日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会の取り組み

 

『日系ホーム』(介護付き住宅)と『新さくら荘』(独立型シニア向けアパートメント)を運営している、日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会が、認知症に関する講演を行った。高齢化社会はカナダも同じで、特に認知症高齢者やその家族に対する支援が、社会の課題となっている。日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会のエグゼクティブ・ディレクター、キャシー槇原さんとアウトリーチ・コーディネーター、渡瀬容子さんに、同協会の取り組みについて話を聞いた。

 

 

左、「日系ホームのような公的資金を得た介護付き住宅は私たちが最初で、日系ホームの成功で、以後、同様の施設が誕生しました。今後、いきいきシニアラウンジを同様の価値観を持つアジアのコミュニティにも広げていけたらと思っています」(キャシー槇原さん) 右、「(いきいきシニアラウンジは)認知症のシニアに限定したものではありません」と語る渡瀬容子さん

  

以前、お話を伺った際には、日系ホームは認知症高齢者の介護施設としての認可取得について検討しているということでした。

 キャシー槇原さん(以下C) 今日もその件について話をしたばかりです。日系ホームでは、正式に認知症と認定された入居者の方は残念ながら退居いただかなければなりません。現在、軽度の認知症の方も入居されています。しかし、認知症と明確に診断されて、政府からの援助など公的サポートが必要な場合、認可機関に入居しているなどの条件を満たす必要が出てきます。また、私たちは入居者の安全を考えなければなりません。認知症高齢者の安全のニーズは、認知症でない高齢者のニーズとは異なりますので、施設の大規模な改築工事が必要になります。

 

認知症高齢者が入居する介護施設では、徘徊防止のためか、ドアの開閉はコード番号を入力するようになっていました。

  ほかにも消防設備の問題もあります。日系ホームの場合、すでに建物はあって、物理的に変えられないものもたくさんあります。その中で、最も重要な入居者の安全を確保しながら、何ができるか考えています。

 

現時点での認知症の施設入居者数について教えてください。

  公式に認知症と認定されていない方もいらっしゃるので、正確な数字は分かりません。おそらく10〜15パーセントというところでしょうか。

 

 

1ベッドルーム56室、スタジオタイプ3室の日系ホーム。「空き室待ちの方の中には、スタジオルームが空いても、ベッドルームタイプが空くまで待つという方も多くいらっしゃいます。協会でお勧めしているのは、とりあえずスタジオルームに入居すること。入居して、ベッドルームが空くのを待っていただかないと、一度、断ると、保健当局のウエイトリストの最後尾に回されてしまい、とても時間がかかります」という

 

認知症と診断された場合、日系ホームを退去しなければならないのかと思っていました。

 C 施設にロックシステムがないため、徘徊があると施設から移っていただかなければなりません。ドアをロックしていなくても、日系ホームで無理なく暮らすことができること。そして、スタッフの質問に答えることができること。説明を受けたことに、意思決定ができなければなりません。たとえば、「歯を磨きましょう」と言われて、歯を磨けること。もちろん私たちはお手伝いしますが、歯を磨くということを理解できること。また、暴力が出てくると、退去をお願いすることになります。激越があり、誰かが四六時中、見ていなければならないと、人員の問題もあるので私たちでは十分な介護はできません。重度な患者の場合、介護側の負担も大きいので、看護師、介護師一人あたりの入居者の割合が低い施設に移っていただかなければなりません。

 保健当局も認知症の高齢者の介護施設のニーズはさらに高まっていくことを認識しています。高齢者の数が増えていくことは、すなわち認知症の高齢者も増えていくことです。ですから、私たちは今後に向かって準備をする必要があります。最も重要な入居者の安全を確保しながら、何ができるか考えていかなければなりません。

 

認知症についての講演を行ったと聞いたとき、私自身、「知っていたら参加させていただいたのに」と残念でした。こういうプログラムは定期的に開催されているのでしょうか。

  講演はサレーにあるAmenidaの要請で行いました。Amenidaは民間の介護施設で韓国系の入居者が多いのですが、日系もいらっしゃいます。

 渡瀬容子さん(以下W) グレーターバンクーバーの日本人向けにというタイトルで、どのような症状があれば認知症かもしれないと気を付けるべきか、それから利用できる公的資源や日系コミュニティのサービスなどについてお話しました。

