メタボリック症候群について、わかりやすく説明する小林氏

 

体のケアについては、メタボリック症候群の権威、茨城県医師会産業医会副会長の小林敏郎医師が、その実態から予防策までをわかりやすく解説。心のケアについては、トータルカウンセリングスクール(TCS)主宰・カウンセラーの田中信生氏が、どんな時でも自分が輝いて生きていける秘訣について語った。
会場には、経験と実績に裏付けられた二人の話を聞こうと、約120人が集まった。

 

メタボリック症候群について(小林敏郎医師)

小林氏の話に、みな真剣に聞き入る
メタボリック症候群とは何か
メタボリックの意味は「代謝」。食べ物から得た栄養素を、エネルギーとして体内に取り込む仕組みのことだが、吸収された量が消費量を上回ると、脂肪などの形で体内に貯蓄(貯金)される。特に、余った脂肪が肝臓に行く手前からあふれ出し、おなか周りの内臓につくと内臓脂肪となる。この脂肪の蓄積がきっかけとなって、さまざまな代謝の乱れ(高血糖、高血圧など)を合併した状態が「メタボリック症候群」と呼ばれる。
メタボリック症候群と聞くと、まずおなか周りを気にする人も多いだろう。しかし、いつも大きな欧米人に囲まれていると、多少サイズが大きくなってきても「自分はまだまだ」と安心しがちだが、氏によると、この比較は正しくないとのこと。「欧米人とは体の大きさが違うだけではなく、体の中のつくりも違っています。内臓もしかりで、血糖値を下げるインシュリンの分泌量は彼らの半分から三分の一しかありません。ですから、日本人は『ちょっと小太り』程度でも血管障害になりやすいので、油断は禁物です。」
また、日本でのメタボリック症候群の診断基準は、表1に示したとおり。この4項目のうち、腹囲と、それ以外の3項目のうち2項目以上に該当すると、メタボリック症候群と診断される。

休憩時間中に、著書やCDを買い求める参加者。

メタボリック症候群の怖さ
表1の項目は、腹囲以外は健診でなければわからず、また異常であっても自覚症状はない。しかし、基準値を超えた危険因子が重なれば重なるほど、動脈硬化をどんどん促進させる。その結果、心臓病や脳卒中といった重大疾患が発症する可能性が爆発的に高まるというところが、メタボリック症候群の怖いところだ。
ちなみに厚生労働省の調査によると、心臓病発症の危険度は、危険因子が0個の場合を1とした場合、危険因子が2個の場合に約6倍、3~4個では約36倍にまで跳ね上がるというデータもある。
また高血糖値は糖尿病につながり、最終的には失明、透析、下肢切断、認知症などを患う危険性が高まる。

 

予防は「一無二少三多」で
医大卒業後、老人医療の現場などで重大疾患の様々な最終病態を診てきた小林医師。その経験から、病気の早期発見と治療、ひいては未然に防ぐこと(氏いわく、上流に遡っていくこと)が、特に生活習慣に起因するメタボリック症候群を予防する上で重要と力説する。
そして、その予防手段を「一無(む)二少三多」というキーワードにまとめた。
「一無」とは、タバコをなくすこと。血管を収縮させて血圧を上げるタバコは、血管に負担をかけて動脈硬化を促進するからだ。ガンや生活習慣病など、あらゆる病気の元凶だ。
「二少」とは、食事と飲酒を「少し」減らすことで、高カロリー、高脂肪になりがちな食生活を改善しようと言うもの。またストレス食い(どか食い、早食い、夜食)も避けるようにする。
「三多」とは、多動(よく運動する)、多接(人とよく接する、コミュニケーションする。音楽や絵画に接する。)、多休(体も心もよく休養し英気を養う。)という意味。
運動は、「楽しくゆっくり、週一回はやりましょう」がキーワード。激しい運動は活性酸素を増やすため逆効果なので、多少汗ばむ程度(脈拍で120ぐらいまで)が良い。また、ストレスがメタボリック症候群の危険性を2~4倍助長するという報告もあるので、人とのコミュニケーションや、趣味に興じるなどの休養で、その解消を心がける。
サイレントキラーと呼ばれるメタボリック症候群も、こうした日々の気遣いで遠ざけることが出来る。地道な努力が必要だが、その怖さを現場で知っている氏の言葉には、「よし、やろう。」と思わせる説得力があった。

ジョークもふんだんに用い、会場をなごやかな雰囲気にしながら話を進める田中氏

 

