バンクーバー美術館が6年の準備期間を経て、渾身の力を込めて送るピカソ展が6月11日から始まった(2016年10月2日まで)。

 

 

作品1    Pablo Picasso
Seated Nude, 1922
oil on canvas
Smith College Museum of Art, Northampton, Massachusetts, Gift of Carey Walker Foundation @ Picasso Estate/ SODRAC (2016)

 

ピカソの作品に影響を与えた女性たち

 『ゲルニカ』をはじめとした7万点以上の美術作品を世に送り出した20世紀の巨匠バブロ・ピカソ。「The Art and His Muses」と題された本展覧会は、ピカソと深く関わった女性のうち6人にフォーカス。六つのセクションに分かれた展示作品を追っていくと、付き合う女性が替わるごとに、彼の作風が見事に変わる様子を捉えることができる。

芸術の女神たちの姿と共に

 彼女たちはピカソの創作力をかきたてたミューズ(芸術の女神)。その女神たちの生涯も詳細に紹介されている。「女性たちについて最近明らかになった情報もあります」と本展覧会のキュレーター、キャサリーナ・ベイシーゲルさんは語る。

 ミューズの一人、オルガ・コクローバはピカソが舞台芸術の仕事を通じて出会ったバレリーナ。オルガとの結婚時代、ピカソは対象をさまざまな角度から見た姿を一つの平面に収めるキュビスムを突き詰めたが、第1次世界大戦が終わって穏やかな暮らしに入ると作品1のような非実験的、新古典の作風に。

 次に関係を深めたドラ・マーは写真家でありシュルレアリスト。芸術家同士、意見を交わし合う相手でもあった。この時代には『ゲルニカ』(1937年)が生まれ、そしてドラを描いたのが作品2である。

 フランソワーズ・ジローは唯一ピカソを振ったと言われている女性だ。作品3はフランソワーズとの間に生まれた二人の子供を描いたもの。

 1881年生まれのピカソの年齢と時代を意識しながら各展示を観ていくと、一人の人物のドラマを見終えた感慨が沸き上がる。メディアへの先行公開時に観賞した人々からは「どの女性も美しい」と感嘆の声が聞こえてきた。

ピカソの絵画、版画、彫像を世界から

 今回は世界各国から60を超す作品を集めた。これだけ多くのピカソ作品の収集には相応の尽力があった。しかしその6年間の道のりは「素晴らしいものでした」とキャサリーナさん。「天才で世界的に有名な芸術家、ピカソを紹介することは、他のキュレーター同様、私にとっても憧れ。そしてピカソに関わった女性たちにフォーカスするアイディアを、バンクーバー美術館の人々が賛同してくれたことは非常に幸運でした」。

 横浜美術館のピカソ作品唯一の所蔵品(作品4)も、今回展示されている。バンクーバー美術館のスタッフが横浜に出向き、交渉の末、3カ月間の貸し出しの承認を得たという。

 同美術館では、このピカソ展と同時にアメリカ人写真家ハリー・カラハン、バンクーバーを拠点とする芸術家ステファン・ワッデルの作品展も開催される。開館85周年を祝しての精力的な展示でバンクーバーの芸術熱を盛り上げてくれそうだ。   

(取材 平野香利)

●Vancouver Art Gallery 750 Hornby Street, Vancouver, BC V6Z 2H7

 

 

品2  Pablo Picasso
Bust of a Woman (Dora Maar), 1938
oil on canvas
Hishhorn Museum and Sculpture Garden, Gift of Joseph H, Hishhorn,1966 @ Picasso Estate/ SODRAC (2016)
Photo: Cathy Carver

 

 

作品3 ハハPablo Picasso
Claude et Paloma, 1950
oil and ripolin on panel
Courtesy of Wanda Group @ Picasso Estate/ SODRAC (2016)
Photo: Trevor Mills, Vancouver Art Gallery

 

 

横浜美術館から取り寄せたピカソ作品(作品4)とArt Centre Basel副所長でピカソ展キュレーターのキャサリーナ・ベイシーゲルさん

 

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