3月28日の“Food, Water & Energy: The next Green Revolution”のパネラー参加者。
左から、ダドリー氏、マッコウェン氏、ブランドフォード氏、ウィタッカー氏

 

環境問題とビジネスをテーマに、世界中から専門家や政治家、企業や機関、団体が参加する3日間の総合環境ビジネス会議で、同様のテーマで開催される環境会議では世界最大規模と言われている。今回は50カ国以上から参加。講演者約150人、参加者1万人、参加展示団体300以上と例年通りの規模で開催された。 毎回主要テーマがあり、時代の流れと共に変遷するが、今回は大きな意味で「エネルギー」がテーマ。天然資源産業からエネルギー消費まで多岐にわたった講演やパネルディスカッションが行われた。

 

 

「食料と水の安全と確保」

今回は、広義の「エネルギー」問題として、エネルギーを供給する側と消費する側という需要供給のバランスだけではなく、「食料と水」も含め、人類のエネルギー問題を包括的に捉えていたことが特徴。今後も増え続ける地球上の人口に対して、石油や石炭を主とする化石エネルギーやクリーンエネルギーだけではなく、食料と水をどのように確保し、安全に安定供給していくかも重要なテーマとして捉えられていた。

化石燃料の供給と水の確保は、切っても切れない関係にある。人口拡大と共に人類が必要とするエネルギー量は増え続けている。発展途上国といわれる国々が経済的な発展を遂げていく過程で、エネルギー需要増加は避けて通れない課題であり、それに呼応するエネルギー供給量の増加も必然となる。

化石燃料の採掘作業には多量の水が使用される。人口が増加すれば、エネルギーを供給するための水の需要増加は避けられない。さらに、人口増加は直接的な水の必要性の増加も伴う。水の需要は工業用、生活用ともに増加することになる。しかも人口が増えれば食料需要も増える。それを補うために最善とされる方法が穀物類の供給だが、穀物栽培には水が必須となる。クリーンエネルギーの促進においても、バイオ燃料などは穀物から製造される。

つまり、人口増加という現象を中心に、すべてのエネルギー問題は密接に関係している。今後、未曾有の人口増加時代を迎えるにあたり、「エネルギーの需要と供給」を地球温暖化ガス排出という、これまでの単一的な既成概念では解決できないエネルギー問題がこれから起こる可能性があり、そのための対策が必要となる、ということが今回の会議の中で主張されていた。

 

トレードフェアには300以上の団体が参加

毎回同会議の開催中には、講演会やパネルディスカッションと同時に、トレードフェアが開催される。今回は、300以上の企業、団体、政府機関などが参加。環境問題への取り組みやクリーンエネルギーテクノロジーの紹介など、会場には各団体のブースが並んだ。

最近は、国単位での展示も進んでいる。今回は、日本をはじめ、アメリカや中国、ドバイ、フランス、ポーランド、スイス、イギリス、中国に加え、マレーシアも初参加した。カナダは連邦政府と各州政府がブースを構えた。

今回の特徴は、専門性の高い技術が多くのブースを占めたこと。例えば2010年には、会場の3分の1を占めていたハイブリッドや電気、水素、バイオ燃料で走る自動車などの展示や、一般消費者でも利用できる生活に密着した商品やサービス、技術を紹介するブースが減り、企業レベルでの取引が可能となる技術やサービスなどが主体に置かれた展示会となった。

 

 

トレードフェアのジャパン・ブース

 

ジャパン・ブースには9社が参加

トレードフェアには、日本貿易振興機構(ジェトロ)が中心となり、前回に続いてジャパン・ブースを設置、9社が参加した。27日には、ジェトロの企画でジャパン・ブースに参加している7社がプレゼンテーションを行い、各社とも自社技術の特徴や利便性、利点について、画像などを使って説明した。会場には、日本企業の製品に興味を持つ企業関係者が多く訪れ、各社の説明を熱心に聞いていた。

