2017年9月7日 第36号
バンクーバー市内ターミナル・シティ・クラブで8月23日、日本・カナダ商工会議所第14回年次総会が開かれ、約30人が出席、その後の懇親会には約50人が出席した。会食後には「今どき、バンクーバー不動産事情」と題して不動産仲介業を営む則末恵子さん、村上丈二さんが近年の不動産の状況を語った。
(右)金利の変動も考慮して、返済可能な範囲で不動産を購入すれば、次の不動産価格上昇時に必ず利益が出せると語った村上丈二さん(左)右肩上がりの不動産事情を語った則末恵子さん
日本・カナダ商工会議所の会長・理事が交代
今回の年次総会で、2003年の日本・カナダ商工会議所創設メンバーの一人であり、14年間の理事(その内6年間会長)を務めてきた小松和子さん、そして6名の理事のメンバーの辞任と、新会長および5名の新たな理事を含む、計9名の新年度理事メンバーが発表、承認された。
総会の冒頭には、新会長に就任したアダムズ弘美さんが小松前会長に代わり「日系社会の皆様、今後ともお互いに力を合わせご発展なさいますようお祈り申し上げます」と結ばれたメッセージを読み上げた。その後、会計報告、監査報告、会員数、実施した行事、当会の新たなウェブサイトの紹介が行われた。今年度実施された行事には、ゴルフ大会、ネットワーキング交流会・懇親会、ビジネス講演会・講習会、日系合同新年会があった。そして会は会食と交流の時間に。
アダムズさんに記者から会長就任にあたっての抱負を尋ねた。「新しい形の日本・カナダ商工会議所を盛り上げていくための小さな力ですが、精一杯楽しい会にしていきたいと思います。ビジネスだけでなく、もっと人間的な部分でも協力できる会に、そして月1回の理事会も、メンバーの皆さんが『忙しいけれど行きたい』と思ってくださるような楽しい場にしていけたらと思います」と、普段、病院へのチャリティーコンサートを企画実行しているアダムズさんらしい回答が返ってきた。
「今どき、バンクーバー不動産事情」講演会
「3年間で60パーセントの価格上昇」 則末恵子さんから
会食後の講演会では、バンクーバーで不動産の仲介業を約30年経験している則末恵子さんが、2014年から2017年にかけての不動産価格の動向を中心に紹介した。指標に用いたのは、不動産業者向けの不動産売買ツール、マルチプル・リスティング・サービスの住宅価格指標。一戸建て、コンドミニアムなど、すべてのタイプの住宅を対象に、極端に高い・安い物件を除き、たくさん売れている物件の平均価格の推移を見ていった。グレーターバンクーバー(以下GV)では2014年7月に63万5200ドルだった住宅平均価格が、2017年7月では101万9400ドルにまで上昇(60・4パーセントの価格上昇)。フレーザーバレー(以下FV)での住宅価格も、GVの住宅価格とほぼ同じ平行ラインをたどって同様に上昇。1平方フィート当たりの住宅価値では、2014年7月でGVが411ドル、FVで224ドルだったのに対し、2017年7月時点でGVは638ドル、FVでは371ドルと上昇している。
購入された物件の数を見ると、2014年から3年間では2016年3月がピークで5193件(GV)、2853件(FV)。そこから下降線をたどり、2017年1月から上向きになり、5月ピークになって、また下降し始めている。
次に則末さんが、この数カ月売却を仲介した物件から数件を事例として紹介。その1事例は、バーナビー市のローヒードタウンセンター近くの寝室2室、バスルーム1室、900スクエアフィートの築45年の物件。オーナーは家のあちこちを修理し、オープンハウスに臨んだ。希望販売価格は35万9千ドル。すると希望販売価格と同じ金額で三つほどのオファーが入り、無事売却できたという。
こうした古い物件に関連し、よくある質問が「コンドミニアムは古くなるとどうなるのか」。コンドミニアムの老朽化が進むと、各ユニットのオーナーたちが集まり、再開発希望者が80パーセント以上になれば再開発が可能になる。つまりデベロッパー(開発業者)に売ったり、自分たちでそれを開発したりできる。「デベロッパーに売るほうが高い値段で売れると期待し、再開発へ向けて協議に臨むオーナーは多くいますが、80パーセント以上の合意を取るのは難しいです」と則末さんは語った。その他、各種物件の興味深い販売事例と現在住宅開発中の地域を紹介して、則末さんは自身の講演を結んだ。
「いつでも買い時」 村上丈二さん
「則末さんがすべて語ってくださいましたが」と27年間の不動産エージェントの経験を持つ村上丈二さんが講演を続けた。「バンクーバー不動産市場は過去40年の記録では右肩上がりでずっときている。もちろん上下しながらではあるが。大まかな私見では、10年から15年周期で波が来て、波が来ると5、6年をかけて価格が2倍強になる。2倍強になるといったんマーケットは飽和状態になり、その後、3、4年で2、30パーセントほど価格が下がる。それが落ち着いた頃にまた価格が上がるというのを繰り返している」。
近年は2002年から住宅価格がどんどん上がり、2008年のリーマンショックでいったん15パーセント下落。しかし2009年に15パーセント上昇後は、そのまま上がり続けている状況だ。2002年と現在を比較すると、住宅価格は3倍強まで上がっているという。
その後、村上さんは昨年と今年の住宅売却での手応えを詳しく紹介。住宅の購入希望者が殺到する中、売り手が買い手を選べたのは昨年半ばまでだった。昨年8月3日に非居住者のための15パーセント特別税が導入されてからは、一気にマーケットが冷え込んだ。そのため今年の1、2月までは停滞気味だったが、3月から市場が活気づき、再び物件の取り合い状態に。ただ今年は各地域、各タイプの平均価格的な物件が人気で、戸建てよりもコンドミニアムのほうが売れ行きがいい点は、何でも売れた昨年と違う点だという。
「どんなタイミングで購入したらいいのか」というよくある質問に対して、村上さんは「私の持論では、その人の状況が許す時、その人にお金がある、もしくは借りられる時がいつでも購入するタイミング」と回答。一番重要なのはいつ売るか、そのタイミングであり、それを間違わなければ必ず利益が得られると語り、講演を締めくくった。
講演後、佐野亨さんが15年前の約200万人から現在の約250万人というグレーター・バンクーバーの人口推移を例に出しながら、15年間での変化を語り、大きな新旧交代の行われた第14回日本・カナダ商工会議所年次総会の結びの挨拶とした。
(取材 平野 香利)
理事を10年務めた堀田直人さんが行事報告を行った
写真(右から)年次総会で小松和子前会長の挨拶を代読するアダムズ弘美さん、 理事の若林ケーシーさん、別所ビルさん、藤井ライアンさん
日本・カナダ商工会議所の新旧の理事メンバー一同