2018年2月15日 第7号

2月6日、バンクーバー市にあるランガラカレッジにおいて、晩香坡櫻會(以下、櫻會)が日本の祭りや神輿、神道についての講演会を行った。ランガラカレッジではこの日、アジア学部が主催するアジアン・スタディ・デーが開催されており、この講演はその一環。「現代日本文化と社会」のコースを取る学生たち約40人が出席し、講演に熱心に耳を傾けていた。

 

櫻會のメンバーと学生さんたち。前列左から2番目は高柳慈子先生

 

神輿を通して日本文化の紹介

 ランガラカレッジで日本の歴史、社会、文化を教える高柳慈子(なりこ)先生が、櫻會の活動に興味を持ち、授業の中で神輿や祭りについて紹介してほしいと依頼して実現したのが今回の講演だ。「授業の中で神道について説明しましたので、それに関連して日本の祭りや神輿について、櫻會の方にお話していただくことになりました」と高柳先生。そして、これらのトピックについて、講演後に学生たちと深いディスカッションができるかもしれないと期待をのぞかせた。

 櫻會の役員としてさまざまな活動に参加しているアイバン・ホンさんが講師を務め、学生たちとテンポよくやり取りをしながら、神道や神輿のことについてわかりやすく説明した。その概要を紹介する。

 

神道

 神道は日本の古来からの宗教だ。八百万の神というように、神道における神は多岐にわたる。日本人は気象、地理地形など、あらゆるところに神の存在を感じる。神とは人々を守る守護神のようでもあり、天変地異を起こしたりする祟り神というものもある。また、社会的に突出した人や国のために働いた人などを、その死後に神として祀り、多くの人の崇敬を集めたりもする(例…学問の神として祀られる菅原道真など)。

 神道の神を祀っているのが神社で、日本には8万社以上あるという。その中から世界文化遺産に登録されている広島県の厳島神社や、京都の北野天満宮についてビデオで紹介した。また、神社の一般的な構造と参拝の仕方を説明するビデオも流し、神社に対する理解を深めた。日本以外にも神社はあり、バンクーバーから近いところでは米国ワシントン州の椿大神社(つばきおおかみやしろ)がある。

 

祭りと神輿

 日本人が神を祀ったり、豊作や健康などを祈願または感謝したりするためのものが祭りである。もともとは神事として行われていたが、今では地域活性化イベントや市民祭りなどといった目的のものまで幅広い種類がある。有名な祭りには国内に限らず海外からも観光客が見に来る。

 日頃は神社に宿っている神霊を乗せて氏子町内を巡る輿を神輿という。神輿にはいろいろなスタイルがある。今回は東京浅草の三社祭と神奈川県茅ケ崎市の浜降祭(はまおりさい)の様子をビデオで紹介し、構造や担ぎ方の違いを説明した。浜降祭が行われる茅ケ崎で担がれるものは湘南神輿と呼ばれる。甚句という民謡のようなものに合わせて「よい、よいと」という掛け声で担ぐ。神輿の台輪(だいわ)の横についている鐶(かん)という金具を叩いてリズムを取るのも特徴だ。今回、神輿は大きすぎて教室に入らないということで、飾り長柄(ながや)という棒を2本用意し、櫻會のメンバーが湘南神輿の担ぎ方の実演を行った。さらに、学生たちから希望者を募って一緒に担いでみる体験をした。

 アイバンさんは昨年7月に行われた浜降祭に参加。午前3時頃、神社を出発し、6時頃に海辺に到着、神輿を担いで海に入る「みそぎ」があり、それから地元町内を渡御する。初めての浜降祭参加は感動の体験だった、と熱く語った。そんな湘南神輿が茅ケ崎市在住の神輿職人、中里康則さんによって制作され、櫻會に奉納されたのが昨年夏のことだ。7月1日に行われた神輿の譲渡式と7月2日のカナダデーパレード参加のために、日本から中里さんをはじめとする16人が来加、湘南神輿のバンクーバーデビューを飾った。8月にはバンクーバーのコンベンションセンターで開かれる恒例のアニメレボリューションにも参加した。

 

手ごたえを感じた講演会

 質疑応答では、日本人の神に対する考え方や神輿に関する質問のほか、櫻會の活動についても質問が多数寄せられた。講演後、学生たちからは「とても興味深い講演だった」「楽しかった」「(講演を聞いて)『私は日本の文化が大好きです』と改めて思った」などの感想が寄せられた。講演内容に関してもほとんどの学生がポイントを的確に捉えていたようだった。

 講師という大役を務めたアイバンさんは、「学生さんたちは、最初はあまり興味がなさそうな感じでしたが、最後には喜んでくれたようで良かったです。今度は本物の神輿を持ってこれたらいいですね(笑)。終日アジア学のクラスを行って、クラス終了後にみんなで一緒に神輿を担ぐのもいいですね」と意欲的に話す。清野健二さん(櫻會代表)、生田目謙さん(幹事長)、中里康則さん(相談役)と、アイバンさん(コーディネーター)の4人で立ち上げた櫻會。今のところ日本語を話すメンバーが中心となっているので、カナダ人にももっと参加してほしいとアイバンさんは考える。「文化交流をしたいと思って、今回初めて英語で神輿のことなどを紹介しました。このようなことを他の学校などでもできたらいいです」と話す。

 代表の清野健二さんは「櫻會では文化交流など、いろいろな活動をしていますが、今回はカレッジで学生さんに向けて、神輿や神道のことを説明する初めての試みでした。アイバンをメインスピーカーにした理由は、彼も昨年、浜降祭に参加して、彼自身が本当に感動したというその気持ちを、自分の言葉で学生さんたちに話してもらうことが一番伝わるかなと思ったからです。非常に良かったなと思ってます」と話す。そして「櫻會では、日系のコミュニティとの関係もとても大事にしています。同時に、バンクーバーの地元の人たちに日本の文化に興味を持ってもらいたいという思いは、当初から持っていたものでもあります。今回、その一歩を踏み出せたかなと感じました」と感想を語った。

 

櫻會からのメッセージ 
櫻會は日本文化への理解と地域の活性化のために有志による運営を行っています。
櫻會の活動内容についてはウェブサイトやフェイスブックをご参照ください。
www.vancouversakurakai.com
@vancouversakurakai.com
櫻會の活動趣旨に賛同し、協力していただきたくお願い申し上げます。
お問い合わせは、This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.
また、2018年度年間ボランティアも募集しています。
ご興味のある方は、ウェブサイトかフェイスブックをご覧ください。
お問い合わせは、volunteer@vancouversakurakai.com
櫻會の活動を一緒に盛り上げてください。
よろしくお願い致します。

(取材 大島多紀子)

 

 

左からボランティアの弥園修太郎さん、岡田樹さん、櫻會代表の清野健二さん、幹事長の生田目謙さん、今回の講師を務めたアイバン・ホンさん

 

神輿担ぎの体験中。掛け声と甚句で本場のような雰囲気に

 

学生たちが熱心に聞き入っていた講演中

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。