辻本圭助氏講演
「電気自動車についての今後と日本の戦略」

世界の自動車市場の変化に伴う電気自動車の必要性

1990年代以降、世界の自動車市場は先進国での需要がほぼ飽和状態に達し、代わって新興国の需要が大幅に伸びた。2008年には新興国の市場シェアが約半分を占めるようになった。
一方、自動車産業を取り巻く環境は劇的に変化した。原油価格は2000年以降高騰を続け、2008年には1バレル150米ドル近くまで達した。現在は80から100ドルの水準で推移しているが、今後原油価格が1990年代の20から30ドル水準までは下がることはないと予測されている。
さらに自動車産業は環境問題も考慮しなければならない時代に突入した。自動車やトラックなど交通手段・機関が占める二酸化炭素排出量の割合は全体の19パーセント。交通手段によるCO2排出量削減も大きな課題となっている。
日本の自動車産業における今後の戦略を考える場合、原油価格と環境問題は大きな柱となる。
原油の価格高騰への対応と、自動車需要増加、特に新興国での需要増加によるCO2排出量の急増に対する問題解決は急務で、これに次世代電気自動車が有効な解決策となると考えている。

電気自動車普及のカギ
電気自動車、プラグインハイブリッド、燃料電池自動車といった次世代自動車の技術革新は日進月歩で、これらと合わせて、電気自動車をどのように普及させるかが今後の大きな課題とも言える。
日本政府は2020年までに次世代自動車の市場シェアを国内で20から50パーセントまで増やすことを目標として掲げている。例えば、現在の国内年間新車販売台数が約500万台といわれ、2020年にはその20パーセント、約100万台を次世代電気自動車が占めることを目標としている。
そのために必要な対策として、リチウムイオン電池や次世代電池の技術開発推進や普及政策のための予算確保、充電スタンドのインフラ整備などがある。
充電スタンドは、一般的な家庭用、公共用と急速充電用の3種類があり、2020年までには一般用200万台、急速充電用5千台の設置を目標にしている。現在は全国18地域でモデルケースを展開中で、特に京都市と新潟県佐渡島でのケースは、その地域の特色に適応させた成功例となっている。

電気自動車のこれから
これからの電気自動車の役割は、単なる移動手段としてではなく、生活により密着したものとなる。GPSなどの各種機能による情報の有効活用やスマートグリッド化へのツールとしての活用方法も期待されている。

 

大串康彦氏講演
「日本とのグリーンビジネスで成功するための5つのカギ」

グリーンビジネスにおいて、カナダの企業がどのように日本市場に参入できるか、日本企業との提携によるビジネス成功のカギについて焦点をあて、5つの方法を紹介する。

3月11日以降の日本での安全なクリーンエネルギーの需要
去年3月11日に起こった東日本大震災による福島原子力発電所事故は、国民に大きな影響を与え、エネルギーについて考えるきっかけとなった。そして国民は、より安全で、クリーンで、信頼できる電力を切望し始めた。
例えば、企業の中には城南信用金庫のように、原子力による電力会社の電気に頼らず独自で電力を確保する努力を始め、それをビジネスにも反映させる方向に舵を切る会社も現れた。個人レベルでは、家で使用する電気とお湯を同時につくりだすシステム「エネファーム」を設置する家庭が増え、販売台数も確実に伸びている。
これらは、企業も個人も、より安全で、よりクリーンなエネルギーを真剣に求めるようになった現れで、グリーンビジネスの需要はこれまでになく高くなっている。

5つの「カギ」
カナダの企業が日本のグリーンビジネス企業と提携して成功するには、5つの「カギ」がある。

1 カナダで必要な日本の技術を探す
2 日本市場にカナダの技術を売り込む
3 目的達成に必要なパートナーを日本市場で探す
4 投資資本を探す
5 放射性物質汚染を軽減する

「カナダの技術を売り込む」ための海外市場開拓と聞くと、すぐに中国を思い浮かべるかもしれないが、各市場でそれぞれ事情は異なる。日本市場にも、まだまだ進出の余地はある。例えば、日本市場への進出に成功した企業としては、太陽光発電技術のカナディアンソーラーやリチウムイオン電池のコーバスエナジーがある。カナディアンソーラーの場合、日本に太陽光発電技術を持つ大手企業があるにもかかわらず市場参入できた理由は、商品技術と共に25年補償などの付加価値を付けたことがひとつ挙げられる。コーバスエナジーの場合は、海洋技術の強みという特徴を生かし、日本の会社と技術統合することで成功した。

ビジネスパートナーを探す場合はどうすればよいのか。その良い方法として、ビジネスが合致する相手を紹介してくれる機関を利用するという方法がある。例えばDCP、情報家電ビジネスパートナーズ。関西を拠点とし、技術、ビジネス・アイデア、製品の提案を受け付け、大手企業とのマッチングを図るシステムを提供している。バンクーバーでの窓口はジェトロ・バンクーバーとなっている。

福島原発事故は人々に直接的、間接的に大きな影響を与えた。間接的には日本国民全体がクリーンエネルギーへの関心を高めることになった。直接的には地域住民への被害が挙げられる。多くの場所で放射性物質が検知され、子供たちは外で遊べない状況が続き、除染活動はいまなお続いている。放射性物質を軽減する技術も求められている。

 

グリーン・テク・エクスチェンジ
バンクーバーを拠点とする非営利団体。グリーンテクノロジー分野で活躍するリーダーたちの講演会を毎月行い、グリーンテクノロジーに興味のあるさまざまな分野の人々をつなぐネットワークづくりを目的としている。

HP:http://greentechexchange.wildapricot.org/

(取材 三島直美)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。