昨年はRRSPについて述べましたが、今回は個人の確定申告手続きにて、税金の支払いを最小限に、または払い戻しを最大限にするためのコツやポイントについて、「xxにお金を使ったけれど、これって収入から引くことはできる?あるいは、控除としての申告の対象になる?」といった質問にお答えします。なお、今回はBC州滞在の方を対象としています。
これって収入から引くことができる???
〜収入から差し引くことができるもの〜
1.Line 207:Registered Retirement Pension Plan (積立退職年金)
詳しくは2015年2月19日発行のバンクーバー新報・第8号をご覧ください。
2.Line 210 : Deduction for elected split-pension amount (年金の分配)
本人が年金を受給していましたら、その年金額の最高50%を少ない年収の配偶者に分配することができ、本人の税金の支払いを少なくすることができます。RRSPの退職年金、日本の国民年金・企業年金が該当します。カナダ国民年金(CPP)、Old age security payment (カナダ老齢年金)は残念ながら、分配することができません。
この年金を分配するにはT1032 Joint Election to Split Pension Incomeの申告書の手続きが必要となります。また、日本の年金などで外国税を納税していましたら、その外国税も一緒の比率にて分配となります。
3.Line 212 : Annual Union, Due, Professional membership(ユニオン、専門メンバーシップ費)
仕事関係のユニオンや、メンバーシップ、年会費等に支払った金額。たとえば、公認会計士は公認会計士協会にメンバーシップ費を支払っていますので、その費用は収入から引くことができます。Professional membershipとありますので、残念ながらバンクーバーにある日系のビジネス団体のメンバーシップは認められません。
4.Line 214 : Child Care Expense (育児費用)
お仕事をするために、お子さんをデイケアー、アフタースクールケアー、ケアギバーに預けた費用は収入から引くことができます。ご夫婦の場合、収入が少ない方に申告できます。
子供1人分に対して、2009〜2015年に生まれたお子さんのChild Care Expenseは実際に支払った額、または、最高額$8,000まで、1999〜2008年に生まれたお子さんのChild Care Expenseは実際に支払った額、又は、最高額$5,000まで申告できます。
申告するには、領収書が必ず必要です。その領収書には、日付、お子さんの両親の名前、お子さんの名前、金額、支払い先の住所、名前等、ケアギバーさんのSIN等が必要となります。
5.Line 219 : Moving Expense(引越代)
引越代も収入から引けます。ただし、条件として、転勤により、40キロ以上移動した引越代です。他の州へまたいだ引越も認められます。転勤でない、新しい家等の購入の引越代は認められません。
必ず、引越代の領収書、引越する前と引越先の住所を証明する書類、転勤の証明として、雇用契約書、そして転勤先の収入などが必要となります。
6.Line 221 : Carrying Charges and Interest Expense(運用費、利息)
収入を得る、投資資産を運用するために、ブローカー、投資会社、銀行に対して支払いましたブローカー費、運用マネジメント費は認められます。よって、その収入としてT3スリップや、T5スリップ等が発行される投資が対象となります。(以下、ここではT3/T5スリップが発行される投資を「投資」として説明いたします)
RRSPを預けて、その運用費の支払いは認められません。 また、ローンを組んで、そのローンで投資をした場合、そのローンの利息の支払いは収入から引くことができます。たとえば、銀行から$10,000のローンをし、その額をそのまま投資をし、その間、銀行へ利息を支払いますと、銀行へ支払った利息は、確定申告で引くことができます。
セーフティー・デポジット・ボックスの支払い費用は認められません。(以前は申告できましたが…)
運営費、利息を支払った証明として、ブローカー、投資会社、銀行等からの発行された書類を必ず保管しておいて下さい。
7.Line 229 : Other Employment Expense(仕事上で必要な費用)
通常、雇用されている場合には、仕事で必要のため、購入した費用は認められません。たとえば、ラップトップコンピューターを購入し、それを仕事で使用しても、その購入額は引くことはできません。
ただし、仕事の収入を得るため、どうしても会社がその分を負担せず、自腹を切らなければならないとき、カナダ歳入庁(Canada Revenue Agency, 以下CRA)が記載している条件がすべて合えば、その自己負担分を収入から引くことができます。これはとても細かく条件が記載されており複雑であり、雇用主もCRAの書類が必要です。ここですべて説明をしますと、記事を1ページ以上使用してしまいますので、割愛させていただきます。この費用に関しては、会計士さんにアドバイスを受けることをお勧めします。
〜収入から差し引くことができないもの〜
自分の車での通勤費、ガソリン代、パーキング代、スーツ代、靴、家賃や、住宅ローンの支払い及び利息は収入から引くことはできません。
これって控除の対象になる??
