「第二の人生を安心して楽しく暮らす方法を考えましょう!」

11月18日、バーナビー市の日系文化センター・博物館で、桜楓会主催の特別教養講座が開かれた。「第二の人生を安心して楽しく暮らす方法を考えましょう!」と題して、40人を超す参加者を前に、岡本裕明さんが第二の人生を充実したものにするヒントを、実例などを交えつつ説明した。ここで概要を紹介する。

 

 

講師を務めた岡本裕明さん。硬くなりがちな経済の話も軽妙な語りで、参加者の興味をひきつけた

  

延びる平均寿命

 長寿大国日本。戦後まもなくは男女とも50歳代だった平均寿命は年々延び続け、今では80歳を優に超すまでになっている。その一番の要因として医学の進歩があげられる。不治の病といわれた病気の治療法が開発されていく昨今、必然的に長くなるシニアライフを、どう有意義に過ごすかは重要な課題になってきている。そんな中、日本では、高齢者向けのインフラが十分ではない上、孤独死の数も増え続けていることから、寂しいシニアが多くなっているという現状が浮き彫りにされる。また、経済的な面での不安も見過ごせない。特に、これからは年金だけに頼るシニアライフには無理があり、それを見越した経済基盤を作っておくことはとても大切。そして、生き生きした生活を送るためには健康であることも重要なポイントだ。

第二の人生を楽しむには

 では、どうしたら張りのある充実した第二の人生を送れるか。ここで、岡本さんが知り合ったバイタリティーあふれるカナダ人の実例をあげた。70代のリアルターの女性は、トップリアルターとしてのプライドを持ち続けることが仕事を続けることの原動力となっている。ここから見えてくるのは、なんとなく仕事を続けるのではなく、目標や野心を持って取り組むことが大事ということ。2人目は、世界中を旅行しながら、訪れた町の様子や人々の生活様式などを、新聞に寄稿しているという70代の男性。彼については、「人生経験をさらに深め、それをアウトプットしていき、日々の生活にスパイスをかける生き方」と表現している。最後に紹介したのは、大手建設会社の副社長の男性。上の方のポジションについているにもかかわらず、毎日のように現場へ出向いて社員や業者の人たちと直接やり取りすることを続けている。これは、「自分で決めたライフスタイルを忠実に実行」している人生といえる。

 今回のテーマである「第二の人生」を定義すると、「失敗の繰り返しの中で、経験を積み上げる第一の人生に対して、第二の人生は経験を活かして充実させる人生」といえるだろう。そうはいっても何があるかわからないのが人生。病気、事故、経済的な問題、家庭問題、住宅環境の問題、外国に住むことへの不安感など、予期せぬできごとは誰にでも襲ってくる。そうした時、ひとつのことに固執せず、ある程度人生に選択オプションを持っておくことで、気持の上でも楽になるし、何かあった時にも対応しやすいのではないかという。

「第三の場所」

 アメリカの社会学者、レイ・オルデンバーグは著書『ザ・グレート・グッド・プレース』で、「サードプレース(第三の場所)」の重要性を論じている。「ファーストプレース(第一の場所)」は、生活を営むその人の自宅で、「セカンドプレース(第二の場所)」は、職場などその人が最も長く時間を過ごす場所を指す。そして、「第三の場所」は、コミュニティライフに根づいた創造的な交流が生まれる場所としている。ママ友同士のランチ会とか、職場の人との飲み会というのはこれにはあてはまらない。

 第三の場所の条件としては、無料か低料金、食事や飲み物が提供される、アクセスしやすい、習慣的に集まってくる、フレンドリーで心地よい、古い友人も新しい友人も見つかるようなところ、などが挙げられる。コーヒーショップ、勉強会、読書会、コミュニティグループの集まりなど、第三の場所になり得る場所はたくさんある。こうした場所は行かなくてはいけないという義務感がなく、また集まるメンバーは社会的・経済的な地位に重きをおかないので、どんな人でも参加できる。常連もいるが新しいメンバーも入りやすい環境であり、そこでは会話がメインだが、人を不機嫌にさせるような会話ではなく陽気な親しみやすいものである。そのため、その場所に集う人たちは温かい感情を共有することができ、第二の家のような感覚を覚える。このような場所を持つことは、精神的なバランスを取るためにも重要だといえる。  

