国際結婚は
離婚率が高い(?)
始めに『国際結婚の会』のめぐみフォーブスキングさんが「国際結婚は離婚率が高く、聞くところによると70パーセントと伺っています」と前置きした上で、幸せな結婚生活への道について考えてみたいと、この日の課題を投げかけた。
グループ・ディスカッションでは、それぞれの状況、悩みについて話し合った(以下抜粋)
子どもが出来るまでは恋愛の延長線でうまくいっていたのに、子どもが出来てから夫婦の関係が変わり、問題が出てきた。
カナダ人の彼と日本でつき合っていたときは、彼も日本の慣習に従っていてうまくいっていたのに、結婚してカナダに来てからは、彼が友達とのつきあいで食事時間に帰って来なかったり、自分の意見を強調するなど問題が出てきた。
国際結婚といっても、文化や言葉の問題だけではなく、結局人間同士のつながりなのではないか。
つき合っているときは勉強などお互い別のことに集中していたが、結婚してからの方がよく話し合ったり、相手を理解するようになった。だから年々彼のことを好きになっていると思う。
日本語で言いたいことをそのまま訳すと、きつい言い方になったりするので、それをちょっと変えてみる。そうすると柔らかく伝わったりするので、そういう練習をしてもいいのでは?
つらいときは本当に日本に帰ろうと思った。でもとことん話し合い自分の気持ちを言うと、相手を受け入れることが出来た。自分で正しいと思っていても、本当は違うかもしれない。一回我慢して「あなたを怒らせ、この状況を作ってしまったことにごめんなさい」と謝ると、「自分も悪かった」と彼も変わった。相手が聞きたい言葉を言えるようになり、彼を通して自分自身が変われたのではないかと思う。
まわりの友達が指摘してくれたお陰で、自分は自分が思っているような自分ではないことに気づいた。だからいい友達や、本、いい先生につくことは人生を変えれるのではないか。こうした会を利用して、気持ちを発散するのもいいと思う。
野田先生へ質問
参加者の中には3年から5年の交際期間で結婚した人が多いようですが。 「日本でも同じだと思いますが、熟成していく時間が必要なのではと思います。国際結婚でうまくいかなかった例には、知り合って間もなく結婚したケースがあります。最初の情熱みたいなもので結婚してしまうと、周りの状況や家族のことを知らなかったことから、トラブルが起こることが多いようです。違う文化の人が出会うと、最初は好奇心、新しいものに触れて自分がリフレッシュ、インスパイアーされると思いがちですが、そういう気持ちだけ持っていると、うまくいかなくなります。好奇心が穏やかになって、相手が人間的にどういう人か判るようになるまで時間がかかるのではという気がします。だから短期間で結婚したとしても、時間をかけてやっていくという気持ちがあればいいわけです」
日本とカナダではケンカの仕方にも違いがありますか? 「こちらのけんかの流儀というのは、まっすぐモノを言っていいのではないか、ということです。例えば“イヤだ”とはっきり言っていいと思います。日本だと前置きがあったりして、自分の感情をまず出して、その感情を男性が受け止めるといった、あまり会話的なものよりエモーションのぶつかり合いみたいなものだと思うんです。説得というより、どっちが言い負かすかみたいなものが、日本の夫婦げんかなのではないかと思います」
「こちらでは “どうしてあなたは私が不機嫌なことに気づかないの?”と期待して黙ってしまったり、途中で言うのをやめたりすると、相手は全部言ってほしいという不満を持つようです。日本人は全般的に、自分の中の怒りとか恨み辛みを引っ張り出すことが下手で、内側にいってしまうんです。こちらではそれを出していくことがあるので、そこが違うということに気づいていればいいんです」
国際結婚の中で、日本的な感情をどう処理したらいいのでしょうか? 「帰国子女でアメリカの大学を出た女性でさえ、遠慮、我慢、あきらめといった日本的な感情を持ち続けるケースがあります。カナダ人のパートナーが奥さんを理解するとき、そういうことを知っていると、夫婦の関係に役に立つのではないでしょうか」
「私はいい結婚というのは、言葉や文化の違い、ちょっとしたこと(Subtle)がお互いにわかりあえるということに尽きるのではと思います。それはお互いの思いやりとか気配りであると思います。カナダ流であろうが日本流であろうが、それがお互いに交換されている限り、関係は悪くならないと思います」
最後に司会のめぐみフォーブスキングさんが「野田先生が日本人には“甘え”と“見栄”と“我慢”があるとおっしゃいましたが、それを破るときに違うものが見えてくるのかもしれませんね。だからこの会がそういう何かを破るきっかけになればと思います」と述べた。
(取材 ルイーズ阿久沢)
野田文隆博士:
大正大学人間学部教授(臨床精神医学)。1985年UBC留学中より日本人、日系人のメンタルヘルスケアに携わり、現在も3ヶ月に1回ずつバンクーバー総合病院内で「多文化外来」を行い、文化間精神医学の視点から、在外邦人のメンタルヘルスに関する臨床研究を続けている。UBC精神科Adjunct Professorを兼任。
国際結婚の会:
1997年に移住者の会とJCCA人権委員会の主催で始まり、2002 年までワークショップを行った。近年、国際カップルが急増したことから、前役員らとボンコースキー靖子さんが中心となり、昨年夏から活動を再開。年に3回ほどバンクーバーを訪れる精神科医、野田文隆先生を中心にワークショップを開催している。
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