控除とは、収入に対して、すべて課税されるのではなくて、ある一定の金額が課税対象から外されることを指します。その課税されない金額が控除額となります。基礎控除額は連邦税は$11,327、BC州税は$9,938です。簡単に言いますと、その額の収入までは、課税されません。控除額が増えれば、その分までの収入が課税されることはありません。
引くことができる、控除ができる額を最大限にすることにより、税金の支払いを最小限に、または払い戻しを最大限にすることができます。
〜控除の対象〜
1.Line 303 : Spouse or Common-law Credit(配偶者控除)
年度末に合法的に結婚(コモンローも含む)していれば、控除として申告できます。年度末に離婚していた場合は控除を受けることができません。また、配偶者に収入があれば、配偶者控除額は減ります。
2.Line 301 : Age Amount(老齢控除)
申告する本人が1950年代、または、それ以前に生まれた方ですと、$7,033の控除を受けることができます。
3.Line 367 : Dependant Credit(扶養者控除)
扶養家族がいれば、扶養控除を申告できます。お子さんの人数と年齢によって、控除を受ける金額が変わります。CRAの案内書では扶養者の条件はとても細かく記載されていますので、会計士さんにアドバイスを受けることを、お勧めいたします。
4.Line 364 : Public Transit Amount(公共交通費)
Compass Pass, U-Pass, Bus Passなどの定期券の額は、控除として申告できます。1ゾーンの1カ月のパスで、税金約$5のセーブです。
5.Line 370 : Children's Art Amount(子供のアート代)
16歳以下のお子さんに支払った芸術に関するプログラム費。お子さん一人に対して最高額$500まで申告できます。たとえば、コミュニティセンターでのピアノクラスなど。
6.Line 369 : Home buyer's amount(家購入控除)
2015年に本人が住むための家(一軒家、アパート、コンド)を購入したら、$5,000の控除を受ける事ができます。この$5,000の控除額は配偶者にも分配することができます。
投資物件は該当しません。また、初めて家を購入するのが条件です。
7.Line 316 : Disability Amount (障害者控除)
ご本人、配偶者、扶養家族が税法上の障害者に当てはまる場合、一定の金額の所得控除を受ける事ができます。この控除を受けるには、まず掛かり付けのお医者さんから、CRAのT2201 Disability Tax Credit Certificateに記入をしてもらい、CRAに提出、後日、CRAから障害者として認められた手紙を受け取りましたら、この障害者控除を最高額$7,899まで申告することができます。たとえば、子供の学習障害により、お父さん、お母さんどちらかが、この障害者控除を受ける事ができます。
8.Line 323 or Line 324 : Tuition(教育費)
本人、配偶者、扶養家族の専門学校、大学等の授業料。学校から発行されましたT2202 Tuition, Education, and Textbook Amounts Certificateが必要です。
9.Line 330 : Medical expenses(医療費の控除)
確定申告をする本人、配偶者、子供に支払いました医療費が、収入の3%または$2,208のどちらか少ない額を超えている場合に、申告することができます。日本の医療費も申告することができます。
ペットの医療費、Medical Service Planは控除対象外です。
かかった医療費を証明する書類、領収書を必ず保管しておいて下さい。
10.Line 349 : Donation(寄付金)
CRAに登録された非営利団体、連邦の政治団体へ寄付をした金額。それら団体から発行された寄付金の領収書が必要です。
11.Line 405 : Foreign Tax Credit(外国税控除)
外国で得た収入に対して、その国の税金を支払ったら、外国税控除として申告することができます。これは、二重支払いを避けるための租税条約に基づきます。
12.Line 5838 : Children's fitness amount(子供のフィットネス代)
16歳以下のお子さんに支払ったスポーツプログラム費。お子さん一人に対して最高額$1,000まで申告できます。たとえば、コミュニティセンターでのスポーツクラスなど。
(NEW)2015年はこのLine 5838 Children's fitness amountの50%をLine 5842 children's fitness equipment amountに申告することができます。
13.Line 5843 : Education coaching amount(教育コーチング控除)NEW
新しくできた控除です。先生または先生のアシスタントが最低10時間以上のコーチング活動をした場合、$500の申告ができます。(Eligible coaching activities)
14. Line 6048 - Form BC479 : Home Renovation Tax Credit(自宅リノベーション控除)
65才以上の方で、住んでいる自宅を住みやすくするためのリノベーションはSchedule BC(S12)の手続きにより最高$10,000まで控除できます。 たとえば歩くための補助として、家の階段にハンドレールや上り下りのリフトを設置するためのリノベーション費用などが該当します。この条件はとても細かく記載されているので、専門の方に詳しいアドバイスを受けることをおすすめします。
(記事提供 藤井ライアンさん)
この記事に記載されていることは、一般的な説明です。しかし、これらの費用・控除にはとても細かい条件がありますので、専門の会計士さんに確認することをお勧めします。また、CRAはEfileにより、書類の提出を後日要求しております。その書類の提出を怠りますと、申告が認められませんので、申告する書類は必ず保管しておいて下さい。 この記事を読んで、ご自身で判断・申告をされて、CRAに認められなくても、弊社は責任を負いかねます。
藤井ライアン(竜治)さん
藤井公認会計事務所 R. Fujii, CPA
#2000-1066 West Hastings St. Vancouver, BC V6E 3X2
Tel: 604-812-7139
経歴
2002年 カナダ公認会計士(Certified General Accountant)登録
2008年 英国名誉勅許公認会計士(Association of Fellow Chartered Certified Accountants)登録
2010年 個人会計事務所・国際会計事務所を経て、藤井公認会計事務所を独立。現在に至る
公認会計士(CPA. CGA) 藤井ライアンさん