2017年5月11日 第19号

ワーキングホリデー制度開始から36年。当時は働きながら英語や文化を体験するという若者の相互交流から、現在ではキャリアへの次の一歩と、その役割が変わりつつある。 協定国も初期のオーストラリア、ニュージーランド、カナダの3カ国から、現在は18カ国に増加。英語圏だけではなく、アジア・ヨーロッパ各国へと広がっている。 「若者が海外に出たがらない」といわれて久しい日本で、ワーキングホリデー、通称ワーホリの現状はどうなのか。バンクーバーを訪れていた一般社団法人日本ワーキングホリデー協会理事長池口洲氏に4月23日、バンクーバー市内で話を聞いた。

 

 

「バンクーバーでの問題として家賃が高いというのは聞いている」と池口氏。「バンクーバーの皆さんには若者のサポートをよろしくお願いします」と笑った。2017年4月23日 

 

バンクーバーは変わらず人気

 バンクーバーではワーホリで訪れる若者が減少しているという感覚があるが、実際にはカナダへのワーホリ数は定員6500人と変わっていないという。1月から始まる申請が9月には定員に達するほど、相変わらず人気は高い。「9月に定員に達するということは、12月まで換算すれば1万人くらいはいくのではないかと思いますけど」と池口氏。いくら人気が高くても、定員数が増えなければカナダへのワーホリ数は増えないと説明した。

 日加のワーホリ制度が始まった当初は定員5千人。その後、1万人、7500人と変更され、現在は6500人。定員数はカナダ側が決定する。

 カナダ側の説明は、「カナダ人があんまり(日本に)来ていないから、そこは増やせないとは言われています」。公式な数字は発表されていないが、カナダからは千人以下というのが現状という。

 ただ現在は、2020年東京オリンピック・パラリンピック夏季大会の開催が決定し、双方向で増えている。日本に来るカナダ人も増えているし、オリンピックまでに英語を身につけたいという日本人希望者も「すごく増えています」。

 カナダの中では、相変わらずバンクーバーの人気が高い。「みんなバンクーバーに行きたがってますからね。なぜこんなに人気なのか、こちらが教えてほしいくらいです」。それでも今回初めて訪れたバンクーバーの感想は「住んでみたい」。安全だし、人も優しい。「来てみると、その気持ちはよく分かります。でも来る前から人気です」と笑った。ただトロントも増えていると言う。そういう意味では、定員が1万人だった頃からすると、バンクーバーでワーホリが減っているという感覚になるのは、あるかもしれないと語った。

 「カナダは1万人に戻してくれれば、すぐに行くと思います。人気はすごく高いので」。ぜひとも増やしてほしいと笑った。

 

協定国の中でもカナダ、 オーストラリアが人気

 今年に入り、ハンガリー、スペインが加わり、日本との協定国は18カ国になった。日本からの行先で最も多いのはオーストラリアで約1万人。1980年12月にワーホリ制度を導入した最初の国で、ビザ発行数は双方間で無制限となっている。

 次いで多いのが、カナダの6500人。1986年から始まり、以降ワーホリ希望者の間で高い人気を誇っている。3番目はニュージーランド。約2千人。オーストラリアに次いで1985年に協定を結んでいる。人気トップ3は、ビザ発行数が多いこと、そして「どこも英語圏というのが強みです」。最近では2001年に協定したイギリスも人気。千人の制限数は「1日でいっぱいになるほどです」。

 ヨーロッパでは他に1999年からのフランス。最近ではスペインが決まったが、東京五輪を見込んで、約5億人といわれるスペイン語圏からの観光客への対応にワーホリ制度が役に立つのではと見込んでいる。

 「若者たちの交流を増やしていきましょう」という現在の世界的な流れの中で、ワーホリはすごくいい制度。ただ協定に至るには、賃金格差が少ない、旅行業のけん引になるなど、一定の条件を満たすことも必要と説明した。

 協定国から日本へは、最も多いのが韓国、次いで台湾、オーストラリア。あとはフランス、ドイツ、カナダ、イギリスなどが続く。現在は地方で海外からのワーホリの若者を希望しているところも増えていて、その橋渡しもしていきたいと語った。

