柳本卓治議員、田中茂議員に話を聞く

第24回APPF(アジア太平洋議員フォーラム)がバンクーバー市内のホテルで1月17日から20日まで開催された。日本からは5人の国会議員、柳本卓治参議院議員(自民党・団長)、山口壯衆議院議員(自民党・副団長)、篠原孝衆議院議員(民主党)、角田秀穂衆議院議員(公明党)、田中茂参議院議員(無所属)が出席した。 日本議員団から提出された決議案は4本。朝鮮半島の非核化及び平和の達成に関する決議案、中東和平プロセスに関する決議案、経済及び貿易に関する決議案、防災に関する決議案。

今会議には20カ国から約120人の国会議員が出席し、日本からの4本を含む27本の決議案が採択された。 会議が終了した20日、同ホテルで、柳本議員、田中議員に話を聞いた。

 

 

田中議員(左)と柳本議員。1月20日バンクーバー市内ホテルで

  

女性会議を提唱

 APPFの総会では、アジア・太平洋圏のあらゆる問題について議論される。政治、経済、社会、文化、地域協力、安全保障などで、その中で今年から初めての試みとして、女性の地位向上を目的とする女性会議が提唱された。これはかなり画期的な試みで、来年以降も継続するよう努力していく方向で進めていくことが必要と柳本議員は説明した。今回、日本代表団にも女性はなく、APPF加盟国の各国でも女性が参加していない国も多くあり、そういうことも含めて考えていく必要があるとも語った。

 今回カナダで第1回女性会議が提唱されたことについて、昨年10月の総選挙で大勝した自由党ジャスティン・トルドー政権が閣僚の半数を女性議員にしたことに触れ、そうしたことを実行できる政権が議長国であったということも影響があるのではと田中議員は語った。

 日本でも女性が輝ける社会を推進しようとしているが、女性の地位向上、女性が活躍できる社会とはとの問いに対しては、なるべくシステムとして女性が活躍できるように変化させていかなくてはいけないと感じていると田中議員。女性の発言力も大きくなり、能力のある女性が出世できる機会も増えつつあるが、システムとして女性の活躍をうまくカバーできる体制にまだなっていない。育児問題など、今、日本で議員の育児休暇取得について意見が出ているが、いろいろな議論が出ることはいいことだと思う。ただシステムを確立しないと今のまま停滞する可能性もあるので、その辺を考えていく必要があると語った。

 

カナダについて

 柳本議員は、カナダというのは戦後一貫して国際貢献に務めている国として敬意を持っていると語り、国際社会においてPKO(国連平和維持活動)のみならず、社会福祉、防災などの面においても積極的に派遣している移民国家であり、人権や平和など奉仕活動に対する協力を惜しまないという点において、見習うところがあると感じていると語った。

 田中議員は、昨年自由党ジャスティン・トルドー首相が誕生したことに、父ピエール・トルドー元首相が、中曽根康弘元首相時代のカナダの首相だったと語り、多文化主義を導入した父ピエール・トルドー元首相の意思を引き継ぐように、ジャスティン・トルドー首相も多様性をさらに推進するような、半数を女性閣僚とすることなどが印象的だと語った。

 

日加関係

 今回、日本議員団はカナダ下院議長含め、数人のカナダ議員と会談し、交流を深めた。日加は良好な関係が維持されていると認識している。文化面では、日本からの若者の留学やワーキングホリデー、カナダからはJETプログラムなどで日本に滞在する若いカナダ人も多く、よい関係が築かれている。

 経済関係では、特に最近は、カナダからの天然ガスの日本への輸出の早期実現を期待しているとしている。2013年に安倍晋三首相がカナダを訪問した時にも、当時の保守党政権スティーブン・ハーパー首相へ要請があったが、今回政権が交代してもトルドー首相に対して安倍首相から要請があったと語った。

 天然ガスは特にブリティッシュ・コロンビア州でクリスティ・クラーク政権が力を入れているが、なかなか前に進んでいない。先住民族との問題など、一つ一つ解決していかなくてはならず、カナダ側の対応を期待しているとした。

 

カナダでは2回目となる総会

 APPFがカナダで開催されるのは今回が2回目。前回は1997年、やはりバンクーバーで開催された。その時はジャン・クレティエン首相の自由党政権。田中議員は当時、中曽根元首相の秘書として同行していたと語った。

 今回の総会の印象を、過去の会議と比べても非常にスムーズだったと総括。女性会議の発足など、次回に向けていい形で終了した。

 北朝鮮での核実験が水爆の可能性があるということで、カナダの議長も懸念を示すほど、北朝鮮問題が注目された。

 会議の中では、現在カナダで注目されているシリア難民受け入れ問題などは、アジア太平洋地域に関する会議のため、特に直接的な課題にはなっていなかったが、中東和平や移動労働者問題など間接的な議論が行われた。

 APPF加盟国の多くが参加しているTPP(環太平洋連携協定)については、APPFの決議としてTPPに加盟していない国もTPPを支持するような内容になるのには異論があったと説明した。

 

APPF(アジア太平洋議員フォーラム)

 アジア太平洋地域の議員による政治、経済、社会、文化などの分野における対話のための会議。毎年1回、1月に総会が開催されている。現在の参加国は28カ国。日本、韓国、中国を含むアジア、東南アジア諸国、オーストラリアなどのオセアニア、カナダ、アメリカの北米、さらに中米、南米の国々が参加している。

 設立は、中曽根康弘元首相を中心に日本の有志議員のイニシアティブに基づき、1993年1月にアジア太平洋地域15カ国が参加した東京で開催された第1回総会で正式に設立された。

 日本は第1回から3回までは非公式に参加。第4回以降は正式に毎年代表団を派遣している。今回は開会式で柳本議員が中曽根康弘APPF名誉会長からのメッセージを代読した。

 次回第25回はフィジーで開催される。

(取材 三島直美)

 

議員プロフィール

柳本卓治参議院議員:自由民主党。70歳。 衆議院議員当選6回(大阪第3選挙区/比例近畿ブロック)、2013年参議院議員当選1回(大阪選挙区)。参議院憲法審査会長

田中茂参議院議員:無所属。58歳。 2014年にみんなの党比例区で繰り上げ当選となり参議院議員に就任。みんなの党解党後は無所属に。日韓協力委員会理事。アジア太平洋議員フォーラム会長補佐

 

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