―今年はJTBIカナダの創立30周年にあたるということで、まずはおめでとうございます。

今年、2012年は私たちにとって、記念すべき年です。JTBの創立百周年、JTBIカナダの創立30周年に加えて、2月1日に中国系旅行会社Silkway Travel & Cruiseを買収して5年目を迎えました。

―翁長社長は84年に入社ということで、JTBIカナダは82年に創設ですから、JTBIカナダの歴史をほぼ全て知っていることになりますね。この30年間で、印象深かったことについて教えてください。

印象深かったことは幾つかあります。まず87年です。以前はナイアガラの滝以東のカナダ東部はニューヨーク支店、そして83年にバンクーバーに支店ができるまでは、西部はロサンゼルスの管轄でした。それが、東部もバンクーバー、つまりカナダ会社でやりなさいということになり、名実ともにカナダ全国をカナダ会社が仕切ることになりました。

次に96年から98年の、日本からカナダへの観光がピークを迎えた頃です。日本からの観光客は年間60万人ぐらいでした。去年は20万人ですから3分の1になりました。バンフスプリングスやシャトーレイクルイーズといったフェアモント系のホテルが取れなくて大変でした。そこで、フェアモントの地域副社長と交渉して、バンフスプリングスで1日200室を押さえることに成功しました。当時、全体で600室ぐらいしかなかったんですよ。

同時多発テロの2001年はさほど影響はなかったですが、2003年のSARSとイラクでの戦争で日本からの観光客が減ってきました。

続いて2008年にSilkwayを買収したこと。これまで日本から来るお客様を中心に事業を展開していましたが、この買収で本当の意味での地元企業になったと思っています。地元のお客様をマーケットとした事業に変わってきました。

最後に2011年。日系企業として収支構造をみると日本からのお客様による、インバウンドが圧倒的でした。ところが去年、日本以外からのお客様を取り扱う、グローバル事業が、収入および利益面で日本からのお客様の部分より大きくなりました。世界各国にあるJTBの中でも、グローバル事業が日本からの送客より大きいのは、少ない…おそらくJTBIカナダだけではないかと思います。

―「グローバル」という言葉をよく耳にしますが、まさに「グローバル化」を実現したことになりますね。

近年、国内産業の空洞化が話題になっています。僕はどんどん国外に出て行くのは非常に良いことだと思っています。ただし、企業が外に出て行って、その国、あるいはその地域と一体化できるようになる。それには、地域との信頼関係をはじめ様々なことが必要です。これを日本の企業が確実に実行していかなければなりません。

たとえば「円が高いので外に出ましょう」と言っています。では、「円が安くなったら日本に戻るのですか?」となります。そんなに簡単に出入りできません。カナダに日本の企業として出てくるのであれば、その地域と一緒に成功も不成功も分かち合えるような企業にならないようだと、グローバライゼーションは成功しないというのが僕の考えです。

2011年にグローバル部門の成績が逆転したことは、JTBそのものが今後どういう方向に進んでいくべきかについても、大きな示唆を含んでいると考えます。

―翁長社長は大学卒業後、BCITとSFUで学ばれた…。

大学卒業して5年ほど商社で仕事をした後、BCITの経営学部とSFU経済学部を卒業しました。当時はアルバイトしながら学校に行くことができました。カナダが僕を育ててくれたと思っています。

JTBも同じです。ホテルやバス会社などのサプライヤーをはじめ、いろんな方のサポートがあったからここまでやってこられた。ですから感謝の気持ちがとても強いです。

社員も以前の社員を含めて誇りを持たなければいけません。旅行産業はほかと比べると収入率や利益率も低く脆弱な産業です。しかし、そういう産業の我々がこれだけカナダに貢献したという誇りです。一番ピークの時で、インバウンドで70ミリオンの取扱高、そしてアウトバウンドもありました。当時、売り上げは合計100ミリオンぐらいありました。それだけカナダの経済に貢献しています。節目となる今年は、過去を誇りを持って見つめ直して、将来を考えていこうと思っています。

―今後の事業展開について教えてください。教育交流も力をいれているそうですね。

海外への修学旅行、短期および長期の留学の教育旅行、東京にある2年制のJTB国際文化アカデミーのような学校事業があります。カナダでも修学旅行や短期、長期の留学はやってきていますが、学校事業については始めたばかりです。2006年に学校事業のライセンスを取って、リッチモンドの社屋2階でJEIC (JTB Educational Institute of Canada)を始めました。

JEICでは日本の大学の観光学科、国際学科で学ぶ学生に、春休みや夏休みを中心に利用してカナダで観光関係の勉強をしてもらいます。同時に実地研修をするプログラムを作り、好評をいただいています。私たちは、空港やホテルバンクーバーなどに事務所を持っていますし、今度Silkwayの本社も移ってきますので、Silkwayでも研修できます。頭で学習するだけでなく、体で実地体験するのも大切です。

―最近、若者の海外旅行離れがよく話題になっています。

30〜40年前は、「何でもいいから見てやろう」「海外で経験してやろう」という考えが強かったです。しかし、今は安定志向、すなわち内向き思考になってきています。海外に1〜2年出てタイミングを失うと、なかなか就職先が見つからない。だから、若い人を中心に「日本の中でさえちゃんとしておけば大丈夫だろう」という風潮があるようです。しかし、世界はそうはいきません。2008年のリーマンショックでは米国のウォール街で起きたことが、短期間でアジア…日本に大きな打撃を与えています。それだけ、世界はいろんな意味でリンクしています。そのリンクしていることを、頭で理解していても、体感できずにいるような気がします。

海外旅行は一度来ると次また行きたくなる、つまりリピーターが増えます。若者の海外離れという話もありますが、一度殻をやぶれば大丈夫だと考えています。

学校事業も現在は日本だけですが、中国や韓国は、教育を重視するなど日本と近い思想を持っていますし、規模拡大、中身充実を目指していきます。学校買収も視野に入れていきます。

―今後の抱負について教えてください。

JTBでは87年夏ごろに欧州からカナダへ来る人たちのマーケットをターゲットに、ホテルのマネージャーを引き抜いています。日本からだけではなく外国からのインバウンドも始めました。残念ながら利益がでなかったので、欧州部門はあきらめましたが、アジアからカナダへのマーケットは残してもらいました。そして94年には私が担当してアジアにセールスにも行き、96年11月、観光客が落ち込む11月に台湾アムウェイからの1200人のツアーが取れました。

“Don't put all your eggs into one basket”といいますが、一つのマーケットによるビジネスはリスクが大きいと思っています。JTBの母体は日本なので、日本が落ち込むと良くないのは仕方がありませんが、JTBIカナダとしては次の30年に向けて地域に密着した形で道筋を作っていきたいと思っています。そのために大きな舵取りが大切でしょう。

具体的にはメキシコ、ペルー、ブラジル、キューバの中南米、特にメキシコとブラジルはインバウンド、アウトバウンドの両方です。アウトバウンドについてはブラジルでよい感触を得たのでどんどん進めていきたいですね。

またインドも始めました。クルーズで訪れる人の多いインドネシア、そして日本企業のインセンティブとしてタイ、さらにヨーロッパと、大きな視野でグローバル事業のさらなる躍進を目指します。カナダ東部への進出も吸収合併を踏まえて考えながら、強化していきたいし、教育事業も若者に海外を体験してもらうことで促進していきます。
(取材 西川桂子)

 

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