私たちの健康は私たちの手で
健康はほとんどの人にとって、人生において最も大切なもののひとつだろう。健康のカギとなるのが医療制度、医療資源だが、カナダで暮らす私たち日本人や日系人、特に母国語が日本語の人たちにとって、十分に活用するのは簡単ではない。そんな悩みに応えて、ブリティッシュ・コロンビア州に暮らす日本語を話す人々、日系人、その他一般の人々の健康の維持・増進に役立つ活動を行っているのが、日加ヘルスケア協会だ。同協会の理事長である田中朝絵さん、総務理事の宮地昭彦さん、理事のアンディ九十九さんの3人に話を聞いた。
左から宮地昭彦総務理事、田中朝絵理事長、九十九アンディ理事
まず、日加ヘルスケア協会について教えてください。協会ウェブサイトには、2004年に生まれたとあります。
アンディ九十九さん(以下、A)
日加ヘルスケア協会は2004年12月にBC州登録公益法人として設立して、2005年1月から講演会など活動を開始しました。2015年は活動を始めて10周年になります。
10周年を記念して、何か考えていらっしゃいますか?
宮地昭彦さん(以下、M)
来年中に健康ハンドブック(健康手帳)を作る予定です。
A「緊急の場合、どうするか」「BC州の医療保険をどう理解するか」「ファミリードクター(家庭医)の探し方」といった、必要なことについて説明するもので、BC州で暮らす人にはとても有効な手帳になると思います。日加ヘルスケア協会では会員を積極的に増やしていますので、会員になっていただいた方には、この健康手帳を差し上げます。協会メンバー全員に配布する予定です。
M 日本の医療保険と異なる点が多いBC州の医療保険について、理解していない人は多いです。ですから理解を深めて、自分と家族の健康を確保するためにも、州の医療制度、保険制度を理解していることは大変重要です。
田中朝絵さん(以下、T)
日本から来た人はもちろん、当地に長い間、住んでいても知らない方も多いんですよね。
現在の会員数を教えてください。
M 法人会員が3社、一般会員が50人あまりです。
A 10周年を機に一気に増やしたいと思っていて、日系社会の皆さんはぜひ入っていただきたいです。
健康ハンドブック
以前、よく開催されていた健康セミナー、健康講座のようなものは最近はあまりないのでしょうか。
T 最近はグループビジットに力を入れています。2004年の協会設立当初は、インターネットもあまり普及しておらず、情報が欲しいという皆さんがたくさんいらっしゃいました。でも、現在では欲しい情報は英語でも日本語でも、インターネットで簡単に手に入るようになりました。ただ情報を提供するのではなく、参加いただいた方が個人的に得るものがあるようなものにしています。
たとえば糖尿病やコレステロールのグループビジットでは、出席者に事前に血液検査に行っていただきます。当日は参加者から許可をもらって、そのデータを見ながら、「このデータはどういう意味か」「この数値が高いときは、こういう生活をしたほうがいい」などとお話します。一般的な話だと、自分にどう当てはまるのか分からない方もいらっしゃいますが、生活指導に力を入れていて、英語でいう「Personalize(パーソナライズ)」すなわち個人に合った指導をさせていただいています。
M 通常の講座のように講師が話をして、限られた時間で質問を受け付けるようだと、出席者が多い場合など、質問できない人もいらっしゃいますし、どちらかというと一方通行になります。
しかし、グループビジットの場合は、少人数ですので本当に聞きたいことを聞くことができます。さらに聞いたことがほかの人の参考にもなります。
T 定員はだいたい10人から15人です。
グループビジットで話したことは、ほかの場所で話してはいけない、プライバシーを侵害しないという書類に、出席者の皆さんには前もって署名してもらいます。署名していただいている内容を破ると、カナダでは訴えることができますので、皆さん、安心して、話すことができます。特によかったのは認知症です。
どのように物忘れを始め、心配しているということを、出席者の皆さんが正直に話してくれました。それを聞いて、みんな心配しているんだと安心したりと、多くのものを得ることができました。
認知症ではテストもして30点満点のスコアもお渡しして、この点数だと要注意…というようにお伝えしました。認知症のときは、「今日の出席者で、この点数の方がいらっしゃいました」というようなお話はしていません。ご本人にお伝えしただけです。
A 点数によっては、ファミリードクターに連絡してみては?と提案もしていただきました。
T 私のほうで、アルツハイマークリニックへのリファレンスレターを書いてもらうように、ファミリードクターにお願いしたケースもあります。
M 認知症は一度するだけの予定でしたが、申し込まれた方が50人ほどいらっしゃって、定員の関係で三回させていただきました。
T 一年後に再検査したほうが良い方もいらっしゃいましたので、2015年にも春から夏にかけてまた開催すると思います。
本人ではなく、家族が認知症かもしれないという方は、グループビジットには参加できないのでしょうか。
M グループビジットは認知症に限らず、MSPを持っている方が対象になります。
グループビジットはメンバーのみですか?
