日本人ダンサーたち

 

11月21日、ブリティッシュ・コロンビア州北オカナガン、バーノンのパフォーミング・アート・センターでバレエ・ビクトリア(以下BV)の『ドラキュラ』の公演が催された。会場は満員御礼。主役級のMina役に抜擢された吉村菜奈子さんは、小柄な身体で淡雪のように軽やかに舞って観客を魅了し続け、大喝采の中で幕が下ろされた。 BVは団員12名の創立10年目になるバレエ団。団長であり、舞台演出、振付け、ダンサーもこなすポール・デストルーパー氏は、今までも同団に日本人ダンサーを起用しており、こう語っている。 「日本人ダンサーは忍耐強く努力をし続けるから技術が高い踊りができる。ベルギー人の血を引く私の生き方と共感できるので、これからも同団での日本人ダンサーの活躍に期待している」 現在、BVには研究生も含めて3名の日本人ダンサーが在籍している。カナダのバンクーバー島にある同団に入団したきっかけや、バレエに対する情熱を本誌に語ってもらった。

 

 

左から小林莉沙さん、吉村菜奈子さん、水津明音さん

  

プロフィール 吉村 菜奈子 (よしむらななこ)

 名古屋出身。4歳で地元の後藤千花ステップ・ワークスバレエでバレエを始める。2011年ユース・アメリカ・グランプリ日本予選、2011年神戸全国洋舞コンクールシニア部門共にファイナリスト。2011年オールジャパン・バレエ・ユニオンのシニア部門奨励賞受賞。2012年NY のジョフリー・バレエ・スクールのサマーインテンシブで奨学金を得て、1年間同校にバレエ留学。2014年秋よりバレエ・ビクトリアのダンサーとして活躍。

 

ダンサーになるまでの経緯は?

 3歳からずっとバレエを習い続け、十代の頃からバレエ・コンクールに出場して踊りにかけてきました。バレエ教室の先生の勧めで初めて海外へ出たのは大学3年生の夏でした。ニューヨークのジョフリー・バレエ・スクール(以下JBS)のサマーインテンシブに7週間参加した時に同校のスクールカンパニーのディレクターに声をかけられ、1年間の奨学金を頂き、プロになることを意識し始めました。一度海外へ出てみるとバレエに対する環境の良さ、舞台の多さ、観客の反応、作品の面白さなどに魅了されました。また、慣れない海外の生活は困難ばかりでしたが、そんな体験は日々私を強くしてくれました。留学したJBSでは団員と同じように朝から夕方までリハーサルをして多くの公演に出演したり、1カ月ほどバレエのツアーや海外公演に出かけたり、本当に良い経験ばかりでした。

 

どのようにプロのダンサーになりましたか?

 日本からカナダやヨーロッパのバレエ団に自分のダンスのビデオを送りオーディションを受けました。その時に声をかけて下さったのがBVのディレクターのポールでした。入団を決める前に1週間クラスを受けてみて、彼の人柄、丁寧な指導、斬新な振付けに興味を持ちましたし、バレエ団の雰囲気やビクトリアの街自体にも惹かれました。そこで、BVでプロとしてのスタートを切ることに決めました。プロとして初めてのステージに立った時の不安と緊張は忘れられません。しかし、その分舞台の楽しさや達成感は大きかったです。長年バレエ生活をサポートしてくれた名古屋の両親にプロとしてカナダで踊る姿を見て欲しいです。

 

これからの抱負は?

 踊りが上達するには毎日毎日地道に練習をこなしていくしかありません。これからも、もっともっと舞台やプロとしての経験を積んでいきたいです。そして、いつかは自分が学んできたことを活かして作品作りをしたり、何か形にしていきたいです。周りの方々にいつも感謝すること、向上心を忘れないこと、そして、舞台を見に来て下さるお客様が幸せな気持ちになるような踊りができるダンサーになれるように日々頑張りますので、よろしくお願いいたします。

 

 

吉村菜奈子さん

 

「Dracula」でMina役に扮して白い衣装で踊る吉村菜奈子さん© BA Burns

 

 

プロフィール 小林 莉沙(こばやしりさ)

 東京都出身。3歳より中島・卯埜賀寿江バレエ団付属研究所にてバレエを始め、セントルイス・バレエスクール(アメリカ)、アーツ・アンブレラ(バンクーバー)など数回北米へバレエ短期留学。2009年よりビクトリア・アカデミー・オブ・バレエへ長期留学。在学中よりバレエ・ビクトリアのツアーや公演に出演。2011年同校卒業後に同団に入団。さまざまな作品で踊り、ソリスト役も務めている。

 

ダンサーになるまでの経緯は?

