄りのホームヘルスまたは介護サービス派遣会社などから受けることも可能
- 施設内を見学して施設内のレイアウトやサービスなどについて検討することが大切
アシステッド・リビングの施設(Assisted Living Facility)
- 食事、掃除、身体介護、投薬等のサポートを受けられる
- 移動、歩行が助けなしでできること。杖、歩行器、車イスの操作が自分でできること。ただし車イス利用者は入居できない施設もある
- 食堂まで自分で行くことができ、食事を援助なしでとれること
- バスルーム、トイレ、キッチン付きの個室
- バーナビーにはいくつかの営利団体経営施設と、日系ホーム他3つの政府経営の施設がある。政府経営施設に入居する場合、ホームヘルスのケースマネジャーによる査定が必要。営利団体経営施設内でも、政府から資金提供されている部屋が混在しているところがあり、そうした部屋に入るにはケースマネジャーによる査定が必要となる
- 営利団体経営施設の入居費は施設によって異なる
- 政府経営施設の入居費は、基本的に税引き後の収入の70%。2019年度からは、上限額が設定され、収入の70%がその上限額を超える場合には上限額を支払うことになる
レジデンシャル・ケア施設(Residential Care Facility)
- 身体介護を含む24時間のナーシングケアとサービスが受けられる(生活介助、身体介護全般、投薬、食事、掃除、洗濯等)
- 身体的障害や認知障害がある方への24時間ケア
- 部屋は個室と相部屋がある。空いている部屋に随時入居が決まるので、選ぶことはできない。相部屋から個室に移る希望を出すことは可能。
- 営利団体が経営する施設の入居費は施設によって異なる。
- 政府が経営する施設では多くの場合、相部屋となる。入居費は基本的に税引き後の収入の80%。アシステッド・リビング同様、上限額が設定されている
政府経営のレジデンシャル・ケア施設の場合、ケースマネジャーによる査定が必要となる。Fraser Healthの場合、査定後に入居することが決まったら、その時点で空いている施設に入らなくてはならない(First Available Bed Policy)。もし、そこが希望する施設でなく入居を断った場合、申請がいったん閉じられる形となり、その後2カ月間は再申請ができなくなる。ただし、例えば、夫がすでにレジデンシャル・ケア施設に入っており、妻も入居が決まった場合、2人が同じ施設に入れるように考慮してくれるケースもある。
Vancouver Coastal Healthの場合、在宅から政府経営のレジデンシャル・ケアに移るときには、査定を受けた後、希望する施設のウェイトリストに載せてもらうことができる。しかし、病院から直接、政府のレジデンシャル・ケアに移る場合は、FAB Policyが適用される。その他のケースでもFAB Policyが適用されることもあるので注意。
それぞれの施設への入居の手続きは以下の通り。
インディペンデント・リビング
- 入居費、サービス等については直接、施設に問い合わせし、入居申し込みをする。
- 収入等によっては、BC Housingが提供するSAFER(Shelter Aid for Elderly Renters)という家賃補助を受けられることもある。
アシステッド・リビング
- 営利団体が経営する施設の場合、インディペンデント・リビングと同様、それぞれの施設に個人で問い合わせし、入居申し込みをする。
- 政府経営の施設の場合は、自分の住む地域の保健局(Fraser HealthやVancouver Coastal Healthなど)の、Home Service Lineに連絡し、ケースマネジャーに査定をしてもらう。
- 基本的にアシステッド・リビングの施設に入居するためには、在宅でケアやサポートを受けていることが条件となる。
- もし、インディペンデント・リビングの施設または自宅で暮らしていた時にSAFERを受けていた場合、アシステッド・リビングの施設に入居することによってこの補助は終了となるので、忘れずにキャンセルしよう。怠ると後に返還請求が来てしまうので気をつけたい。
レジデンシャル・ケア
- 営利団体が経営する施設の場合、インディペンデント・リビングの場合と同様。
- 政府経営の施設の場合、アシステッド・リビングの場合と同様。やはり在宅でケアやサポートを受けていることが条件となる。
インディペンデント・リビングやアシステッド・リビングの施設を探すためのウェブサイトがある(thecareguide.com)。ここでは営利団体の施設が主に紹介されている。ただし、完全なリストではないので注意が必要だ。政府経営の施設は、Fraser HealthやVancouver Coastal Healthのサイトに完全なリストが掲載されているので参考したい。
新さくら荘への入居について
続いて、日系ホームと新さくら荘の入居者サービスマネジャーであるジーナ・ホールさんが、新さくら荘について説明した。新さくら荘はシニア専用のアパートで、BC Housingプロジェクトの一つ。日系シニアズによって運営されている。
入居資格はBC Housingの規定に基づいており、以下のような条件がある。
- カナダ国民か移住者であること。家族がスポンサーとなって移住してきた人の場合、カナダに10年滞在していること
- 入居申し込み時点で、BC州に居住していること
- 55歳以上であること
- 収入と資産を証明する書類を提出する必要あり
申し込み方法
- 申込書はウェブサイトで入手可能(http://seniors.nikkeiplace.org/living/)日系ホームの受付で受け取ることも可能
- 申し込みは、日系ホーム受付に直接持参、郵送、ファックス(604-777-5050)、Eメール(This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.)で受け付け
- 日系シニアズでは、申込書を受理後、ウェイティングリストに登録
その他
- 待機期間は長期にわたる。最低2年以上、およそ5〜7年は待つことが予想される
- 全34室のうち、20室は家賃補助を受けられ、14室は低価格市場賃貸料が設定されている。申込時に収入を申告するので、それに応じてどちらに振り分けられるかが決められる。ただし、自分で希望する方を別記しても構わない
- BC Housingが設定する高齢者住宅所得制限に基づき、申し込むためには収入が年間5万8千ドル(4,833ドル/月)を上回らないことが条件
- 新さくら荘の入居者が優先的に日系ホームへの入居ができるということはない。新さくら荘の入居者も、他の外部の人と同様に、ケースマネジャーによる査定を経て入居が決まる
政府経営の施設への入居申請及び質問は下記まで。
Fraser Health
(バーナビー、ニューウェストミンスター、サレー、メープルリッジ、ポートコキットラム、コキットラム、ポートムーディー、ラングレー、デルタ、ピットメドウズ、ホワイトロック、チリワック、アボッツフォード、ホープ、ミッション地区に住む人)
Home Health Service Line 1-855-412-2121
www.fraserhelath.ca → Health Topics → Home and Community Care Services
Vancouver Coastal Health
(バンクーバー、ノースショア、リッチモンド、シー・トゥ・スカイ・ハイウェイ、サンシャインコースト、ベラベラ、ベラクーラ、セントラルコーストとその周辺地域に住む人)
Access Line 604-986-7111(ノースショア)、604-278-3361(リッチモンド)、604-264-7377(バンクーバー)
www.vch.ca → Your Care → Home and Community Care
*注意*
ここで紹介した情報は2018年11月1日現在のものです。政府の方針や各団体の連絡先など、変更が加えられることがありますので、常にご自身で最新の情報を得るようにしてください。
(取材 大島多紀子)
新さくら荘について説明するジーナ・ホールさん
通訳を務めた日加ヘルス理事のアンダーソン佐久間雅子さん