M 一般も受け付けます。ただし、メンバー優先で、メンバーに案内して、一週間後から一般の皆さんにも広報します。
協会のほかの活動についても教えてください。
T 設立してから今まで、50件ほどセミナー、ワークショップを開催してきました。出席者は延べ1500人ほどになります。それから健康に関するTwitterや「みんなで楽しく歩いて健康になろう会(歩こう会)」もあります。
A 歩こう会は、セミナーは敷居が高いという方もいらっしゃいますし、教える側と教えられる側の垣根を取り払いたいという思いで始めました。歩くのは身体に良いというだけではなく、ストレス解消にもなります。2013年11月から始めて、サンランでも歩きました。2015年2月にはスノーシューも計画しています。
A クリスマスならクリスマスの飾りが良い場所というように、毎回その時期に合ったものにして、季節感を大切にしています。
T 金曜の10時半から11時ごろに集合して、平坦な道を一時間歩いた後、ランチを食べて解散します。私は犬を連れて行くこともありますし、お孫さんと一緒に参加された方もいます。
M 当初は雨の場合はモールの中を歩こうと、雨を心配してショッピングモールのそばで計画していたんですよ。幸い、これまでは天気に恵まれています。メンバーのゲストなら参加できますが、一度様子を見てみたいという方は協会までご連絡ください。
歩こう会の皆様
座談会も行っていると読みました。
M 毎月第四木曜の午後七時から九時までと、月一回のペースで行っています。瞑想が良いことが医学的にも証明されてきているので、瞑想から始めます。
座談会のテーマはさまざまです。たとえば日本からいらっしゃっている杉原義信先生の場合、西洋医であると同時に漢方医でもあるので、肩こりに効く指圧のツボはどこにあるか教えていただきました。東洋医学的なモノの見方、胃が痛い場合も胃の問題ではなく、他から来ている可能性もある、といった話もありました。座談会のメンバーにホメオパシーやローフードをしている方がいらっしゃる場合、そういった話も出ました。専門家として認定を受けていなくても、自分の経験を通して話せる方はお話いただいています。 座談会も歩こう会同様、会員向け活動ですが、ゲストとして参加可能です。会員のお知り合いがいらっしゃらなかったら、相談してください。セミナーやグループビジットの案内はバンクーバー新報をはじめとする日系メディアで紹介させていただきますし、ウェブサイトでもチェックいただけます。
私たちにとって頼もしいかぎりの日加ヘルスケア協会ですね。今日はありがとうございました。
最後にバンクーバー新報読者にメッセージをお願いします。
A ミッションステートメントにある、「私たちの健康は私たちの手で」に尽きますね。お互いに健康を守っていきましょう。
日加ヘルスケア協会 (Nikka Health Care Society)
1300 Robson St., Vancouver
Tel 604-833-0266
(取材 西川桂子)