 3歳から始めたバレエを段々本格的に習うようになりました。中3から高2の間に北米への短期留学を何度か経験し、プロのダンサーになって海外で踊りたいと夢見ました。そんな矢先に腰の骨を疲労骨折。プロの道を諦めてバレエから離れ、大学に進学しました。この時期に自分のバレエへの情熱を再確認し、1年半のブランクを経てバレエに復帰しました。海外には環境の整ったバレエ学校があるので、カナダにある幾つものバレエ学校のオーディションを受けるために2週間カナダ中を回りました。その時ビクトリア・アカデミー・オブ・バレエ(以下VAOB)に関わっていた、現在所属するBVの団長であるポールとの出会いが、私の人生における転機となりました。VAOBへの入学を決め、日本の大学を辞めてカナダにやって来ました。

 

どのようにプロのダンサーになりましたか?

 VAOBに入学した当時からBVのレッスンとリハーサルに毎日参加し、BVの数多くの公演に出演する機会も与えられ、卒業後もこのバレエ団で踊りたいと希望していました。そして、卒業間近に私の入団が決定!BVに入団して今年で4年目です。ここはあまり大きなバレエ団ではありませんが、プロ意識の高いダンサーが多く、団員が切磋琢磨し合い常に成長できる環境なのが気に入っています。団長のポールはバレエへの強いこだわりを持った人で、彼の創る作品に携わることで多くのことを学んでいます。ここでプロのダンサーになり、さまざまな作品に携わり、たくさんの素晴らしい振付家たちと仕事をするチャンスに恵まれました。BVで踊れることに喜びを感じています。

 

これからの抱負は?

 お客様の心をつかめるような踊りを目指して、これからも踊りと向き合い、努力していきたいです。また、より多くの人にバレエの素晴らしさを知ってもらうために、バレエ普及活動をしていきたいです。バレエに興味を持つ全ての人に、今まで積んできたさまざまな経験を活かしてバレエの楽しさを伝える機会をもっと増やしていきたいです。

 

 

小林莉沙さん

 

ディレクター・ポール振付の「Les Flamandes」を踊る小林莉沙さん© JF Mincent

 

 

プロフィール 水津 明音(すいづあかね)

 大阪府出身。9歳でカクシン・バレエ・スクールでバレエを始める。中学3年で初めて主役に抜擢され、ダンサーへの道に進もうと決意。高校2年の冬にカナダのオーディション・ツアーで渡加し、翌年の夏にロイヤル・ウィニペグ・バレエ・スクールの夏季強化コースに参加。その後、ビクトリア・アカデミー・オブ・バレエに1年半留学。2014年の9月からBVの研究生として入団。

 

研究生になるまでの経緯は?

 最初にカナダを訪れたのは、バレエ・スクールのオーディション・ツアーに参加した時でした。一年半のVAOB時代から何度かBVの舞台に出演していて、その後、BVの研究生になりました。BVのディレクターのポールの振付けが好きなのでここで踊れることが嬉しいです。朝9時から夕方4時までレッスンとリハーサルをする生活を週5日間こなしています。

 

これからの抱負は?

 夢を一つに絞らずにやりたいことをしていきたいです。いろいろな国やバレエ団に行ってみたいですし、ここでも、もっといろいろな舞台に出てみたいです。そして、これからもっとたくさんのことに挑戦していきたいです。

 

 

水津明音さん

 

 ビクトリアで活躍する三人のダンサーのこれからが楽しみである。

 

 

BVのバレエ公演

『The Gift』

日時 : 2014年12月27日(日) 28日(月) 29日(火)14:00~

会場 :ビクトリア市ロイヤル・シアター

楽曲『くるみ割り人形』をビクトリア交響楽団の生演奏で。

『Amadeus: Dances with Wolfgangs』

日時 : 2015年3月10日(日) 11日(月)19:30~

会場 :ビクトリア市ロイヤル・シアター

バンクーバーでも公演予定あり。

ブロードウェイの舞台化、映画化もされているモーツァルトの物語。

『Annie’s Rodeo And Other Works』

日時 : 2015年5月29日(金)19:30~, 30日(土)14:00~

会場 :ビクトリア市ロイヤル・シアター

ロデオを題材とした作品など三作品を公開。

チケット:1-800-717-6121

 

 

(取材 北風かんな)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。