日系文化センター・博物館に武道場新設 Nikkei National Museum &amp; Cultural Centre Japanese Budo-jo

バーナビーの日系文化センター・博物館に、武道場が新設され、2016年１月９日にオープンする。同センターを利用していた日本の武道団体にとっての永年の夢がかなった。

武道場のイメージ図（ケン・タケウチさん作成）

　新しくできた武道場は日系センター１階にある倉庫を改築。１３０平方メートルの広さで、56枚の畳を敷くことができる。

　当面は２０１４年春に発足した「カナダ日本武道振興会」に所属する合気道、柔道、空手の各団体が使用する。ヨガやシニア体操、子どもたちを対象にしたイベントなどにも使えるよう、室内の温度や明るさも調整できるように造られている。

　建設構想は２０１５年１月に同センター理事の五明（ごみょう）明子さんが、同事務局長のロジャー・レミレーさんに提案し、理事会で承認された。同年６月にはバーナビー市から建築許可が下り、同年９月末から工事が始まった。

　建設の目的について五明さんは「現在バンクーバーで私たちが差別もなく暮らせるのは、過去の日系人の方々による努力の賜物と感謝し、その気持ちを何らかの形で還元したかったからです。また柔道家であり相撲を愛した故人の前夫・良明（注）も、この武道場の建設を喜んでくれると思います」と、私費の10万カナダドルを寄付した。

　自身も健康維持のため合気道を習い「今まで週２回の稽古はホールに畳を敷いていましたが、これからはその手間もなくなります」と喜び、「武道場が次世代の若い人たちに引き継がれることで、地域社会や同センターの運営にプラスになってほしい」と抱負を語る。

　設計は建築家のケン・タケウチさんに依頼し、業者への発注、工事の手順や予算などは、プロジェクトマネジャーのサム・ヤマモトさんにお願いした。予算面でケンさんの「理想」とサムさんの「現実」がぶつかることもあったという。

　当初、建設業者が出した見積もりは、約15万カナダドルで予算オーバー。交渉の末に10万カナダドルで請け負ってもらった。「まずは完成させ、運営をスタートさせることを優先しました」と五明さん。

（注）２００３年に海洋事故で亡くなった良明さんは生前、パウエル祭の相撲大会に常時出場する（15年間に９回優勝）など、日本の伝統文化を通して地域社会に深く関わっていた。

各武道団体代表者のコメント

☆合気道バンクーバー祥門（しょうもん）会代表の清田勝さん

「日系文化の中心となる同センターに武道場ができたことは嬉しいことです。日本の武道が地域社会に認知され、バンクーバー地区の日本の武道団体とも一緒に活動できればと思います。武道場で使う畳は、祥門会から無償貸与させてもらいました。さらに良い施設にしていきたいと思いますので、寄付金集めも始めています」

☆糸東（しとう）流空手道正晃（せいこう）会BC理事長のマート堀田さん

「今までホールの利用では複数の団体が同時に申し込むこともあり、レッスンのキャンセルが出たこともありましたが、これからは予定変更もなくなると思うのでありがたいです。私のクラスは今、中国系の人たちが75パーセントを占めていますが、本格的な日本の武道場ができたことは、いろいろな国の文化を持つ人たちに日本文化を広める良い機会だと思います」

☆石川ファミリー柔道クラブ代表の泉孝雄さん

「安全面の上でも新しい施設を使いたいと思います。これを機に、生徒や指導ができる若手の柔道経験者が増えることを期待しています」

（取材　古川透）

カナダ日本武道振興会

日本武道の５団体により、２０１４年の春に発足。

所属団体と代表者（敬称略）

☆糸東流空手道正晃会カナダ・佐藤明

☆少林寺拳法バンクーバー支部・橋本政明

☆石川ファミリー柔道クラブ・泉孝雄

☆カナダ練武道場（剣道）・荒真紀子

☆合気道バンクーバー祥門会・清田勝

設立目的