「アトピー性皮膚炎と薬」佐藤厚氏 (BC州薬剤師)
講演の第一部では、日本とカナダ両方の薬剤師免許を持つ佐藤氏が、アトピー性皮膚炎の治療に用いられる薬について、信頼性の高い情報源の紹介を交えながら解説した。

 

1・アトピー性皮膚炎の定義と症状
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis, atopy, eczema)は、日本皮膚科学会の定義によれば、表皮(特に角層)の異常に起因する皮膚の乾燥とバリア機能異常という、皮膚の生理学的異常のこと。慢性に経過する炎症とかゆみが特徴。
急性期(症状が劇的に悪化していく時期)には、
•赤み
•グジュグジュ
•小さいブツブツ
•かさぶた
•皮がむける
といった症状がみられ、慢性期になると、
•皮がむける
•皮膚が厚くなる
•炎症の跡が増える
•コケのようになる(ガサガサ)
のような症状となる。

 

2・アトピー性皮膚炎の原因
日本にある国立成育医療センターの大矢幸弘先生によれば、文明化による食生活の変化、抗生物質の多用、住環境の変化、家庭の電化製品の発達による夜型生活などの原因によって免疫バランスが変化。そのためにアレルギー体質の子供が増え、また自然治癒力が低下し、アレルギー疾患の増加につながったと考えられている。
アトピー性皮膚炎の症状を軽減させるためには、以下の三点を守ることが重要。
•皮膚を清潔に保つ
•症状を悪化させるものを避ける
•薬を適切に使用する

 

3・代表的なアトピー性皮膚炎の薬
保湿剤(外用)
炎症を起こした皮膚はバリアが壊れ、水分が角質層から逃げやすくなっているため、この水分を皮膚内部に留める、また皮膚に水分を与えるために保湿剤を用いる。効果的な使用方法は、シャワーや入浴後のまだ皮膚が潤っている3分以内に塗布を済ませること。
ステロイド薬(外用)
ステロイドは抗炎症作用(痛み、かゆみを抑える)に優れる反面、副作用もある。この点についての説明とともに、カナダと日本のステロイド薬を対比させながら使用方法についての解説がなされた。一般的には、症状がひどい時に強いステロイド薬を用い短期間で改善させ、その後保湿剤に移行していくのが効果的とのこと。(ただし個々の症例では、薬剤師や医師の指示に従うことが大切)
カルシニューリン阻害薬(外用)
ステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える。ステロイドほど副作用の心配がないので、ステロイドが合わない場合の候補になるが、値段が高い。

 

4・心のケアも忘れずに
また、発症部位によっては他人の視線が気になるなど、特に子供の場合には精神面のケアも大切になってくる。

 

「アトピー性皮膚炎に対する第三医学の考え方」 トニー・ウー氏(BC州中国医学医師)

第二部ではウー氏が、漢方薬、栄養とスキンケア、ストレス解消という三つの観点から、アトピー性皮膚炎の治療法、治療実績と予防法を解説した。
第三医学とは、西洋と東洋のそれぞれの医学システムから、良いところを採用して治療にあたり、現代医学の難問を解決しようという新しい考え方のこと。中国語で中西医結合(ちゅうせいいけつごう)、英語でIntegrated Traditional and Western Medicine (ITWM)と呼ばれる。

 

アトピー性皮膚炎に対する第三医学の治療方法

ウー氏が行う治療方法は、次のふたつからなっている。
①漢方薬により、アトピーの症状を改善する
②西洋医学の知識を活用しながら、アトピー体質を変えていく
まず漢方薬による症状の改善をはかる。漢方薬はその効果が見られ始める(痒みが緩和する)までに、治療開始から平均で2〜3週間かかる。「現代は即効性が重宝されますが、漢方に関しては意識を変える必要があります」とウー氏。実際の治療例が幾つか紹介されたが、重症の発疹・ひび割れが治療開始から30週間後にはきれいに治癒した症例でも、開始後10日の写真ではあまり変化が見られず、確かに長期的に取り組んでこそ良い結果が得られると実感した。
また治療と並行して、バランスのとれた栄養摂取のための栄養指導、ストレス解消のための生活指導、肌のバリア機能を保つためのスキンケア指導を行っていく。ウー氏がこの点を重視しているのは、患者の半数以上が偏食、朝食抜きなどの偏った食生活から栄養失調状態になっていたためで、特にこの点に留意しているからこそ、治療後の再発が起こりにくいという。

