男性も理解して欲しい女性の更年期の症状

杉原先生は産婦人科医であることから、「女性と加齢(老化)」というテーマで始めた。「成熟期における月経前後の変化と、更年期における肉体的、精神的変化に焦点をあて、女性だけでなく、男性にも知識を共有していただきたい」として、「その結果、男女共存社会の維持・発展、そしてさらなる強い絆を結ぶよい機会としていただきたい」とまず前置きがあった。

赤ちゃんが生まれて、成長して、成熟を迎えた後は老化、死へと向かうが、この周期は人間の一生に限ったものではない。例えば、お風呂に入ったときに出る垢などは、皮膚の死骸だ。誕生、発達、成熟、老化、死の周期は、間近なところで常に行われている。

月経前後1週間の精神的、肉体的変化、月経前症候群は、程度の違いはあれ、ほとんどの女性が経験するそうだ。症状は、頭痛、味覚の変化、腰が痛い・重い、乳房の痛み、むくみ、そして精神的にはイライラするなどだ。「女性はこれらの症状でツライ思いをしているので、イライラしていても、人格ではないことを理解してください」と男性参加者に求めた。

更年期障害はホルモン低下により起こる。筋力が低下することで、肩こりや腰痛、ほてり、のぼせ、頭痛など多くの症状が現れる、精神的にはウツや不安、イライラ、不眠、物忘れなどだ。「注意していただきたいのは、子宮頸癌や子宮体癌も増えることで、更年期を迎えた女性は検診に関して医師とご相談ください」と呼びかけた。

更年期を過ぎてからの変化は、骨粗しょう症や認知症、動脈硬化、梗塞など様々だ。これらについては、「逃げようとするから窮屈なんです」とある程度、体調の変化をゆったりと受け止めるようアドバイス。カウンセラーや家族、友人をはじめ、自分の状態を話せる相手を見つけること、自分にあったスポーツや、リラックスできるものを見つけることも良いそうだ。

このように加齢は仕方がないことではあるが、時間軸をゆっくりさせたいという人には、運動を勧めている。ラットに運動を行わせることで10%の寿命延長が見られたという実験結果が出ている。

 

長生き遺伝子は6週間で活性化

また、杉原先生は長生き遺伝子である抗老化遺伝子、サーチュイン遺伝子についても紹介した。この遺伝子は誰もが持っているのだが、通常は、“ぐーたらで寝ている”そうだ。個人差はあるものの、通常の食餌摂取量の15%減ぐらいを、一口ごとに30回噛んで、ユッタリ味わって楽しく食べると、6週間で活性化する。また、長生き遺伝子を活性化させたまま維持できる物質として、注目を集めているのがレスベラトールだ。

一方、老化物質はAGE(終末糖化産物)と呼ばれていて、30代から蓄積が見られる。体内のあちこちにあるコラーゲンに付いて老化を起こす。皮膚に沈着するとシワ、骨では骨粗しょう症、関節で腰痛など、目で白内障と、様々な症状の原因になっている。

そこでいかにして糖化を予防するかだが、野菜を食べると良いという。特に野菜を先に食べると糖の吸収も抑えてくれる。さらに、野菜を先に食べることで、空腹感が抑えられてダイエット効果があるほか、よく噛むことで、空腹感を減らし体重増加を防ぐことができる。老化を抑えるには「30回よく噛んで、よく味わって、腹八分」と締めくくった。

 

自立した生活で骨粗しょう症や認知症を防止
続いての田中朝絵先生は、骨粗しょう症と認知症を中心にセミナーを行った。まず、老化について、老人の虚弱性、老衰は、不動性(Immobility)、転びやすいこと(Instability)、知的機能の低下(Intellectual Impairment) 、失禁(Incontinence)の英語の頭文字を取り、4つのIにより起こると説明。骨粗しょう症や認知症の防止をすることが、ひとに頼らず、自立して生きていくのにつながると訴えた。

骨の密度が低下してスカスカになる、骨粗しょう症は、「最初は自覚症状はない」「骨や背中に痛みが生じて検査を受けてから見つかる」「ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もある」といった症状がある。

患者の8割は女性で、予防として、「カルシウムが豊富な食品をたくさん食べる」、「カルシウムの吸収を増やす」、「カルシウムが尿に出ないようにする」、「カルシウムを骨にいれる」、の全てが必要だという。骨粗しょう症になってから治すのは大変なので、日ごろから、できれば子どもの頃から予防をこころがけるのがよい。

カルシウム摂取量の目安は1日に合計1200mg、一回に食事に入っているカルシウムと錠剤をたして500mgまで。ほとんどの人はカルシウム錠剤を必要としているそうだ。カルシウム錠剤には食事と一緒に飲む必要なものもあるので、薬剤師に相談するとよい。

カルシウムの吸収を高めるにはビタミンDが必要で、食べ物、日光浴、サプリメントで取る。「日光浴がベストなので、お腹など面積が大きく白いところに日光をあててください。一日10分でOKです。ただし、カナダ(の日照量)では冬は無理です」とビタミンD800IUサプリメントの利用をアドバイスした。

カルシウムを骨に入れるためには、運動が一番だ。骨に刺激が加わるウォーキングやジョギング、筋力トレーニング、バドミントン、テニス、バレーボール、エアロビクス、太極拳がお勧めで、特に太極拳はあまり歩けない人向けだ。「買い物に歩いていく、車をなるべく遠くへ停めて、重い荷物をぶらさげて歩くなど、日ごろの心がけでも違いますよ」と述べた。

骨粗しょう症の検査は65歳以上なら誰でも受けることができる。65歳未満が受けたいというときは有料だが、45歳以上で更年期の人、家系に骨粗しょう症で骨折した患者がいる場合は無料になるので、まずファミリードクターに相談したい。

 

生活改善で老化を防止
続いてのトピック、認知症については、3種類あり、それぞれ治療の仕方が異なる。そのため、どのタイプか確定することがまず大切だ。そして、食習慣、運動、知的生活習慣、生活で予防できる。

予防する食べ物は、魚、野菜・果物、豆・ナッツ、赤ワイン、ビタミン12だ。特にビタミン12は不足するとそれだけで、認知症になるリスクがある。治療でも、ビタミン12の注射をするというから、とても重要だ。

運動は歩いたり、走ったりすることを勧める。ただし、“intense exercise”ということで、隣の人としゃべることができるのはOKだが、歌えるとNGだそうだ。知的生活習慣はトランプやチェスなどのゲーム、楽器の演奏、ダンス。神経衰弱なら一人でできる。新しいことを覚えることは効果的なので、歌うなら新しい歌だ。

田中先生は「老化は生活を改善して予防」という。食生活なら魚、野菜、果物、乳製品、海苔、貝、豆、ナッツで、肉を除くこと。Whole FoodsやChoicesにはAnti-aging Dietの商品が多数あるが、活性酵素、炎症を抑え、カロリーを減らすのがよい。そして、太陽を浴びながら運動、新しいことへチャレンジすることも重要だ。
(西川桂子)

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