35人の出場者が、日ごろの日本語学習の成果を存分に発揮したスピーチのテーマは多岐にわたり、「日本を変えるー草食系男子」や「オタクが好きです」など、タイトルにも、出場者の日本の若者に対する興味を反映したものが多かった。また、東京で誤って電車の女性専用車両に乗り込んでしまった経験を盛り込んだ「私の痴漢体験」など、日本での経験を元にしたユーモアたっぷりのスピーチもあり、聴衆を大いに楽しませた。以下に、各部門の優勝作品の中から、6作品を紹介する。

 

 

「まなつのサンタ」

高校・初級部門で優勝したシェリー・キムさんは、8年生の夏、教会の活動の一環でメキシコへボランティア活動に行った経験について語った。気が進まないまま参加したキムさんだが、次第に子どもたちの笑顔に心を動かされ、人のためになることが、自分の自信や生きる喜びにもつながることを知った。キムさんの使命は子どもたちに愛と夢を与えるサンタになることだったが、子どもたちもまた、キムさんにとってのサンタだったのかもしれない。

 

「予想外の結果」

高校・中級部門では、四川大地震をテーマにしたシンディー・リューさんの「予想外の結果」が優勝した。2008年に四川でこの地震を経験したリューさんは、それまではお金や自分の子どもにしか興味のなかった人たちが、突然、自分の命を危険にさらしてまで、ボランティア活動を始めるのを目の当たりにした。「地震はたくさんの悲劇と苦痛をもたらしましたが、人々の良い面も引き出してくれたのです。それは私にとっても予想外の結果でした」とリューさんは締めくくった。

 

「温かいコミュニケーション」

大学・初級部門で優勝したアシュリー・ワンさんは、電話をかけるよりも携帯メールを送ることを好む友人を見て、現代社会において、人と人とのコミュニケーションがだんだん少なくなり、お互いの関係が疎遠になってきていることについて考え始めた。テクノロジーの進化によって、親指を動かすだけでコミュニケーションがとれるようになった今でも、相手の顔や反応を見ながら、向かい合わせで話す「温かいコミュニケーション」が大切なのではないかとワンさんは語った。

 

「多文化主義の落とし子」

大学・中級部門では、サム・ラムダニさんが優勝した。モロッコ人の父とフランス系カナダ人の母の間に生まれたラムダニさんは、自分は「多文化主義の落とし子」だと語った。いろいろな文化が共存する多文化主義において、大切なのは、お互いの文化を受け入れること。今、ラムダニさんが日本語を学んでいるのは、言葉を勉強することで、多文化主義を難しくする言語の壁を壊していきたいからだ。自分のバックグラウンドを活かして、多文化主義を世界に広げる手助けをすることが、ラムダニさんの目標だという。

 

「曖昧な習慣からの脱却」

大学・上級部門では、アナイス・パンさんの「曖昧な習慣からの脱却」が優勝した。パンさんは、以前、日本人の友人との待ち合わせに遅刻した際、彼女が怒りや苛立ちをストレートに表現することなく、曖昧な言葉で対応したことを挙げ、日本人が頻繁に利用する曖昧な表現や言葉は、社会の調和を維持するための重要な文化ではないかと語った。しかし、日常生活では見習うべき日本人の婉曲表現も、政治や国際的なレベルにおいては弊害を及ぼす。グローバル化が進む中、日本人の視点や意見をはっきりと世界に伝えることを目指すべきではないだろうか。

 

「私は誰ですか?」

大学・オープン部門では、ジェイ・キムさんが、在日韓国人との出会いを通して考えたスピーチ「私は誰ですか?」で優勝した。10年前に韓国からカナダに移民したキムさんには、自分のアイデンティティーについて悩んだ経験がある。日本への留学中に出会った在日韓国人もまた、日本国籍を持っていても「在日」と呼ばれる現実に直面し、アイデンティティー問題を抱えていた。「この話を通じて、在日韓国人の人生について理解したり、興味を持って下さる機会になれば嬉しいです」とキムさんは聴衆に語りかけた。

 

§

UBCアジア研究学科学科長のロス・キング教授によると、BC州では日本語学習に興味のある人が非常に多いという。世界各地で日本語よりも中国語の授業の需要が高まる中、UBCでは日本語の授業を取ることを希望する生徒の数が中国語を上回っているそうだ。そしてBC州日本語弁論大会は、日本語を学ぶ生徒にとって、学習の成果を発表する貴重な機会となっている。大学部門に出場したノーザン・ブリティッシュ・コロンビア大学(UNBC)のクリストファー・アンガーさんは、出場部門の中での3位の受賞を、会場で応援した萩原あみ先生と共に喜んだ。まだ日本を訪れたことはないが、先生の授業を熱心に受け、余暇には「BLEACH」などのアニメを楽しみながら、日本語学習に励んでいるそうだ。

外国語でスピーチをすることは、とても大きな挑戦だ。ランガラ・カレッジ外国語学部部長・日本語講師の林長司氏は、話を考え、言葉を選び、文章を構成し、スピーチを暗記し、練習するという過程がどれほど大変なことかを強調し、出場者を労った。昨年に引き続き、審査員を務めた在バンクーバー日本国総領事の伊藤秀樹氏も、「日本人が日本語でスピーチをしてもこんなに良いものにはならないのではないかと思うほど、内容も言葉の使い方もしっかりしていて、感心しました」と学生たちをたたえた。日本語学習に多くの時間を費やし、努力を重ねてきた出場者全員に、会場からは大きな拍手が送られた。

(取材 船山祐衣)

 

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