2017年11月2日 第44号

わが家をもっと快適に、お気に入りの空間にしたい、とは誰もが抱く思い。また最近では、売却したいので少しでも有利なようにリノベーションをしたい−−でも、誰に相談すればよいか、費用はどれぐらいかかるのか、見当もつかない−−で、一歩も踏み出せずにいる人が、案外多いもの。そこで、ここカナダで唯一の日系人の建築業界関係者のプロフェッショナル集団『建友会』が、10月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で、『住まいのリノベーション相談会』を開催した。参加者数35名。事前に質問などを集めた内容を中心に、インテリアデザイナーの清水嗣保子さん、大工の棟梁の穴澤龍哉さん、リアルターのフレッド吉村さんが、それぞれの立場から、わかりやすく説明した。休憩タイムや終了後も直接相談する人があとを切らない盛況の相談会であった。

その概要を要約して紙面でご紹介−−−。

 

会場には、建材のサンプルなども展示

 

インテリアデザイナーの立場から 清水嗣保子さん
「一度、お気軽にインテリアデザイナーにご相談ください」  

 まず、第一歩は、そこから始まります。私たちの仕事は、あなたとの雑談からスタートするといっても過言ではありません。そんな中から、あなたが望まれる空間づくりのヒントを探り出し、ひと目でわかる形にしてご提案。見積り、工事業者、住宅建材・機器の選択、パーミット書類の提出のお手伝い、工事の進みぐあい、完成までをサポートします。

 例えば、キッチンカウンターの色、素材、テクスチャーを選ぶにしても何千という種類の中から一つを選び出すことは、とても困難なことです。洋服選びと違って、面積が大きく、それを部屋に置いたときの見え方は、違って見えたりします。また、住宅機器の種類、材料、価格なども千差万別。それらを部屋に置いたときを想像しながら、あなたがイメージされる空間づくりに寄り添いながら決めていきます。私たちは、日ごろから、住まいやライフスタイル、トレンドなどのあらゆる情報をインプットしており、その中から候補を選び出しご提案します。できるだけご要望に沿うように、そして今より豊かなライフスタイルで新しい空間でご提案いたします。いっしょに創り上げていきましょう。

 キッチンづくりひとつでも、日本人の食生活、習慣を十分心得てご提案します。和食、中華、洋食、様々な料理をするのが日本人です。食器や調理器具の種類、数も多く、収納スペースや収納方法なども考える必要があります。日本人の背丈に届くようにアッパーキャビネットの高さを低めにしたり、中の物を取り出しやすくしたり、シンクも大きくしたいですね。

 あなたがリノベーションをしたいと思われる動機、「子どもたちが独立してしまい、家族構成が変わったので、ホームステイに貸し出そうか」とか「和風の暮らしがなつかしいけど、モダンな暮らしも捨てがたい」、また、「体が弱ってきたので、バリアフリーの部屋にしたい」などなど、ライフスタイルに合わせたご希望をカタチにしましょう。そのお手伝いをするのが私たちの役目です。

 

大工の棟梁の立場から  穴澤龍哉さん
「職人にヘタな仕事はさせません!」

 『大工の棟梁』というのは、施工現場の仕事の質や、日程、職人たちの安全管理の総責任者、ということになります。通常はインテリアデザイナーや、建築家の図面、指示をもとに具体化する、また、逆にお客様からの依頼を直接受け、インテリアデザイナー、建築家に私たちが相談をして作り上げていく場合、あるいは、私たちのみで行う場合などもあります。役所へ届けるパーミットの作成も行います。

 よく聞く『手抜き工事』は、工事直後や、できあがってしまってからでは、見抜けません。かといって、四六時中お客様が現場に張り付いているわけにもいきません。また、一般の人には見抜かれないようにやるのも『悪質プロの仕業』です。私たちもいろいろなリノベーションの現場に携わってきましたが、解体時に『ゴミ壁』と呼ばれる、壁の中にゴミを封じ込めてしまった現場や、フロアのレベルをキチンと合わせずカーペットやフロア材を張ったもの、浴室の壁の中が水浸しになっていた『濡れ壁』などを目撃してきました。私は日本人として、こうした『手抜き工事』を絶対に見逃すことはできません。これは、お客様と私の信頼関係が絶対条件であり、たとえ長年の仕事仲間であっても、私が、現場作業員の一部始終に目を光らせておくゆえんです。

 

リアルターのフレッド吉村さん
「リノベーション投資で、見返りはきっとある」

  私が、売却のご相談のとき、よく聞かれることが、「売るためにわざわざリノベーションをする必要があるんですか?」「元は取れるんですか?」などです。私は、「当然、必要で、必ず投資以上の効果があります」と答えます。

 今は、売り手市場ですから、売却時に競合オファーになりますが、リノベーション済みの物件は、買い手に対して好印象を植え付けることができます。価格や、条件面での交渉が有利です。リノベーション・コストの数倍の対価をつけて落札されています。

 家全体的になんとなく古い印象があると、セールスポイントに欠けます。買い手のほとんどの場合が、頭金に現金の多くをつぎ込んでいますから、買ったあとリノベーションをする余裕がなく、そのまますぐ住める物件に人気が集まるのです。古い備品、昔の水漏れの跡、においのリフレッシュ、暖房、給湯器、窓などを交換しておくことが、肝要です。インスペクション(公的機関の検査)での問題をカバーできます。

 一方、やってはいけないこともありますので、ご注意ください。

●下手なDIY
●壁などをマスキングテープなしでペイントすること(はみ出たペイントは醜いもの)
●間違えた材料や方法での修繕
●濃い色調や変わった色彩のペイント、壁紙や花柄の壁など、ユニークすぎる改装はやめましょう
●個性を強調した装飾品は避けてください

 大多数の人が好むインテリアの物件が売れやすいのです。

 売却を目的にしたリノベーションですから、この際、個人の趣味はすべて捨て去ってください。また、売却をお考えになったら、ひとまず、私どもにご連絡ください。早く、そして有利な条件で売却できるよう、お手伝いいたします。

 最後に挨拶をした建友会会長の吉武政治さんは、「リノベーションを依頼する側、される側の信頼関係がいかに重要かを改めて感じました。私たちの建友会は、日系人のプロ集団でもあり、より安心して仕事を依頼していただけるよう、さらに研鑽を重ねていかなければならないかを痛感いたしました」と、締めくくった。

(取材 笹川守/写真提供 建友会)

 

 

リアルターのフレッド吉村さん

 

大工の棟梁の穴澤龍哉(あなざわたつや)さん

 

インテリアデザイナーの清水嗣保子(しみずしほこ)さん

 

壁の内側にゴミを押し込めてあった『ゴミ壁』

 

浴室の壁の中が水浸しの『濡れ壁』

 

床のレベルは、水平、均一に

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。