2017年9月28日 第39号

9月23日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で、日系プレース・コミュニティ・アワードが開かれた。日系カナダ人コミュニティに貢献した個人や団体を表彰すると共に、日系センターの活動資金への募金を募るもので、今年7回目の開催となる。会場には200人を超える出席者を迎え盛会となった。

 

 

ユニバーサル・リミテッド・シアターによる「Japanese Problem」上演

 

75年の時を経て  

 第2次世界大戦中、カナダ西部沿岸地域に住んでいた約2万2千人もの日系カナダ人が強制移動させられてから、今年で75年となる。約8千人が、BC州内陸部などに移動させられる前にバンクーバー市東部にあるヘイスティングスパークに仮収容された。日系博物館では9月30日から来年1月14日まで「Hastings Park 1942」と題した展示を行う。この展示と共に、ユニバーサル・リミテッド・シアターというアーティストグループによるパフォーマンス「Japanese Problem」が上演される。このパフォーマンスは、PNE Livestock Buildingで9月27日〜30日まで(詳細はwww.japaneseproblem.caで)行われるが、その一部がコミュニティアワード式典の前に、日系博物館で披露された。

 

日系プレース恒例のイベントに  

 式典は日系文化センター・博物館理事長の五明明子氏の挨拶で始まり、Zen Japanese Restaurantが提供する美しい料理を楽しみながら、コミュニティアワードの授与へ移った。来賓として招かれたラジ・チョーハン州政府議員(バーナビー・エドモンズ地区)が受賞者へ賞状と盾を授与した。コミュニティサービス賞がキャシー・シミズ氏に、日系カナダ人文化賞が語り太鼓に、そして日系カナダ人歴史保存・教育賞がマサコ&スタンレー・フカワ夫妻に贈られた。キャシー・シミズ氏とフカワ夫妻は不在のため、代理としてエリカ・イソムラ氏とケビン・フカワ氏がそれぞれ賞を受け取った。

 その後はブリティッシュ・コロンビア大学の学長、サンタ・オノ氏によるチェロの演奏。エリック・ウォン氏のピアノと、ジテン・ベアリスト氏によるバイオリンとのトリオで、シューベルトのピアノ三重奏を演奏、息の合った美しい音色に会場を埋める人々がじっくりと聞き入っていた。

 後半は、ハワイ・マウイ島のコンドでの宿泊や、レストランのシェフによる自宅出張調理サービス、岡井朝子在バンクーバー総領事からの公邸での晩餐への招待など、豪華な賞品が並んだライブオークションが行われた。日系博物館での活動をサポートするFund-A-Needでは1万ドルから100ドルまでの寄付金を募り、多くの有志が寄付を申し出ていた。会場の外のホールでは式典開始前からサイレントオークションも行われており、日系センター事務局長ロジャー・レミレー氏が今回の寄付金総額は、約10万ドルに上ると発表した。最後は実行委員長を務めたケビン・イソムラ氏の挨拶で締めくくられた。このイベントは、ロス・サイトウ氏とワード・サイトウ氏が経営するカナディアンタイヤのバンクーバー2店舗が主催、日系コミュニティを中心とするたくさんのボランティアの尽力のもと、今年も盛会のうちに終了した。

 

日系コミュニティアワード 受賞者

コミュニティサービス賞

 この賞は日系コミュニティを支える活動を長年にわたってリードし、日系コミュニティの基盤を築き上げてきた貢献に対して贈られる。キャシー・シミズ氏はマニトバ州ウィニペグ出身の日系3世。1990年にバンクーバーへ移り、家族が戦前住んでいたパウエルストリートの旧日本人街の周辺と深い関わりを持つようになる。パウエル祭、グレーター・バンクーバー日系市民協会、いくつかの太鼓グループなど、多数の非営利団体や活動団体に所属している。式典当日は米国フィラデルフィアでのボランティア活動に参加するため欠席した。ビデオレターで、多くの素晴らしい仲間たちと共に日系コミュニティに貢献できることをうれしく思うとメッセージを伝えた。

日系カナダ人文化賞

 この賞は日系カナダ人の文化に対する認識の向上に努めた個人や団体に授与される。芸術的に優れているだけでなく、寛容な精神を持ち芸術や文化に深く傾倒していること、そして他者にインスピレーションを与えることのできる存在であることが評価される。語り太鼓は1979年、カナダで初めて結成された太鼓グループ。太鼓についての認識を深めるためのワークショップをカナダ各地で開催するほか、多様な人種的バックグラウンドを持つカナダの人々との文化的交流を行っている。グループを代表して山下敦子氏とジョン・エンドウ・グリーナウェイ氏が賞を受け取った。

日系カナダ人歴史保存・ 教育賞

 日系カナダ人の歴史を保存し、広く普及するという意義ある活動を続けてきた個人や団体に贈られる賞。また、日系カナダ人の歴史と日系コミュニティについての理解を深めることに貢献したことが表彰される。マサコ・フカワ氏とスタンレー・フカワ氏は日系人の歴史に関する講義をしたり、教育機関向け教材の共著を始め、日系漁師の歴史についてまとめた「Spirit of the Nikkei Fleet」(2010年)の共著などを行ってきた。また、日系カナダ人の強制移動の事実をBC州の教育カリキュラムに取り入れる運動でも主要な役割を果たしてきた。賞の授与の際、ダン・ノムラ氏が2人の功績を称えるスピーチをし、ビデオレターではフカワ夫妻が「多くの人たちの助けがなければ成し遂げられないことでした」と受章への感謝の気持ちを述べた。

(取材 大島多紀子)

 

 

 

(右から)キャシー・シミズ氏の代理で賞を授与するエリカ・イソムラ氏、ラジ・チョーハン州政府議員、ジャスティン・オールト氏(写真提供Manto Artworks)

 

 

(右から)チェロの演奏をするサンタ・オノ氏、バイオリン奏者のジテン・ベアリスト氏、ピアノ奏者のエリック・ウォン氏(写真提供Manto Artworks)

 

 

(右から)ラジ・チョーハン州政府議員、語り太鼓のジョン・エンドウ・グリーナウェイ氏、山下敦子氏、司会を務めたジャスティン・オールト氏(写真提供Manto Artworks)

 

 

(右から)ラジ・チョーハン州政府議員、フカワ夫妻の子息であるケビン・フカワ氏、ダン・ノムラ氏、ジャスティン・オールト氏(写真提供Manto Artworks)

 

 

ビデオレターでメッセージを伝えるキャシー・シミズ氏

 

 

マサコ&スタンレー・フカワ夫妻のビデオメッセージ

 

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