備えあれば憂いなし

 長く人生を歩んでくればだんだんとモノがたまってくる。それを整理して「アセットライト(資産を軽くする)」の状態にしていくことが勧められる。たまったモノを断捨離する、銀行口座はいくつも持たずに1つにまとめる、クレジットカードを何枚も持たない、不動産をたくさん持たないなど、整理して身辺を軽くする。これは、もし自分に何かあった時に後に残された人が片づけをする苦労を軽減することにもなる。同時に、自分だけの備忘録を作っておくことも大切だ。それを他の人にも取り出しやすいところに保存しておきたい。最近では、ネット上にデータが保存されるクラウドサービスを利用するという方法も注目されている。

 また、住む場所についてもフレキシブルに考えるようにしたほうが良い。いま住んでいるところにこだわりすぎず、自分の健康状態や生活スタイルに合わせて変えていくことも必要だ。たとえば、戸建てはメンテナンスが意外と大変であったり、セキュリティ面でも心配が多いので、コンドミニアムに移ることも検討する。そして、今は若い人が中心に利用しているシェアハウス。今後、シニア向けのシェアハウスも増えていくのではないかと思われるので、入居を考えてみても良いだろう。また、持ち家にこだわらず賃貸物件に入居することも、そのスタイルがその人に合っているならば全く問題はない。このように、フレキシブルに住む場所を捉えることも、充実した人生への助けとなるだろう。

日本の新しい制度にも注目

 最後は「やはり気になる相続」について。日本の国税庁の相続税に対するスタンスは年々厳しくなっている。今年初めから、相続税の基礎控除額が大きく減額されたため、課税対象となる人の割合が増えるとされている。カナダには相続税はないが、たとえば、所有していた不動産を売却して利益が出た場合、キャピタルゲイン課税としてカナダ政府へ支払う必要がある。もし日本に被相続人がいるならば、さらにその売却代金に対しての相続税がかかる。基礎控除額や外国ですでに課税されている分などを差し引いても、税金として納める金額が発生する場合もあるということになる。意外と軽視できない問題だ。

 カナダに住んでいる日本人としては、日本の税制上の変更にも注意を払いたい。昨年施行された国外財産調書制度という新しい制度のもと、国外にある5千万円以上の資産については税務署に報告する義務が生じる。ただし、日本に住民票がなく、1年以上の居所もない非居住者には提出義務はない。また、来年1月から使用されるようになるマイナンバー制度についても、気になっている人が多いだろう。これは、個人の税金や社会保障の状況を管理・把握するために、日本に住民票がある在住者に配布される番号のことだ。今のところ、行政にかかわる部分での運用となるが、将来的に、銀行などの口座への入出金の際にマイナンバーを提示する必要もでてくるかもしれない。今は、日本に住民票がある人だけに配布されるが、数年後には、日本に戸籍がある人にも配布されるようになってくる可能性もあり、カナダに居住するからあまり関係がないということにはならなくなるかもしれない。

 将来、カナダに住み続けるのか、日本に居住を移すのか、それによって、お金の問題、生活スタイルの変化など、何をクリアしていかなくてはならないかが、ある程度見えてくるだろう。

 第二の人生を安心して楽しく暮らすために、経済面、健康面、住宅環境など、必要な備えをしつつ、周りの人たちとも良い関係を築くことを心がけることが大切だろう。

(取材 大島多紀子)

 

岡本裕明(おかもと ひろあき)さんプロフィール

1984年青山学院大学経済学部卒業後、青木建設入社。開発事業本部、秘書室を経て1992年にバンクーバー、コールハーバーのベイショア住宅開発事業に従事。2004年にバンクーバーの事業を買収し、プロジェクトを完遂。その後もカナダ、日本で不動産を通じたレンタル業を展開、今日に至る。アクセスが1日2万件ある「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーでもある。

ブログのアドレス http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/

 

開会のあいさつをする、久保克己桜楓会会長

 

熱心に話を聞く参加者。講演後の質疑応答も活発に行われた

 

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