攻撃に、守備に、ハードワークをして、とにかくゴールに貢献したい

すでにアリゾナでキャンプインし、今季の開幕に向けて始動したMLS(メジャー・リーグ・サッカー)バンクーバー・ホワイトキャップスFC。昨季、後半の得点力不足に泣き、プレーオフ準決勝敗退という残念な結果にリベンジするため、今季ストライカーとしてJリーグ柏レイソルから工藤壮人(まさと)選手が加入した。 これまで日本人選手としては、守備的MF純・マーカス・デビッドソン選手、MF小林大悟選手、2部リーグ時代にはDF平野孝選手が在籍したものの、FW選手は初めて。 Jリーグではレイソル一筋に7年間在籍し、クラブでの最多得点記録を更新。リーグ戦だけでなく、天皇杯、ナビスコカップでの優勝、国際試合ではACL(アジアチャンピオンズリーグ)でもチームを準決勝に導き、日本代表でも得点した実力を持つ。ホワイトキャップスでも得点力を期待されるポジションで、日本人選手がどういう活躍ができるのか注目されている。 キャンプイン前の1月22日、UBCでのメディアデーに姿を現した工藤選手に、今季のホワイトキャップスでのプレーにかける意気込みを聞いた。

 

 

MLSの日本人パイオニア木村光佑選手(NASLラヨOKC在籍:オクラホマ市)とは連絡済み。「木村さんには連絡させていただいて、困った時には連絡させていただきますというのは伝えました」と語った

  

キャップス 入団のきっかけ

 「MLSはもともと興味があると伝えてました」と工藤選手。代理人事務所を通して、MLSも視野に海外移籍を模索していたという。そこでホワイトキャップスがアプローチしてきたと語った。国内チームからのオファーもあった中、ホワイトキャップスへの入団を決めたのは、「メジャーリーグサッカーのレベルが高いのは知っていたし、そこで純粋にプレーしたいと思ったから」。そう記者団の質問に応えた。「もっと上のレベルでプレーしたいと思ってましたし、僕自身もっともっと成長したいと思ってました」。サッカー選手として成長できる何かを求め、ホワイトキャップスへの入団を決断した。

 カール・ロビンソン監督によれば、6カ月前からすでに工藤選手に興味を持っていたという。「でも、去年は連れてくることができなかった。サラリーキャップ(年俸総額の上限)の問題もあったし」と昨年中の獲得を実現できなかったことを明かした。そして「10月か11月に、契約が可能になると知っていたので動いた」と獲得の経緯を語った。

「とにかくゴールで 貢献したい」

 ロビンソン監督は、「何か(昨季までとは)違ったものをもたらしてくれると期待している。昨日、英語で少し話をしたが、『ゴールを決めますよ』と言っていた。その言葉がすごく気に入った」と笑った。

 本人は「攻撃に、守備に、ハードワークをして、とにかくゴールに貢献したい」と意気込みを語る。「とにかくゴールを決めるというところを見てもらいたいと思ってますし、ペナルティエリアの中で勝負する選手だと思うので、そこを見てもらいたいです」。

 監督は「ワントップだろうと、ツートップだろうと、スリートップだろうと、システムにはこだわらない」という。昨季は4ー2ー3ー1のフォーメーションで機能していたが、今季は「壮人はこれまでと違った要素をもたらしてくれるはず。去年、我々は得点力不足に泣いたが、彼はそこを補ってくれると思う」。昨年のゴール欠乏症解消への期待は大きい。

 それでも本人に気負いはない。「来る前からゴールをたくさん決めてほしいと、そこがホワイトキャップスに欠けていると聞いていたので、そこを達成するために来ました」と自信を持って応える。

 「ワントップでもプレーできるということは(監督も)知っているし、ツートップでも、また、右だったり、左だったり、ワイドのところでも、いろんなところで。とりあえずキャンプでいろいろ見てみたいとは言われました」。本人も期待されていることは十分承知しているのだ。3月6日ホームでのデビュー戦が楽しみだ。

ホワイトキャップスの印象

 バンクーバー入りしたのは1月11日。昨年12月29日に契約が公式発表され、この日まで約3週間。すでに選手との顔合わせもすませ、ロビンソン監督とも話をした。すっかり打ち解けているようだ。