 

アトピー体質と未病アトピーとの関係

未病アトピーとは、アトピー体質で皮膚が健康ではないものの、皮膚炎には至っていない、いわばアトピー予備軍の状態で、次のような特徴がある。
①爪に艶がなく柔らかい、割れやすい。表面に縦線や白い斑点がある。ひどい場合、凸凹している
②皮膚が鳥肌状でカサつき、手触りが悪い。色素沈着が目立つ
③皮膚の乾燥感、軽度の痒み
といった自覚症状がある
このような兆候が見られたなら、日ごろからアトピーについて(次項参照)考えることが大切。

 

アトピー性皮膚炎の原因についての検討

原因についての知識があれば、発症を避ける日常生活が送られる。現在、以下に示した要素が原因となることが分かっているので、このことを常に心がけ、予防する。
①栄養失調による皮膚のバリア機能の低下
最近、栄養が今までの想像以上に皮膚の機能に影響を及ぼしていることが分かってきた
②ストレスによる皮膚毛細血管機能の低下
ストレスによって皮膚への毛細血管が萎縮(縮まる、あるいは収縮する)。結果として皮膚の栄養が(供給不足となり)消耗し、抵抗力が低下する
③刺激の強い石鹸・洗剤の使用によるバリア機能の破壊
アルカリ性の石鹸や、浸透性の強い化学界面活性剤(Sodium Lauryl Sulfate (SLS) が代表的)は、皮膚の弱酸性の膜や角質層を破壊する。

 

「母親としての体験談」田中朝絵氏(BC州家庭医)

講演最後には、自身の長女のアトピー性皮膚炎と長年闘ってきた田中朝絵氏から、その体験が紹介された。

 

アトピー性皮膚炎の可能性と、実際例
アトピーの体質は遺伝なので、家系の中にその病歴があれば、可能性がある。田中氏の長女の場合は、父方にそれがあった。
そして実際の症状は、オムツかぶれから始まった。2歳のハロウィーンの時(暖房を使い始めた頃)には、おせんべいを食べたら赤いぽつぽつが顔に出るのを発見。その後、料理で使っているオーブンを開けると(乾いた熱い空気にあたると)体を掻き始めるのにも気がつく。そしてこの皮膚炎との長い闘いが始まった。

 

症状を治す(軽減させる)ためにやったこと

①かかない(皮膚を傷つけない)
代わりに、たたく、つねる、冷たいものを乗せるなどして、痒みをやわらげる。また子供に掻かせるのではなく、親が患部に爪を当てる(決して掻かない)のも有効。

②熱のこもらない服装をさせる
熱や刺激が痒みを引き起こすので、体にフィットする(伸縮性のある)ような服を避ける。綿か絹で、肌との間を風が自由に通るような硬めの素材が良い。
③皮膚を清潔にする
炎症の原因となる皮膚の表面のバクテリアを除去し、さらに毛細血行を良くするには入浴がよい。ただし石鹸の種類によってはバリアが壊されるので注意。田中氏の場合、様々な種類を試した結果ピリカレという、日本からの石鹸(洗剤)ならば調子が良いことが分かったとのこと。
④入浴後の保湿について
皮膚に入った水分を逃がさないために、出来れば1分以内にクリームを全身に塗る。クリームも様々な種類が出回り、一概にどれが良いとは言えない。少量のボトルであればこれ試してみて、本人にあったものを選ぶようにする。
⑤ストレスを減らす
人間の身体的機能は、ストレス(危機)の状況下では生命維持に重要な部位に、より多くの血液をまわすように出来ている。その結果、優先順位の低い皮膚などは血行が悪くなり、その健康が損なわれやすい。
⑥薬について
ステロイドは治すために使うので、凸凹になった患部の突起部まで覆うようにたっぷり塗る。

三人の講演終了後、参加者から質問や体験談が次々と語られた。こうして専門家と当事者が直接情報交換できることこそが、講演会の魅力だろう。記事中触れたピリカレという石鹸についても、アトピーの娘を持つ参加者からは、かさぶた段階の炎症には利かないようだったという、違った視点からのコメントもなされ、参加者が多ければ多いほど有意義な情報を共有できるメリットがある。ウェブサイトなどの情報源も有効だが、双方向かつ生の情報を交換できる講演会のメリットには及ばないと感じられた。
(取材 平野直樹)

 

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