 認知症には記憶障害、見当識障害(例、家族のことが分からなくなる)、失語、実行機能障害(例、外出するのにパジャマのまま出かけようとする)などの、共通して見られる中核症状と、周囲の環境や社会との関わりの中で出てくる、すなわち個人差がある周辺症状と呼ばれるものがあります。徘徊などは周辺症状です。公的資源については、身の回りの世話を含むサービスが必要になった時のヘルプラインや、心の健康について相談できるメンタルヘルスサービスなどを紹介しました。

 

日系コミュニティのサービスとして、日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会が提供するいきいきプログラムというものがあると聞いたことがあります。

  いきいきプログラムは、2013年4月にパイロットプログラムとして始めたもので、ゆったりとしたペースの楽しい活動をしたいシニア、または初期から中期の認知症を持つシニアが対象です。

  一般的なシニア向けのプログラムだと、ついていくのがしんどい、のんびりとしたペースでアクティビティがしたいという方もいらっしゃいますので、そういう方も対象としています。認知症のシニアに限定したものではありません。

  内容はエクササイズ、お話、アート・クラフト、ゲームなどで、日本食のランチもお楽しみいただきます。朝9時45分から午後3時までで、お帰りの際にはボランティアやスタッフのコメントを書いたお手紙のようなものをお渡しして、介護者はその日、参加したシニアの方がどういう様子だったのか分かります。

  いきいきプログラムは、介護者にお休みをあげたいという願いもあって始めたものです。プログラムは好評で、この9月から日系プレース以外にも隣組、そしてスティーブストン日本文化センターの計3カ所で行っています。 各ロケーションの定員はどれくらいですか?

  日系プレースが約12人、隣組は5〜6人、スティーブストン日本文化センターが約6人です。2016年には新たにもう1カ所、開催場所を増やす予定です。ロケーションについては、アンケートでニーズを調べて決定します。  いきいきシニアラウンジは、認知症対応型ボランティア研修会を受講したボランティアの皆さんが運営の中心となっています。各ロケーションで1時間30分のトレーニングを行いました。日系プレースと隣組は日本語、英語での研修希望者が多いスティーブストンでは英語のトレーニングです。

 

 

ゆったりとしたペースでアクティビティを楽しむことができる、いきいきシニアラウンジ。介護者も休むことができると好評だ

 

日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会が日系プレースでほかに行っているものはありますか?

  毎週火曜日10時30分〜午後1時の食動楽です。道楽ではなく、動くの動楽で、よく食べて、動いて、大いに楽しむというもの。日系センターでシニアのためのカラオケや健康体操のプログラムを持っている藤嶋ケイ先生の「シニアの健康体操」または「指先と頭の運動」のいずれかと、栄養満点の美味しいランチ、そしてコーヒーテーブルと称する、専門家(弁護士、医療関係者、ソーシャルサービスなど)によるミニレクチャーです。

 また、9月21日にキャラバン・メイト養成研修を日加ヘルスケア協会等と共催しました。キャラバン・メイトは日本の厚生労働省が推進している「認知症キャラバン」事業のバンクーバーにおける展開で、認知症の人も安心して暮らせる街づくりを目指したものです。

  教会や小売店をはじめとするビジネス、そして文化グループが「認知症にやさしく」なれるかは、ここに暮らす私たちの課題です。認知症患者が買い物に行ったとき、レジで支払いにとても時間がかかったりする。そのような場合に、店員はイライラしないで、温かく手を差し伸べられるような社会を築いていけるといいですね。

  

新報読者へのメッセージ

私たちのプログラムをお手伝いいただけるボランティアの方を募集しています。現在、日系プレースのボランティアは窓口がひとつになっていますので、ボランティア・コーディネーターのマキ・イーまでご連絡ください。

(Tel:604-777-7000 内線114またはemail : This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

    

(取材 西川桂子)

 

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