開会式では、UBCのアジア研究学科長であるロス・キング教授が、「既に各地区で優勝している皆さんなので、本大会では入賞の有無に関わらず達成感を感じてほしいです」と、挨拶をした。続いて、審査員の1人でもある在バンクーバー日本国総領事の伊藤秀樹氏が、「このBC州で、16年ぶりに全カナダ大会を開催できて嬉しいです。毎年、参加者のレベルの高さには感心しています。本日も、皆さんがベストを尽くされ、よい大会になることを期待しています」と、挨拶をした。
<各部門の第1位>
「ハビタットフォーヒューマニティグアテマラ」
大学・一般初級の部で優勝したヨンスウ・コーさんは、ボランティアで滞在したグアテマラについて語った。グアテマラは世界一平均身長が低く、世界一寿命の短い国であるという。貧富の差も激しく、衛生状態も悪い。現地の人々は苦しい生活を送っているのでは、と思われたが、コーさんが実際に見た子供たちは、実にいきいきと生活をしていた。現地の子供たちが労働をし、時には無邪気に遊ぶ様子や、その子供たちとの交流が語られた。最優秀賞にも選出されたコーさんには、賞品として3000ドル分の旅行券が贈られた。
「京都弁」
大学・一般中級の部で優勝したヘワン・パークさんは、大好きな日本のアニメを通じて京都弁を知ったという。その優しく流れるような響きに感動したパークさんは、京都弁を習得したいと思うようになった。まず、日本語の勉強から開始し、京都弁を話す友人もできた。しかし友人からは、最近は京都弁よりも大阪弁を話す若者が増えていると聞いた。文化継承のためにも、方言の維持をしたほうがよいと、パークさんは考えている。「最後まで聞いてくれて、ほんまおおきに」という京都弁での締めくくりは、会場を沸かせた。
パークさんには、賞品として1200ドル分の旅行券が贈られた。
「日本の大天災をめぐって」
大学・一般上級の部で優勝したフランシスカ・パークさんは、昨年発生した福島県での放射能問題を収束させるために、自己を犠牲にして立ち向かっている高齢技術者グループについて語った。「若者より放射能の影響が少ない」「原子炉は自分たちの世代による責任」という理由で60〜78歳までの人たちが日本全国から集まってきた。日本の戦後を支えたのは、この世代であり、今も責任を取ろうと頑張っている。戦後、奇跡を起こした人々が、今回も奇跡を起こすかもしれない。世界の人たちが応援しているので、頑張ってほしいと、締めくくった。パークさんには、賞品として1200ドル分の旅行券が贈られた。
「ここにいるよ」
オープンの部で優勝したソニア・リュウさんは、「何故カナダに来たの?」と友人から尋ねられたことをきっかけに、自分のことについて考えるようになったという。出身は中国だが、幼い頃日本で育ったというリュウさん。両親とともにカナダに移り住んだが、将来カナダで働くか、大好きな国である日本に行くかは、未定であるという。ただ、自分の信じる道を行き、「自分の居場所はここですと、自信を持って言えるようにしたい」と、流暢な日本語で締めくくった。リュウさんには、賞品としてipad3が贈られた。
<全体的な雰囲気、その他の出場者について>
地区大会を勝ち抜いた各参加者のレベルはとても高く、内容・表現力・発音と、どれも聴衆を唸らせるものばかりであった。参加者のユーモアに会場からは笑いが起こるなど、終始和やかな雰囲気で開催された。また、いずれの参加者も審査員と聴衆にそれぞれお辞儀をするところから開始するなど、作法の面でも日本文化への敬意が感じられた。
内容に関しては、自分・家族・故郷について思うことや、日本文化について思うこと、日本での経験、前向きに生きるため自分が実践していること、異文化について、東日本大震災に関することなどが、多く取り上げられた。
ユニークなものの1つとして、「自動販売機」が取り上げられるだろう。カナダと日本の自動販売機に対する話者の視点に、会場から笑いがあふれた。また、個人的な知り合いへ宛てられたかのような手紙形式で始まる「隣のあなた」は、話を聴くにつれて宛先が実は日本であるとわかる。震災を織り込むなど、内容も深かった。
閉会式では、審査員のUBCのクリスティーナ・ラフィン助教授が、「全体的に高レベルで、とても印象的でした」と、コメントをした。その後、審査結果が発表され、日本語による表彰式が行われた。高円宮日本教育・研究センター下野香織所長は、「参加者の皆さんは、今後も日本語の勉強に励んで下さい」と締めくくり、大会の幕が閉じられた。
なお、第2位にはipad3が、第3位と審査員特別賞には200ドル分のフューチャーショップ・ギフト券、参加賞には日英電子辞書が贈られた。また、参加者全員にアジア研究学科グッズも送られた。
(取材 熊坂香)
全カナダ日本語弁論大会結果
*全体の中から*
最優秀賞:
「ハビタットフォーヒューマニティグアテマラ」ヨンスウ・コーさん(大西洋)
大学・一般初級の部:
第1位:「ハビタットフォーヒューマニティグアテマラ」ヨンスウ・コーさん(大西洋)
第2位:「あのひにすきといわないで」マニシャ・タルールさん(オンタリオ)
第3位:「アイドルを目指して」エイミ・ベンソンさん(BC)
大学・一般中級の部:
第1位:「京都弁」ヘワン・パークさん(マニトバ)
第2位:「隣のあなた」チン・ユーさん(オンタリオ)
第3位:「なぜ、弟ばっかり?」サリー・ウーさん(BC)
大学・一般上級の部:
第1位:「日本の大天災をめぐって」フランシスカ・パークさん(BC)
第2位:「欧米と東洋の教育」ローユ・チャンさん(ケベック)
第3位:「子供への贈り物」ディラン・ワーンさん(オタワ)
オープンの部:
第1位:「ここにいるよ」ソニア・リュウさん(オンタリオ)
審査員特別賞:
「自動販売機」サラ・リーアン・フォーサイスさん(アルバータ、大学・一般上級の部)
<審査員>
伊藤秀樹氏(在バンクーバー日本国総領事)
内藤修之氏(三井カナダ副社長)
平田好氏(国際交流基金、アルバータ州教育省)
下野香織氏(アルバータ大学高円宮日本センター所長)
クリスティーナ・ラフィン氏(UBC助教授)