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新会長ということですが、就任の経緯を教えてください。
日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会は1986年の発足時からロバート新見さんが会長として頑張ってきてくれました。健康問題など諸事情もあり、昨年9月の年次総会で辞任することとなり、私が後任として決まりました。ボブ(新見氏)は協会発足からの会長なので私は2代目になります。任期は一応2年になっています。

 

コールズさんと日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会とのつながりは?
私は日系2世で、以前はマウント・セント・ジョセフ病院でソーシャルワーカーとして働いてきました。マウント・セント・ジョセフ病院がその後、プロビデンス・ヘルスケアの一部となってからは、多様化社会ディレクター(Director of Diversity Society)を務めていました。仕事上、多くのエスニックグループと合う機会がありました。そのひとつが日系のシニアの人たちです。

私はソーシャルワーカーとして働いてきたため、シニアのための“何か”が必要だという強い認識がありました。日系人のシニアが来られて、施設や家庭でのサポートが必要になります。でも日本語を話すサポートワーカーがいません。ケア施設に入居してもほかの入居者と言葉の問題などから交流できず孤立している人もいました。あるいは口にあうような食事がでない……。日系人の高齢者はつらい思いをしていることを、困っていることを知っていました。

日系社会でも高齢者介護が問題になり、1980年代はじめに協会の前身となるコミッティができました。ケア施設を作るという運動が始まった、とても早い段階で、メンバーからから参加しないかと声をかけてもらいました。同じ頃、私の両親も病気になり、ケア施設の必要性をより強く感じるようになったことも、活動に関わるきっかけになっています。

 

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日系ホームと新さくら荘は多数の人たちの、努力の賜物だと聞いています。
日系社会では文化センターを作る動きもありました。そのグループ、Heritage Center Societyと日本人街にあった、かつてのさくら荘と関連のあるJapanese Canadian Society、私たちのHealth Care Societyの3つのソサエティが協力した成果が、現在の日系センター、日系ホーム、新さくら荘です。
バンクーバー市やスティーブストンのあるリッチモンド市などで申請をしますが、通りません。皆さん、私たちの話を同情して聞いてくれますが、そこまででした。
1980年代から運動が始まって、新さくら荘がオープンしたのが1998年なので10年以上かかりました。それでも戦争中、不当な扱いを受けた日系人に対する謝罪を獲得した、リドレス運動の補償金の一部を使うことができましたし、ほかのエスニックコミュニティには、日系ホームのような施設はないので、私たちは幸運だったと思います。多数の人たちからの寄付金をはじめ、日系コミュニティ内からのサポートも大きかったです。

場所探しにも苦労しました。さくら荘は、元来はパウエルストリートにありましたが、文化センターに隣接したものにしようと考えると、当時のパウエルストリート一帯は、小さなお子さんのいる保護者が気軽に訪れるという雰囲気ではありませんでした。私たちが考えたシニア向けの施設は、シニアだけが集まって孤立するものではなく、異なった世代の人が集まる場所でしたから。
ナショナル日系博物館・日系ヘリテージセンターとケア施設が隣接したものにするため、さまざまな土地を調べました。その結果、予算にも合い、バンクーバーにも近いということで、このバーナビーに決まったものです。土地が安いからと、バンクーバー市からはるか遠い場所にすると、訪れる人はいなくて、ケア施設入居者だけが集まる場所になりかねません。入居している高齢者の皆さんに、コミュニティの一員だと感じていただけるような施設にしたかったのです。

 

現在の日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会の活動内容を教えてください。
日系ホームと新さくら荘がオープンして約10年が経過しました。日系ホームと新さくら荘を運営していて、私たちが現在、感じているのは、軽度から中程度の認知症を持つ高齢者の、ケアの必要性です。

日系ホームは認知症の高齢者介護については認可を受けていないために、たとえ軽度であっても、認知症ということになると、退居しなければいけません。しかし、介護者の目がないところで生活できないような重度の認知症でないシニア、認知症患者の施設に入らなくても大丈夫なシニアは少なくありません。軽度の認知症患者が重度の患者と一緒に入居することで、大きなストレスを受けることもあります。
そのため、“アシテッド・リビング・プラス”と呼ばれる、軽度の認知症患者を介護するサービスは、BC州政府も近年、必要性を認めています。日系ホームを管轄する機関、フレーザーヘルスでもパイロットプログラムが始まりました。将来的にはフレーザーヘルスの管轄地域で、“アシテッド・リビング・プラス”のサービスを提供する施設が生まれていくと考えられます。

現在は、日系ホームでは軽度から中程度の認知症のシニアはケアすることはできません。ですから、サービス提供を可能とする申請の受付が始まったらすぐに、日系ホームでも申請したいと考えています。その準備の一環として、フォーカスグループで話をしていきます。

 

フォーカスグループについて教えてください。
日系ホーム誕生の際には、フォーカスグループでケア施設を求める声を確認しましたが、今回もグレーターバンクーバーとフレーザーバレーの日系シニアのニーズが何か調べるために用います。高齢者の方たちが自立した生活を安全に快適にできるように必要なものも調べます。現在、準備中で、シニアご本人、ケアをしている高齢者の家族、サービスを提供する側、コミュニティリーダーの4つのグループで行います。各グループは、活発な話し合いを目指して8人程度と少人数構成で、最初のミーティングは3月10日を予定しています。このフォーカスグループに4~6週間かけて、その結果に基づき、秋に今度はもっと多くの人を対象としたニーズ調査を行います。今年中にフォーカスグループ、ニーズ調査と全て終了することを目指しています。

 

最後に日系社会へのメッセージを。
  日系ホームと新さくら荘がオープンして10年ほど経ちました。なかなか入居できないという印象もあるようですが、入居者に動きもあります。タイミングがうまくあうこともありますので、あきらめず問い合わせてください。それから、コミュニティ全体の大きなサポート、協力のおかげで、日系ホームと新さくら荘が生まれました。アクセスもよいですし、隣に日系ヘリテージセンターがあることなどで、慰問に訪れてくるグループにも恵まれています。シニアを分離してしまうのではなく、コミュニティの一部として、ほかの世代とも交流を続けることができるよう、今後も引き続きサポートをお願いします。

(取材 西川桂子)

 

日系ホーム
住所:6680 Southoaks Crescent, Burnaby, BC V5E 4N3
Tel::604-777-5000 FAX:604-777-5050

新さくら荘New Sakura-so
住所:6677 Southoaks Crescent, Burnaby BC V5E 4K3
Tel: 604-777-5000 Fax: 604-777-5050
www.nikkeiplace.org/nikkei-seniors/

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。