―著書『日本を支配する「鉄の五角形」の正体 ―日本を吸い尽くす<政・官・業・ヤクザ・アメリカ>の正体を暴く!―』(扶桑社)には、バブル崩壊から小泉構造改革、民主党政権誕生にいたる20年の間に、日本の富が日本の政治家、官僚、企業、そしてヤクザや警察・公安といった組織を操ったアメリカによって奪っていかれた様子が描かれています。この先、日本はさらに疲弊して行き、回復の見込みはないのでしょうか。

実は、この時の取材で分かってきたのですが、この問題が日本だけではなくアメリカやヨーロッパでも同じ、いやもっと悪い状況だということでした。その原因は、近代の国家体制以前から存在して、莫大な資産を蓄えてきたヨーロッパの王侯貴族が、政治経済の表舞台とは別のところで、その実質的な支配を今に至るまで続けていたことだったのです。
彼らは、民主主義や法治国家以外のところに権力があることが表面に出ると都合が悪いため、政治や経済をはじめマスコミなども支配下に置き、巧みに自分たちの存在と活動を隠してきました。日本ではまだ雑誌や本の出版には自由が残っていますが、アメリカではマスコミはほとんど大手5社に牛耳られ、プロパガンダの機能しか果たしていませんし、内部検閲のひどさから、本当の意味での報道の自由は存在しません。しかし、これからお話しするように、そのグループの活動が破綻し始めるにつれ、情報操作にも限界が生じ、その支配が崩れつつあるのです。

 

―そのようなグループは、具体的にどのように政治や経済を操っているのでしょうか

取材を進めて様々な情報の提供を受けるにつれ、その根源に各国の中央銀行があることがわかってきました。ご存知のように中央銀行というのは、その国の貨幣を発行する強力な権限を持った組織ですが、一部の国を除き中央銀行が民間企業ということは、あまり知られていません。例えばアメリカで中央銀行に相当するのはFRB(連邦準備制度理事会)ですが、これはオーウェングラス法によって1931年に突如作られた民間企業で、その大株主には特定の財閥が名を連ねています。
かつての金本位制度のように貨幣の価値が貴金属などに保証されていた時代には、貨幣の発行量は適切にコントロールされていましたが、このシステムをやめてからは発行量を規制するものがなくなり、今では全体の95%にあたるお金が実態を持たない、コンピュータ上で作り出された架空のものになっています。こういうお金を作り出す利権を独占していたのが、先ほどの王侯貴族であり、ファシスト勢力ともいえます。彼らがそれを元手に政治、経済、情報や教育の支配を進め、さらに自分たちの好きなように経済システムを操ってきたのが、ヨーロッパ・アメリカ中心の金融システムでした。

―アメリカが金本位制度を突如停止したのは、いわゆるニクソンショックといわれる1971年でした。カナダではどのような状態だったのでしょうか。

カナダの中央銀行は比較的長い間独立を保っていて、特に強大な権力を持っていたわけではありませんでした。今でも覚えているのは、子どもの頃に向かいの家に住んでいたのが中央銀行総裁だったのですが、彼は中流家庭の家に住んでフォルクスワーゲンの車で通勤するような、一般的な待遇の公務員でした。
またカナダでは1967年以前は貴金属本位制で、小銭(10セントと25セント)は銀貨でした。それがトルドー首相の時代になってから急速にインフレが進行しました。その頃一本5セントだったチョコバーが、見る見るうちに1ドルにまでなっていったのを覚えています。
結局、カナダもヨーロッパの王侯貴族の支配下にあり、イギリス(エリザベス女王)の影響力が及んでいるのです。カナダの90%を占める、クラウンランドと呼ばれる土地の名義はイギリス女王ですし、コインにも彼女の肖像画が入っているなど、その存在は単なる象徴以上のものがあるのですが、その事実は一般市民からは隠されてきました。

 

―その後の世界経済の動きから、どのように最近の金融危機に発展して行ったのでしょうか。

先ほど説明したとおり、実態のないお金がどんどん作られていきました。アメリカにはもともとグラススティーガル法という、金融機関を監視して業務規律を守らせるための法律がありました。しかしクリントン大統領の時代に様々な理由(近年の金融商品やサービスの多様化にはそぐわなくなってきた、金融業の自由化を促進する、など)がつけられて、いくつかの条項が廃止されるなど骨抜きにされてしまいました。その結果として裏帳簿管理が始まり、法の規制と関係のないところで、博打のようにお金が作られていくようになったのです。分かりやすく言うと、一ドル札だけ持ってカジノに行っても、100ドルの賭けができるようにしたようなものです。
BIS(国際決済銀行)の昨年6月の統計によると、金融派生商品の残高は707兆ドルに上ります。その一方、世界の国々のGDPを合計しても年間65兆ドルにしかなりません。いかに実体経済からかけ離れた、途方もない規模のお金が世界中を駆け巡っているかがおわかりでしょう。こうしたお金はデリバティブなどで作り出されたものですが、これは単純に言ってしまえば賭けです。つまり相手があっての話なので、誰かが勝てばその分誰かが負けなければならず、最近の不安定な相場を見ると、もはや明らかに払いきれないほどの損をした大手金融機関があるはずです。つまり現在の金融システムは崩壊し始めているのです。

