『どうするの?日本にある財産!』

藤永淳一さんによる企友会主催セミナー

 

10月17日、バンクーバー中央図書館にて企友会が主催するセミナーが行われた。日本で司法書士として事務所を構える藤永淳一さんを講師に迎え、日本にある財産、または相続する予定のある財産についてどのように対処するかを分りやすく解説した。会場には約40人が訪れ、藤永さんの話に熱心に耳を傾けていた。

 

 

セミナー当日は雨にもかかわらず、たくさんの人が訪れた

  

海外に住む日本人の助けに

 セミナーの講師を務めた藤永淳一さんは、司法書士だけでなく、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引主任者の資格も併せ持つ。司法書士事務所を開設して10年以上たった2012年に、カリフォルニア大学アーバイン校に半年間留学。その時に出会った多くの日本人から、日本にある財産の処分や遺産相続などについての相談を多数持ちかけられた。海外に暮らしている日本人の多くが、相続問題で困ったときに相談できる人がいないことに不安を感じているのを実感したという。そこで、カリフォルニアに滞在中お世話になったことへの恩返しの気持ちもこめて、去年の秋からロスアンゼルス(LA)でセミナーを行うことにした。今回は3回目となるLAでのセミナーを終え、バンクーバーで初めての開催となった。以下はその概要である。

 

 

在外邦人と日本の現況

 在外邦人が抱える相続に関する問題は、日本の家族と離れていることでコミュニケーションが密に取れないこと、情報へのアクセスが制限されてしまうことなどがあげられる。いまやインターネットで手軽にさまざまな情報が得られるが、こうした情報の中には古いものや正しくないものも含まれており、取捨選択が難しい面もある。一方、日本国内の現況は、少子化が進むほか、三大都市圏(首都圏、中部、近畿)への人口集中と地方の過疎化があげられる。三大都市圏では基準地価は上昇しているが、そのほかの地域はマイナス成長となっている。また、2015年1月より相続税法が改正され、基礎控除額が変更となる。これによって、国民全体の約10パーセントの人が相続税の納税対象となると見込まれている(現行では4パーセント)。

 

 

司会を務めた企友会の谷口明夫さん(右)と吉本三沙子さん

 

相続に備える

 相続人の範囲については、配偶者が同順位、つまり常に相続する権利があることになり、続いて子、親、兄弟姉妹という順位となる。これに基づいて法定相続分の割合も決まってくる。藤永さんは、相続に備える心構えとして、第一に争族対策(もめない)、次に納税対策(困らない)、そして節税対策(損しない)という順番が大事と強調する。まずは、親兄弟や親族との間で、もめないようにする対策を考えることが大切だという。よく聞くケースとして、「うちには大して財産はないから心配ない」とか「うちは親族みんな仲がいいから大丈夫」と楽観してあまり準備をしなかった人が、相続問題でもめて争議にまで発展してしまうというもの。こじれると解決も長引くのでまずは、もめごとを起こさない対策を重視したい。

 具体的に相続に備える方法として、不動産を処分して分割しやすい財産に換える、相続財産の整理を行う、遺言書の作成などがあげられる。特に遺言書は絶対というほど作っておいた方がいいとのことで、その作成についての詳しい説明もあった。「遺言書」と「遺書」の意味を取り違えている人や、縁起が悪いと抵抗を感じる人がまだまだ多いのが日本の現状で、親に遺言書の作成を促すことがためらわれるケースもあるのではという質問に、やはり感情に訴えることが大切、という。後に残される家族が争わずにすむように遺言書を作成してもらいたい、とお願いしてはどうかということだった。遺言書の大切さを改めて日本にいる家族と話し合うこともいいかもしれない。

 また、不動産の共有は原則としてしない方がいいという。実際に不動産の処分をする時に、共有する人たち全員の印かんが必要になりトラブルのもとになりやすいそうだ。

 このセミナーでは、特に不動産の扱い方について詳しい説明があり、藤永さん自身が扱った具体例の紹介のなかでも不動産がらみの事例があったことから、質疑応答でも評価額や固定資産税など、不動産に関する質問が多く出ていた。先にも説明があったように、都市部以外では土地の値段は下がっており、収益が見込めないような不動産を抱えているよりは積極的に売却したほうがいいケースもある。反対に、相続財産に占める流動資産の割合が大きく、一部を不動産購入にあてたとしても生活資金に余裕がある場合などは、節税対策としても不動産を購入したほうが良いこともあるそうだ。まさにケースバイケースといったところで、専門家のアドバイスがないとなかなか決めかねる点も多そうだ。

 セミナー終了後の質疑応答でもたくさんの質問が出たが、その後も個人的に話をしたり質問をする参加者が後を絶たず、相続問題に関心を寄せる人がいかに多いかを示していた。そうした質問に丁寧に答えて対応していた藤永さんの姿が印象的だった。

 

 

講師の藤永淳一さん。具体的な事例を含めた分かりやすい説明で聴衆の関心をひきつけていた

 

 相続の問題は金銭が絡むだけに、争いごとに発展することもありがちだ。そうしたもめごとを収めるため、または、もめごとを起こさないようにするために、お互いを思いやる気持ちを持ち、人と人との関係を重視することがまず基本にあるのではと感じた。

 藤永さんはすでにLAに住む日本人の、日本での相続問題を何件も扱ってきているという。Eメールやスカイプで海外に住む人と簡単に通信できる現代であっても、できたら相談者と実際に会って話をして自分の人となりを知ってもらい、そのうえで依頼をしていただけるのが理想、という藤永さん。セミナーを開くのはそのいい機会になると考えている。こうした誠実な対応が依頼者に信頼される所以ではないだろうか。

 藤永さんの「あけぼの法律事務所」では、不動産登記、相続対策に関する助言、相続関連手続きの代理や書類作成、不動産仲介などを行っている。日本での相続について困っていることや疑問点がある人は、メール会員になることで無料で相談することができる(相談内容や頻度によっては有償となる場合もあり)。

お問い合わせは、 This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.まで。

 

 

藤永淳一さん(右)と奥様の貴子さん

 

藤永淳一さんプロフィール

1973年、山口県出身の両親の元、大阪に生まれる。京都の立命館大学卒業後、1999年に司法書士試験に合格。2001年、藤永司法書士事務所(現:司法書士あけぼの法務事務所)を開業。主に不動産仲介業務を行うSRJコンサルティング合同会社を併設し、各種相続手続から、遺言作成に関するアドバイス、不動産仲介まで幅広く業務を行っている。

    

(取材 大島多紀子)

 

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