2018年5月24日 第21号

5月17日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市にある、ロバート新見日系ホーム内の健康ウェルネスラウンジで、健康トークが開催された。日系シニアズヘルスケア&住宅協会(日系シニアズ)と日加ヘルスケア協会の共催で、今年から来年にかけて全4回行われる予定。今回はその第1回目となり、自宅で受けられるケアについての説明があった。約40人の参加者が熱心に話に聞き入っていた。(メディアスポンサー:バンクーバー新報)

 

定員いっぱいとなった会場。関心の高さがうかがえる

 

 最初に日系シニアズのエグゼクティブディレクター、キャシー・マキハラさんが、会場となった健康ウェルネスラウンジは、ことしの4月にオープンしたばかりのロバート新見日系ホームの新しい施設だと説明した。ここでは、健康維持のための運動プログラム、音楽療法や料理療法のワークショップなどが行われている。続いて、日加ヘルスケア協会の理事長、田中朝絵医師が両団体の共催イベントが行われることになった経緯を説明した。第1回目となる今回の内容について、なるべく長く老後を自宅で過ごしたいと考えたとき、どんなケアを受けることができるかなど、多くの人の関心をひくようなトピックであろうと話した。

 

自宅で受けられるケアとは

 ソーシャルワーカーのアンダーソン佐久間雅子さんが、自宅で受けられるケアの種類や方法について説明した。加齢や病気により自宅でケアやヘルプが必要になった場合、まずどんなヘルプが必要かを明確にする必要がある。こうしたケアやヘルプは生活援助と生活介助・身体介護の2つに分けられる。生活援助とは、家事や日常生活の援助のことで、掃除、調理、買い物、送迎、金銭管理、薬の投与や管理といったことを手伝ってもらうというもの。こうした援助は、主に次の4つの機関などから受けられる。

1)営利ホームケア・サービス派遣会社 
2)非営利コミュニティーサービス 
3)有償の個人ヘルパー 
4)無償ヘルパー。

 生活介助・身体介護とは、身体に直接触れてする介護のことで、入浴、着替え、排せつ、移動や外出の介助など。こうした介助、介護サービスを提供するのは前述した1)、3)、4)に加えてホームヘルスがある。このような中から、自分の生活環境や経済状況を考えて、どこからヘルプを受けるかを決めていく。特に生活介助や身体介護が必要な場合は、まずホームヘルスに相談(無料)することが勧められる。それぞれの特徴等は以下の通り。

1)営利ホームケア・サービス派遣会社…生活援助、身体介護、生活介助、レクリエーションの手伝いなど。サービス料は派遣会社やサービス内容により異なる。
2)非営利コミュニティーサービス…Meals on Wheels等のランチプログラム(有料)、Better at Homeによる送迎サービス、掃除、買い物サービスなど(内容により有料と無料あり)、各団体が提供するボランティア訪問や電話友達など。こうしたサービスはwww.bc211.caで検索できる。また、電話番号211にかけて問い合わせもできる(日本語通訳もある)。
3)有償個人ヘルパー…新聞や口コミなどで雇用。サポートの費用は個人により異なるのでリサーチが必要。どんなサポートが必要か明確にしておくことが大切。
4)無償ヘルパー…家族、友達、知り合い、宗教・カルチャラル団体等

 

ホームヘルス Home Health

 居住する地域の保健局(Health Authority)のホームヘルスオフィスに連絡し、自宅で受けられるサービスを依頼する。主なサービスは生活介助、身体介護。薬の投与や管理は生活援助であるがホームヘルスが提供する。

 ホームヘルスからは、看護師(Homecare Nurse)、作業療法士(Occupational Therapist)、理学療法士(Physio Therapist)といったHealth Professionalが自宅を訪問して査定を行う。それに基づいて、ホームサポートワーカーによる適切な介護サービスが1〜2カ月ほど提供される。その後、介護サービスが長期にわたって必要とされた場合、ケースマネジャーが詳細な査定をして介護サービスの提供を行う。こうしたサービスを受ける時間数や訪問頻度などは、査定によって決定される。また、看護師、作業療法士、理学療法士、ケースマネジャーによるサービスは無料だが、介助・介護サービスは長期の場合は有料となる(短期間の場合は基本的に無料)。その費用の計算は年間収入を元にして算出される。重度の介護が必要な場合、ホームヘルスのサポートと、営利ホームケア・サービス派遣会社や、有償個人ヘルパーを組み合わせて利用することもできる。

ホームヘルス問い合わせ先ー居住する地域を管轄する保健局
フレーザーヘルス(Fraser Health)
ホームヘルス・サービスライン 1-855-412-2121
在宅サポートの情報 www.fraserhealth.caのサイトで Health Infoのメニューから Home and Community Careを選ぶ
バンクーバー・コースタル・ヘルス(Vancouver Coastal Health)
バンクーバー 604-263-7377
リッチモンド 604-278-3361
ノースバンクーバー 604-986-7111
在宅サポートの情報 www.vch.caのサイトでYour Careのメニューから Home&Community Careを選ぶ

 

家族による介護

 家族が重度の介護が必要となり離職せざるを得ない場合、失業保険(Employment Insurance)を受給できる。Family Caregiver Benefit for Adultsは、生命に関わるような重篤な病気や怪我を負った家族の介護やサポートのために離職せざるを得ない場合、15週間受給できる。海外に住む家族の介護にも適用される。また、Compassionate Care Benefitは、家族が余命26週間と告知され、介護やサポートが必要な場合、26週間受給できる。詳細はwww.canada.caのサイトから Employment Insuranceの項目を参照。

 

自宅で受けるケアの重要性

 自宅で必要なケアやサポートを受けることで、自宅に長く住むことができる。自立した状態を長く保っていくためにも、自分にとって必要なヘルプを把握して手配し、サービスを受けることが大切だ。また、将来的に自宅に住み続けることが難しくなったとき、政府が運営するケアホームに入居するためには、自宅で生活介助や身体介護のサポートを何らかの形で受けていることが条件となる。この場合、ホームヘルスからだけでなく、派遣会社や有償及び無償のヘルパーから身体介護のサポートを受けているということでも良い。どんな身体介護を日に何時間くらい受けており、なぜそれを継続できないかという理由を明確にホームヘルスに伝えることが重要である。

注意:ここに記載された情報は2018年5月17日時点のものです。ヘルスケアのシステムやコミュニティーサービスなどは日々変わっているので、ご自身で最新の情報を得るようにしてください。

 

今後の開催予定

 今回のトピックである「自宅で受けられるケア」の英語でのセミナーが、同じく健康ウェルネスラウンジで6月14日午後6時半から8時まで開催される。親が日本語を話すものの、英語の方が理解しやすい子ども世代にとって英語でのセミナーは助けになるだろう。また9月にはケアホームなどの施設の種類や申込み方法についてのセミナーを予定しているほか、来年にもシニア向けのセミナーが予定されている。

日加ヘルスケア協会のフェイスブック https://ja-jp.facebook.com/nikkahealth/
ヘルスケアなどについての最新の情報をアップしている。

日系シニアズヘルスケア&住宅協会のサイト seniors.nikkeiplace.org/ja
健康ウェルネスラウンジでのプログラムなどもチェックできる。

(取材 大島多紀子)

 

講師を務めたアンダーソン佐久間雅子さん(左)と田中朝絵医師

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。