 

―具体的には、どのような状態が見られるのでしょうか

まず、IMF(国際通貨基金)の状態を見てください。戦後、様々な国が財政破綻に陥った時に、最後の貸し手となってきたのがIMFでしたし、今回の欧州金融危機でもそう期待されていました。しかし、そのIMFがもう資金がないと言っています。これはどういうことかと言うと、IMFを支える国際条約がなくなっていることが根本にあるからです。IMFの根拠となっていた、1944年に締結されたブレトンウッズ協定は発効後50年で切れてしまい、そのあと世界銀行とIMFはヨーロッパ主導で無免許運転を続けているような状態なのです。それを止めさせようとした勢力との確執から、リーマンショックや欧州金融危機が起こりました。
また中国の経済活動が、アメリカやヨーロッパの金融危機を起こす大きな引き金だったのも事実です。多額の対米貿易黒字を生み出した中国は、そのお金を昔のように米国債購入にあてることをせず、かわりにアジア・アフリカの資源や工場、不動産といった実態のあるものを買うようになってきたのです。つまりバーチャルなお金しかない欧米が足元をすくわれた形ですね。それに対してアメリカ・ヨーロッパは石油高を演出するなどして自分たちの金融システムの延命を図ったのですが、結局危機を招いてしまいました。
ここ30年間の国際貿易統計(図1)を見ると、構造的黒字を持っている国は、中国、ロシア、日本、いくつかの石油輸出国(リビア、ベネズエラ、アルジェリア、サウジアラビアなど)です。また慢性的に赤字、例えるならばカードで買い物をし続け、支払いを先延ばしにしているのがアメリカや北欧以外のヨーロッパです。結局、実態のあるお金を持っているアジアの国々が、自分たちでこのお金の使い方を決めようと動き始めたことから、世界覇権争いが生じたのです。

 

―カナダの経済は、アメリカの経済と密接に関係していますが、アメリカと共倒れになるのでしょうか

ハーパー首相以前のカナダは、国際紛争を平和裏に解決するよう働きかけるなど、アメリカとは一線を画した外交方針が評価され、世界で最も信頼される国のひとつでした。それ以降はご存知のとおり、アメリカ追従の政策に転換してしまいましたが、まだ方向転換は可能です。
ところで今、あらためて世界を見渡してみると、ヨーロッパとアメリカを除く世界の経済成長率は7%といわれています。これはつまり、今まで先進国の金融システムの蚊帳の外に置かれてきた国々の約60億の人々の生活水準が上がってきているのです。そこでは購買力がどんどん上がってきますから、その需要を満たすための資源が必要で、資源国であるカナダがそれらの国に貢献できれば、国内の経済にも刺激を与えることになりますから、これはいいことです。さらに人類にとっても、今まで戦争を手段とした支配を続けてきた側の勢力への資金供給が止まるわけで、イラン侵攻などもできなくなり世界平和につながる、いいことと言えるでしょう。

 

―世間ではイランの挑発的行動が毎日のように報道され、イラン侵攻の可能性がいつも取りざたされていますが

ワシントンD.C.の政治家は、イラン侵攻の口実を何とか作り出そうと画策していますが、そもそもアメリカ軍がこの侵攻に賛成していないようです。と言うのは、軍とワシントンD.C.の間で決裂が起こっているという情報があるのです。これも取材から得たものですが、ワシントンD.C.のほとんどの議員、政府の人間がバチカン銀行に口座を持ち、相当額(何億ドル)のお金を密かに蓄えているようです。このことが意味しているのは、彼らがもはやアメリカという国のためではなく、冒頭お話した中央銀行などを支配している一部グループのために働いているということで、そのことに軍部が反発しているということです。


(取材 平野直樹)

注 この取材は、ベンジャミン・フルフォード氏と直接スカイプで行われた。

◆次回後編では、金融危機の今後の展開と、2012年の日本経済の行方について、フルフォード氏が独自の取材に基づいた情報から解き明かしていく。

 

ベンジャミン・フルフォード氏プロフィール
1961年カナダ生まれ。上智大学比較文化学科を経て、ブリティッシュ・コロンビア大学を卒業。「日経ウィークリー」記者、米経済誌「フォーブス」のアジア太平洋支局長などを経て、現在はフリーの国際ジャーナリスト、ノンフィクション作家として活躍中。著書に『メルトダウンする世界経済―闇の支配者と「金融大戦争」のカラクリ』(イーストプレス)、『3・11人工地震テロ&金融サイバー戦争 二人だけが知っている超アンダーグラウンドのしくみ だまし討ちに気づかない日本人へ!これ以上毟られるのがいやならこれだけは知っておけ!』(ヒカルランド)、 『図解「闇の支配者」頂上決戦』(扶桑社)、『イルミナティだけが知っている[洗脳工学編]闇の支配者「絶対構造」の超カラクリ』(ヒカルランド)など多数。

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