プレゼンテーション以外では、各社ブースでそれぞれの製品や技術、サービスを、個別に説明。会場のほぼ中央に位置したジャパン・ブースは常に人が訪れていた。

その中のひとつ、エコパラダイス株式会社は、今回GLOBE初参加。主力商品である「ピリカレ」を中心に、環境問題への取り組みなど、自社理念に基づく商品開発や商品紹介をブースでもプレゼンでも展開していた。プレゼンではマイクなしでも会場中に響き渡るようなインパクトのある海野貴史CEOの説明に会場では興味津々で聞き入っていた。

ピリカレとは、廃棄食用大豆油を活用して、リサイクル粉石けん製造工程で独自のエコパラダイス溶液と合わせて作られた粉石けん。一般家庭では、洗濯用、台所用、または床、風呂用の洗剤として使用できるほか、入浴剤としても利用できる。さらに、工業分野、農業分野でも、その力を発揮するという。建材やプラスチック製品、ファイバーなどに応用されている。エコパラダイス溶液とは、北海道で発見した土壌菌を培養して生産されている同社独自の特殊酵素。これが、有害物質であるフリーラジカルに反応して酸化した物質や人体を還元する効果があると説明。ピリカレは2006年にはEPIF(エコプロダクツ国際展)大賞を受賞している。

同社の海野CEOは、この製品の特長は、天然素材を利用して製造した石けんを使用するということがエコにつながるというだけではなく、この製品は使用すると水質汚染を改善する効果があると説明する。洗濯石けんとして使用した排水が、海や河川を汚さないというだけでなく、汚染そのものを改善する働きがあり、プレゼンではその画像を示して説明した。海野CEOはエコパラダイス溶液が、「世界を変える」可能性を秘めていると期待する。「環境に優しいという概念を覆し、環境破壊を食い止める有効な手段」と語った。

今回の出展はカナダでの事業展開を視野に入れた参加。アジア各国ではすでに事業を展開している。

 

エコパラダイス社ブース。訪問者に説明する海野CEO(中央)

 

参加した日本企業・機関

明電舎アメリカ

株式会社エコ・テクノロジー

大起理化工業株式会社

日本シールド株式会社

株式会社天神製作所

エコパラダイス株式会社

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)

パナソニック エコソリューションズカナダ

株式会社 ジェトロ

 

ジェトロ主催の3月27日のプレゼンテーション

 

ゼロフットプリント 《GOODcoins》

今回GLOBEの一つの試みとして、ゼロフットプリント社の《GOODcoins》が、GLOBEアプリから紹介された。

GOODcoinsとは、生活の中にエコを取り入れることで「コイン」を貯めていく世界初のソーシャル通貨。一般的なポイント会員制度と仕組みはほぼ同じだが、「コイン」を貯める方法がエコ活動である点が特徴。

例えば、公共交通機関を利用するとか、散歩をするとか、エコ商品を購入するとか、サイトで紹介されているアクティビティを行うことによってコインを獲得していく。キャンペーン企画もあり、中にはひと月ランニング30キロ達成でコインを獲得するというハードなものもある。貯まったコインは、エコ商品やサービスと交換できる。

 

Zerofootprintのブース

 

交換コイン数とアクティビティとの関係は、専門家のアドバイスを受け、決定しているという。

エコ活動だけではなく、健康的な生活を送ることでコインを獲得するという仕組みを展開している理由は、現在カナダでも問題になっている増加する肥満人口の改善にも一役買えないかという試みから。個人の肉体的健全性も、エコ同様、社会の健全化には欠かせないということだろう。

GOODcoinsの目的は、コインを貯めるという報酬目的であっても、毎日の生活の中で、エコで健康的なアクティビティを続けることで行動パターンを変え、意識を変え、社会全体の改善につなげることにある。

参加はウェブサイトから登録できる。 www.goodcoins.ca

 

(取材:三島直美)

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