あなたが輝くこれからの生き方(田中信生 TCS主宰)
どんな時でも大丈夫、そのためのマスターキーとは
続いて田中氏が、ストレスの多い現代社会で、どうやって輝いた人生を送っていくか、その解決策となるマスターキーについて語った。
氏は長年、不登校や引きこもり、気分障害や統合失調症といった心病む人々のカウンセリングを手がけてきた。その経験から、その原因のひとつが「自分が大切にされているという体感(愛)が欠如している」状態だと気づいた。そしてこのことは、病気に限らず、人生で経験する様々な困難から、「もう終わりだ」と行き詰ってしまう場面でも同じとのこと。
それが原因で追い込まれた苦境なら、足りない愛(大切にされているという体感)を補うことで、その状況を改善できるはず。「人は愛に触れると、大切にされると、心や人生はもう一度終わりが始まりとなり、人は生き生きとするのです」と氏は語る。

小林氏と、奥様の百子さん「受容する」ことが、エネルギーを送ること
「受容」とは、否定も肯定もせず、ありのままをそっくり受け入れるという意味。
ここで重要なのが、行為など外側から見えるものではなく、その人の内側にあるものを受容するということ。たとえば「うちの父さん、お酒さえ飲まなかったらいい人なのにねえ」と言うのは、お酒を飲む行為(外側のお父さん)しか見ていない状態。内側を受容するというのは、「お父さんがそこにいてくれるとうれしい」と、お父さんの内側を見つけて受け入れることである。
氏は経験から、この内側(beingと呼ぶ)に向けてエネルギーを送れば、人は必ず解放に向かうと言う。しかし、現代社会では成績や肩書き、財産など外側(doingと呼ぶ)で人を見、人生を生きるように訓練されているため、beingを見極め、そこに集中して上手に「受容する」ためには、訓練も必要となる。

 

他者受容と自己受容
ところで、人を受容する時に送るエネルギーの量は、相手の状態によって変わってくる。十分なエネルギーを送れるだけの力(受容する懐の深さ)が必要なわけだが、この力の大小を決めるのは、自分を受容する力に左右されるという。すなわち「自分を大切に出来る程度に、他人を大切にできる」ということだ。
他者を救うための他者受容が自己受容に比例する、いわば表裏一体の関係ならば、他人をケアするのも、自分をケアするのも同じ手法になるということだ。
結局、自分がいきいきと生きるためのマスターキーは、「受容」に行き着いた。

 

田中氏とスタッフ

 

マスターキーを自分のものに
では自己受容を高めるにはどうすればいいのだろうか。ここで氏から参加者に対して「自分が苦手と思う人の性格や特徴を書き出してみてください」という質問があった。
皆が書き終わったところで氏が、「それが自分ですよ」とひと言。そんなはずないと思うのは、それを自分の中で封印しているためで、まずこれを認めることから受容力アップが始まる。そして自分の姿が明らかになってきたら、好き嫌いは抜きにして、そういう自分に対して「そのままでいいんだよ」と受容することが、自己受容を深めることになる。自分をより受け入れるということは、自分をよく知って自立していけることに繋がる。自分のことが分かっていれば、まわりからどう言われようと、何が起ころうと、それに一喜一憂することもなくなる。つまりブレることなく生きていけることになる。
しかし頭で考えているだけでは自己受容の訓練にはならない。体で繰り返していくことが重要。そこで氏が薦めるのは、朝晩20回ずつ、自分に向かって「○○さん(自分の名前)、あなた素敵よ。」と語りかけること。これを続けていれば、より深い自己受容力を持つ自分に変わっていき、その変化で他者をもっと受容出来るようになっていく。自分で自分を励まし、それを習慣にする。これこそが人生を輝かせるマスターキーだと氏は語る。
ユーモアを随所にちりばめ、時が経つのも忘れて聞き入っていた講演だが、その冒頭に紹介されたマスターキーは、最後にこうしてわれわれの手に渡された。しかし手の中に置くだけで、これを活用しなければ(実践しなければ)何の解決にもならない。これを使うか使わないか、つまり輝いた自分の人生を手に入れるか否かの決断もまた、私たちの手の中にゆだねられた。

(取材 平野直樹)

 

小林敏郎(こばやしとしろう)プロフィール
1975年、日本医科大学卒業
1976年、日本医科大学付属病院老年病教室入局
1984年、茨城県土浦市に小林医院開設(内科、小児科、循環器科、リハビリテーション科)
茨城県医師会産業医会副会長
茨城産業保険推進センター所長

小林医院のウェブサイト:http://kobayashi-iin.jp/

 

田中信生(たなかのぶお)プロフィール
1943年、東京に生まれ、山形県米沢市で育つ。
米沢興譲教会牧師。
東京で学んだ後、アメリカに留学。帰国後は在米中に学んだカウンセリングを生かし、多くの心病む人々と起居を共にする。
その実践の中から体系化されたカウンセリング理論と手法を更に発展、普及させるべく、「トータルカウンセリングスクール」を創設。全国各地で活動を展開している。
そのユーモアにあふれた語り口には大勢のファンがいる。

トータルカウンセリングスクールのウェブサイト:http://www.e-tcs.com/

 

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