日加の旗が翻る試合開始前の応援席(Photo by Sam Maruyama)

 


ラグビー日本代表、カナダ代表に逆転勝ち

ラグビーのパシフィック・ネイションズ・カップ日本対カナダが6月7日、バーナビーのスワンガード・スタジアムで開催された。観客席は満 員のラグビーファンで埋まった。メープルリーフが多くはためく赤く染まった観客席に、日の丸を掲げて日本代表を応援するファンの姿も見られた。

 

前半のカナダの攻撃(Photo by Sam Maruyama)

カナダの激しいタックル(Photo by Sam Maruyama)

 

 
後半3トライで逆転勝ち

前半はカナダのペースだった。試合開始5分過ぎ、カナダは初トライで先制点を取ると、次々と得点を重ね、前半が終わった時点で3トライを奪う25ー9と大量リードした。
しかし、後半1分過ぎ、日本はこの試合初トライとなるWTB藤田のトライが決まると、流れは一気に日本へと変わった。後半29分に3つ目のトライを決めた日本は31-25と逆転。その後にも追加点をあげ、34-25と逆転勝利を収めた。
試合後、エディ・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、「(前半の試合は)私の血圧にはあまりよくなかったけど」と笑みを見せ、「日本の方が準備ができていると思っていた。とにかく我慢していれば…」、なんとかなるだろうと思っていたことをボクシングに例えて語り、「実際、後半逆転した選手たちはよくやった」と称賛した。3日に行われた記者会見では、「カナダは体が大きいフィジカルが強いチーム」と厳しい表情で警戒するコメントを語っていたジョーンズ・ヘッドコーチ。「とにかく最初の40分にカナダの強烈なフィジカル攻撃に立ち向かわなくてはいけないことはいつものことと分かっていた」と、この日の試合後にはカナダの記者に和やかな表情で語っていた。
マイケル・リーチ主将は「ハーフタイムにスクラムコーチから細かい修正の指示があり、良くなった」と後半の切り替えを語り、「勝利できてうれしかった」とアウエーでの勝利を素直に喜んだ。
一方、ホームでの試合に逆転負けしたカナダのキーラン・クロウリーヘッドコーチは「前半はとてもいいプレーをした。いいプレッシャーもかけられたし、いいトライも決めた」と振り返った。「ただ、後半はセットプレーからディフェンスにミスが2つほど出た。取り返しがつかないミスだった」と敗因を語った。カナダは後半無得点に終わった。「後半の戦いぶりを見ると、日本の勝ちは当然だったように思う」と日本の攻撃を称賛した。

 

 

日本代表田中選手(Photo by Sam Maruyama)

日本2つ目となるトライを決めた田村選手(Photo by Sam Maruyama)

 


日本人ファンも多くスタジアムに詰めかけ

スワンガードに詰めかけた6382人のほとんどがカナダファンで埋まる中、試合終了の合図とともに吐き出された溜め息に交じって、日本ファンの歓声が小さく力強く響いた。
前半は一つもトライが奪えなかった日本代表だが、それでもPGが決まると日の丸がひらひらとスタンドのあちこちで揺らめいた。
だが後半は、完全に日本のペース。1点も取れないカナダファンの溜め息を尻目に、日本代表を応援する歓声と日の丸がひと際目立った。
バンクーバー在住の藤田安希さんと奥野文佳さんは、「ホリエJAPAN」と書いた大きなボードを持って「ニッポン、がんばれ」と声援。「チームに友人がいるので」とこの日、会場に駆けつけた。
試合後は、選手たちを待つ多くのファンが、グランド近くに駆け寄っていた。握手をしたり、サインをもらったり、写真を撮ったりと、滅多にない機会を楽しんだ。
試合後、堀江選手は「今季初めて自分たちと同じくらいのレベルの相手と試合をして、自分たちが成長していることを感じられた」と試合を振り返り、「ファンの声援は聞こえていました。力になりました」とファンに感謝した。3日の記者会見で「会場まで来て応援してください。いい試合をします」と言ったリーチ主将の言葉通り、日本のファンにとっては、これ以上ない試合となった。

 

試合後、観客席のファンに手を振る日本代表(Photo by Sam Maruyama)

日本代表の応援に駆けつけた奥野文佳さんと藤田安希さん

 


日系4世ネイサン・ヒラヤマ選手、ケガで欠場

この試合はケガで欠場したが、カナダには、日系4世のネイサン・ヒラヤマ選手が代表入りしている。父のゲリー・ヒラヤマ氏もカナダ代表として活躍していたという。
リッチモンド出身のヒラヤマ選手。カナダ対日本がバンクーバーで行われる試合に出場できず、「すごく残念」と話し、「出場できれば特別な試合になった」と残念がった。日本戦には2009年に東京で開催された試合(リポビタンDチャレンジ2009。仙台でも開催)で出場したことがあるという。
自身が日系ということもあり、日本との試合にはやはり特別に感じるものがあるとしながらも、「カナダ人としてカナダ代表に選ばれて光栄に思っている。できれば、2015年のW杯にも出場したい」とこれからの意気込みを語った。

 


日本対カナダ、日本が勝ち越し

日本とカナダのこれまでの対戦は1932年まで遡り、今回で23回目。この日の勝利で日本の13勝8敗2分となった。2005年以降では、日本の4勝1敗2分。うち3勝は日本での開催だったが、4勝目の今回はアウエーでカナダに勝利した。ジョーンズ・ヘッドコーチも、「後半のスコアを25‐0という試合はいつもできるわけではない。このアウエーでの勝利は大きい」と語った。
スワンガードでは1986年にも両チームが、今回と同じ6月7日に対戦している。 結果は26‐12で日本が勝利。日本はこれでスワンガードで2連勝となった。

 

 

記者に囲まれ笑顔で対応する堀江選手(Photo by Sam Maruyama)

 


IRBパシフィック・ネイションズ・カップ2014

今年は6チームが参加。プールAにサモア、トンガ、フィジーの3チームがパシフィック・アイランド・カンファレンスとして、プールBに、日本、カナダ、アメリカがアジア/パシフィック・カンファレンスとしてグループ分けされている。
予選は各プール総当たりの各チーム2試合。7日の日本対カナダはその初戦だった。アメリカとは、日本は14日にロサンゼルスで、カナダは21日にサクラメントで対戦する。各プール上位チームが11月に行われる決勝ラウンドに進出する。

 

 

(取材:三島直美)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。