 「若い選手が非常に多くて、みんなのりもいいし。僕自身、そんなに多く英語は話せないけど、全然それを気にすることがないくらい、みんな温かく迎えてくれています。すごいやりやすそうなチームだなって思ってます」。

 ここ2年ほどホワイトキャップスには、中南米からの選手が多く在籍している。スペイン語も飛び交う。しかし、選手の国籍はそれほど気にならないという。「もともと柏レイソルにいた時も、ブラジル人選手が毎年必ず3人くらいいたんで。スペイン語とポルトガル語は似てたりするし、あいさつ程度ならできますけど」。それでもまずは英語から。「余裕が出てきたらスペイン語を習いたい」と笑った。

 MLSの印象については、「とにかくタフでインディビジュアルコンタクトが多くて。いろんな個性の選手が集まってて、非常に魅力的なリーグだと思います」。自分のサッカーをさらにブラッシュアップするために飛び込んだリーグだ。悪い印象はない。ラフなプレーが多いことも知っているが、「そういうところも僕自身、日本では経験できないプレースタイルですし、さまざまな国籍の選手がいる中で、いろんなものを知って、僕自身いい経験にしていけたらと思います」と前向きだ。「変にここで新しいプレーを見せるっていうよりは、今まで通りゴールを取るために何をすればいいのかっていうことを逆算して、しっかりとプレーすれば問題なくやれる自信はあります」。

今季はバンクーバーで日本人対決

 現在MLSには元ホワイトキャップスの小林選手がニューイングランド・レボリューションに在籍している。バンクーバー入りする前には「連絡を取っていろいろお話を聞きたかったんですけど、実際には連絡を取れてなくて」と残念そうだったが、キャンプ地アリゾナで2月6日に、さっそくプレシーズン試合が予定されている。「その時にでも、メジャーリーグサッカーのこともそうですし、ホワイトキャップスのことでも、少し話せたらなって思ってます」。

 そして、6月18日にBCプレースで対決する。MLS久しぶりの日本人対決。この日は要チェックだ。

「街中でも気軽に声をかけてください」

 バンクーバーの印象は「来る前から、きれいな町で人も温かくて、いい印象しかなかったです。実際来てみて、天気が良くなかったりとかここ数日雨が続いてますけど、いい印象のままです。ただ今家探してますけど、アパートが高いくらいですかね」と笑った。

 そのバンクーバーでMLSに工藤壮人ありと存在感を示して、「日本でメジャーリーグサッカーが注目されていろんな選手が来るきっかけになれば」と思っている。現在25歳。選手として脂の乗ったこの時期に日本ではマイナーなMLSを選んだのには、MLSに対する期待と自身の活躍に対する自信が透けて見える。

 まずはバンクーバーで知名度を上げる。「こっちにいる日本人、アジアの人たちに、僕のプレーを見て試合を見に行きたいとか、アジアのコミュニティが盛り上がってくれれば僕自身も嬉しいですし、実際にそうしたいと思ってここに来ています。ぜひスタジアムに足を運んでもらって、街中でも気軽に声をかけてもらって、そしたら写真でもサインでもなんでもしますし、逆に見つけてくださいという感じです(笑)。サポーターやファンあっての選手だと思っているので、どんどん仲良くなってスタジアムに足を運んでいただければ、僕も嬉しいです」と、ファンへのメッセージを送った。      

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

 

開幕戦:3月6日BCプレース、モントリオール・インパクト戦

 

キャップス公認工藤壮人選手ツイッター:@masatokudo9

バンクーバー・ホワイトキャップスFC:www.whitecapsfc.com/

 

 

 

公式練習前ということでこの日は普段着でメディアに対応した

  

 

メディア用に記念撮影。左はDM(ディフェンシブミッドフィルダー)カー選手。2人は結構気が合うようだ

  

 

大勢のメディアに囲まれる工藤選手。通訳(倉品瑞樹さん:右)を通して、約10分も質問が飛んだ

  

 

最初のあいさつは英語で。「 I'm Masato Kudo, nice to meet you. Call me Masato.」

  

 

「FWリベロ・オクタビオ選手へのいいプレッシャーになることを期待している」とロビンソン監督からの期待は大

  

 

カメラマンを前に変なポーズのカー選手

  

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。