会場となったバンクーバー市内のサー・チャールズ・タッパー・セカンダリー・スクール(Sir Charles Tupper Secondary School)には、バンクーバー日本語補習授業校とJALTA加盟日本語学校の生徒300人、保護者300人が集まった。宇宙飛行士という憧れ以上の存在から、直接話が聞ける貴重な体験に、参加者たちは子供も大人も授業が始まる前から興奮気味だった。
今回の毛利さんの来加は、今年が日本カナダ科学技術協力協定締結から25周年になるのを記念して実現した。バンクーバーの前には、モントリオール、オタワを訪問し、講演を行っている。
特別授業は毛利さんと生徒たちが常にやりとりをするインタラクティブな形で進められた。毛利さんの質問に積極的に手を挙げる生徒たちの回答はユニークだ。写真や映像を使って説明する宇宙での生活では、ひとつひとつの行動に子供たちから「お~っ」や、「うわぁ~」っといった歓声が上がる。毛利さんの説明に聞き入る子供たちの反応はとても素直だった。

宇宙から見た地球

「地球は宇宙空間にぽっかりと浮かんでいる」という言葉が印象的だった。漆黒の闇の中にぽっかりと青く浮かぶ地球。「宇宙に行くと自分たちが球に住んでいることがよくわかります」。その姿を自らの目で見た毛利さんの言葉はその映像にさらに真実味を与える。
毛利さんは、1992年、2000年の2回、スペースシャトル・エンデバー号に搭乗。スペースシャトルが宇宙に出るまでの時間は8分半、90分で地球を1周し、その速度は秒速8キロ、時速3万キロと説明する。その驚くような速さの中で、科学者として、さまざまな実験を行った。
実験の様子が映像で紹介された。何よりも生徒たちが驚きと関心を持って反応したのは無重力状態の船内。宙に浮かんだカエルがクルクルと回転する様子や、玉になってフワフワと浮かぶオレンジジュース、飲み込む歯磨き粉や拭き取るシャンプー、水なしの洗顔など宇宙船の生活に「うわ〜」と大きな歓声が起こる。
無重力の実験では、宇宙と地上との違いを説明。首と太ももの周囲を地上で測り、宇宙ではそれがどう変化するかを子供たちに直接考えさせる。実験結果を推測するよう質問された子供たちの答えはさまざま。毛利さんは子供たちに、なぜそういう答えを導き出したのかを自分で考えさせる。そうして、自分なりの答えを持って回答を知る。「他から得た知識だけを頼るのではなく、自分でなぜそうなるのかを考えて答えを知ると、もっと科学が面白くなる」。それが毛利さんの子供たちへの贈りものだった。

宇宙飛行士になるという夢

ガガーリンが人類で初めて宇宙に行った。毛利さんが13歳の時だったという。「地球は青かった」。あまりにも有名なその言葉にあこがれて自分も宇宙に行ってみたいという夢を持ったと語った。そして、15歳の時、皆既日食を見て、「自然にはまだまだ自分の知らないことが多い」と思い、自然の未知を知るために科学者になろうと思った。宇宙飛行士の夢ももちろん持ち続けていた。その後、科学者となり研究を続けている時に、日本で初めて宇宙飛行士を募集。1985年、向井千秋さん、土井隆雄さんと共に搭乗科学技術者(PS-Payload Specialist)として選ばれた。
1986年のチャレンジャー号事故で予定より遅れたものの、1992年9月、日本人で初めてスペースシャトルで宇宙に飛び立った。「家族の写真を持って宇宙に飛び立った時、夢が叶ったと思った」と語った。

宇宙開発における日本とカナダの役割

25年前、オタワを訪れ、カナダで選ばれた6人の宇宙飛行士と会った。「その時、カナダの宇宙飛行士は自分たちと同じ感覚だと思った」という。カナダに来る前にアメリカの宇宙飛行士にも会ったが、どこか違う感じがした。それはおそらく彼らが軍出身のスペースシャトルのパイロットだったからだろうと振り返った。「カナダの場合はサイエンスをバックグラウンドにした、科学実験をするために選ばれた宇宙飛行士だったので、親近感があったのだと思う」とずいぶん仲良くなったと語った。
現在の国際宇宙ステーションでは15カ国が協力している。日本は実験棟「きぼう」で参加していて、「空気がきれいで、騒音がなく、ごみが少ないので、他国の宇宙飛行士たちに人気があるんです」と笑顔で説明。アメリカのスペースシャトルが引退した今後は、この宇宙ステーションに物資を運ぶために、日本のHTV(こうのとり)が活躍するだろうという。そのHTVは自力でステーションにドッキングすることができないため、ステーションに取り付けられているカナダアームが必要という。「これからしばらくは宇宙ステーションの物資供給に日本とカナダが重要な役割を果たすことになるでしょうね」と語った。

宇宙飛行士として大事なこと

「宇宙飛行士として最も大事な資質は仲間となかよくやっていけるかどうかです」。毛利さんの言葉に力がこもる。15カ国が共同で行っている宇宙開発は、狭い空間で宇宙飛行士同士が協力しなければ成り立たない。「相手のことを考えて行動できるかどうか、協調性が持てるかどうか、それが大事になってきます」。日本には相手を思いやる文化というものがある。カナダには多文化主義といういろいろな人種の人々となかよくやっていく文化がある。「この2つの文化を経験できる君たちはとてもラッキーだと思う。それを大切にしてください」とメッセージを送った。
特別授業を終えた生徒たちはそれぞれに感想を語ってくれた。
佐藤俊さん(高校2年生)「日本人がここ(バンクーバー)に来て話してくれるのはうれしい。宇宙とか、科学が大切なことがよく分かりました」。
藤森一輝さん(高校2年生)「すごいと思いました。いろいろなことを学びました。宇宙に行くと首が太くなり、太ももは細くなるとか、初めて聞きました。日本からわざわざ来てくれてうれしいです」。
サマーヴィル・ケントさん(高校2年生)「宇宙っていいですよね。分からないことだらけだし。まだ研究が続いていると思うので、いい結果が出るといいと思いました」。
生徒たちは今回の特別授業でそれぞれに違った形で宇宙に興味を持ったようだった。バンクーバー日本語補習授業校小川進校長は、「みんな熱心に聞いていたし、多くの人が参加してくれて、子供たちが興味を持ってくれて非常にうれしかった」と語った。
最後に記念撮影をして、1時間余りの宇宙特別授業は終了した。
(取材 三島直美)

 

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