 双方向ともに毎年、約2万人がワーホリ制度を利用している。

 

「とにかく知ってもらうこと」

 すでに36年も続いているワーホリ制度。誰もが知っているかと思ったら、日本での現状は、そうでもないという。「ワーキングホリデー制度を知らない人がほとんどなんですよ」と笑う。今の40代、50代ではよく知られているが、若者の間では、そうでもないのだとか。「最近、大学に行って学生に会う機会があって、約20人を前に『ワーキングホリデー協会の人です』と紹介してもらったら、学生はチンプンカンプンでした」と笑った。

 今の若者の傾向として、言葉を知っているかどうかがカギという。メディア環境の変化の影響が大きく、知っていればSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で検索するが、知らなければ検索しない。そして、そのまま知らずに終わる。

 そんな危機感がある。だから「まずは知ってもらいたい」。そのために、ガイドブックを各大学に配布したり、原宿に「ワーキング・ホリデー・カフェ」を開店したり、テレビ番組で「ワーキングホリデー」という言葉を使ってもらうよう働きかけたりと取り組んでいる。

 興味がある人には、毎日無料セミナーを東京、大阪など6カ所で開催。ワーホリを実現するためのさまざまなサポートも行っている。

 

日本の経済状況と 若者の意識格差

 最近の若者は海外に出たがらないのか? という問いに池口氏は、統計でみると6割くらいの若者が、そんなに積極的に海外に出なくてもいいと思っているようだと語った。「(英語力が必要という)危機感をあまり持っていないのでは」と推測している。

 その背景の一つには、現在日本で就職率が高いことがあるという。五輪決定も、それを後押ししている。目の前の就職という現実で現在は英語の必要性を感じていなくても不思議ではない。

 しかし、企業はグローバル人材確保に力を入れていることも事実という。実際に協会には人材会社からワーホリで帰国した人に連絡したいと問い合わせがある。ある人材会社関係者は「英語ができる人材が欲しい時に、外国人で英語がネイティブで日本語がそこそこの若者と、英語が8割でも日本語ネイティブなら日本の若者を採用したい。ただそういう日本人の若者がいないから外国人を採用している」という話も聞いたと説明した。

 「現状では(就職には)英語は必須となりつつある」。英語能力の有無により、就職の選択肢は変わってくる。

 意識が高い若者は、ワーホリをキャリアアップの機会と捉えて利用する。例えば、帰国して英語が教えられるレベルになっていたり、海外で就職を目指す若者もいる。もしくは「大学生でTOEICを800とか900を持っている人は、ワーキングホリデービザで海外での企業経験をつけるために休学する人もいます」。

 池口氏は「行きたい若者はすごく意識レベルが高く、一方では全く無関心で言葉すら知らない。このギャップが大きい」と現状を分析している。だからこそ「ワーホリを知ってもらって有効活用してもらいたい」と語った。

 

ワーホリの今後

 「協会としては(現在の)2万人から、10万、20万人と行ってほしいです」と笑う。日本の人口が毎年減少し続け、若者も30年前の約2千万人から千万人まで減少している。それでもワーホリで海外に出る若者の数は約2万人と変わっていない。分母が減少していることを考えれば、割合的には増えている計算になる。将来はそれほど悲観的ではない。

 さらに、都内ではワーホリ中に取得した単位を認める大学が出てきたり、東京の主要大学の中には将来的に学生全員を短期・長期に留学させる目標を掲げている大学もある。「留学が一緒に伸び、海外に出ようという雰囲気が作られるのがベスト」と語る。

 東京五輪以降、英語需要はますます高まるのではと予測している。ワーホリは語学習得と海外就労経験を同時に行える便利なビザ制度。希望者が増える可能性は高い。これからも力を入れていきたいと語った。

 

ワーキングホリデー制度

 若者の相互交流を目的に2国間・地域で締結されている特別ビザ発行制度。対象は18歳から30歳まで。滞在期間は各協定国間により決められている。日加では12カ月間。

 一定期間の就学と就労が認められている。そのため、語学の習得と就業経験が得られるのが特長。

(取材 三島 直美)

 

 

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