4月1日、羽田空港内メンテナンスセンターで行われた入社式。前日にラストフライトを終え退役したボーイング474型機「ジャンボジェット」が同席し、新旧交代を印象付けた
経済効果について
ブリティッシュ・コロンビア州では、全日空の新規就航による経済波及効果に期待がかかっている。
3月30日のオープニングセレモニーで、ブリティッシュ・コロンビア州政府トッド・ストーン運輸相は、約200人が搭乗できる飛行機が1機、毎日バンクーバーに到着するということは、バンクーバーに訪れる人が一日200人増える可能性があるということだと語り、訪問者が増えるという直接的な経済効果と、150人の雇用を生み出す効果があることを強調した。そして「BC州のGDPにして2100万ドルになる」と語った。
今回の新規就航で旅行業界も力が入る。日本側では、全日空の就航に合わせ、カナダの観光局が力を入れている。今年から来年にかけて日本では、カナダに注目が集まる番組やイベントが続くことから、全日空の新規就航を起爆剤にさまざまなキャンペーンを展開している。
路線が1便増えることで、カナダにとって、特に今回はBC州、バンクーバーにとって大きなチャンスとなるという。ビジネス35席、エコノミー173席のボーイング767―300ERが満席になると、208人を日本から毎日運べる計算になる。関西空港に一日2便が就航していた黄金時代から、2001年9・11、サーズ(SARS)、燃料費の高騰などから、減り続けた日本からバンクーバーへの就航便と観光客だったが、今回の新規就航は明るい話題となった。
ANAラウンジの入り口。3月30日から新しくなった羽田のラウンジ前には花輪が
カナダから東京への観光客誘致
バンクーバーを訪れる日本人観光客が増加する可能性も大いにあるが、カナダから東京を訪れるカナダ人観光客の増加も見込まれる。
カナダから日本への観光客数は2011年に大きく落ち込んだが、2013年は約15万人(*1)まで回復し、2010年とほぼ変わらない数字となっている。
国別でみると、アジアを除く、欧米豪からの旅行者数で比較すると、2013年はアメリカ、オーストラリア、イギリスに次いで4番目、ビジネスでの訪問も含めた全体ではフランスに次ぎ5番目となっている(*1)。
東京都では外国人旅行者数を2017年には1000万人にすることを目標としている。その中にはもちろんカナダからの旅行者も含まれる。今回、話を聞いた東京観光財団は、全日空が羽田からカナダに新たな路線として就航したことについて、「足が増えれば、全体の数字も増えてくるのではないかと考えている」と歓迎している。
羽田空港国際線ターミナル。
こじんまりとしていながらも、和テイストのデザインが印象的
2011年に一度落ち込んだものの、カナダからの旅行者数も回復傾向にあり、「これまでトロント事務所を通じて行ってきた広告や旅行博などの宣伝活動が、(カナダへの便が)増便するという現実的な要因で拍車がかかるのではないかと」と期待しているという。
東日本大震災によるネガティブな印象からもようやく抜け出し始め、これからが本格的な誘致活動の第2段階とみている。「そういう意味では全日空就航が一つのきっかけになる。これまで蒔いてきた種に、水をやり育てていく段階に入ったかなと思っている」と語った。
カナダからの旅行者の特徴としては、個人で手配する旅行者が多いこと。旅行代理店を通さず自分で手配したという人は57・9パーセント、旅行代理店を通して個人旅行を手配した人は18・3パーセント、合わせて76・2パーセント(*2)にもなる。これらは欧米諸国の旅行形態の傾向とも重なる。旅行者の情報源は、旅行先の観光当局のウェブサイトやインターネット全般が上位3位までにランクイン(*2)。今や出発前も、旅行中も、インターネット情報は欠かせないものとなっているようだ。
東京観光財団では、これまで同様、旅行代理店やメディアを通じたプロモーションを展開すると同時に、ウェブサイトやソーシャルネットワークでの情報発信にも力を入れ、さらに充実させていくとしている。
東京観光財団ウェブサイトは、http://www.gotokyo.org/jp/index.html。Facebook:www.facebook.com/TokyoFanClub.JP、Twitter:@tokyo_kankou。日本語、英語を含め9言語に対応している。「これを見れば東京観光が楽しくなる」、そんな充実したサイトを目指しているということだ。もちろん、日本人観光客にも役立つ情報満載となっている。
(*1)日本政府観光局(JNTO)統計を参照。数字は日本への外国人渡航者
(*2)東京都産業労働局観光部企画課、国別外国人旅行者行動特性調査を参照
「お客様に1番に指名されご利用頂ける路線に」
全日空バンクーバー支店長 松橋 慶典 氏
全日空にとって北米9番目の支店となるバンクーバーで、初代支店長に就任した松橋慶典氏。バンクーバーでは地元日系社会からの期待の声を多くいただいき、励みになっていると語る。
その期待の声は、日加間だけではなく、羽田を起点にしてカナダ・日本、そしてアジアをつなぐ路線としての役割も含まれているのではないだろうか。「ASEAN諸国などの経済成長により、今後、アジアのエネルギー需要が増大していく中で、供給側としてのカナダと、エネルギー関連の様々なプロジェクトへの企業の参加が想定される日本、アジアとを結ぶ流動は、今後大いに増加すると見られます。首都圏での滞在を可能にし、成田への移動を省けるメリットや、国内各都市への接続も可能な点を考えますと、羽田での国際・国内の高い接続利便性を有するANAの果たせる役割は非常に大きいと見ております」と松橋氏。羽田を中継点に、国際、国内との移動の利便性を生かし、ビジネス・観光両面で首都圏滞在を可能にする流動モデルの可能性に期待していると語った。
ただ、課題も見え隠れする。その最たる点が、国際線から国内線への乗り継ぎが厳しいことだ。バンクーバー発羽田着NH115便は午後7時着。最大メリットである国内線への乗り継ぎが、弱点となる可能性さえある。現在の運航ダイヤでは、同日接続で利用できる都市が、千歳、秋田、関西空港、神戸などに限られるという。復路は116便が21時55分発と全国各地からの乗り継ぎが可能だ。
全日空は、イギリスの航空業界格付け会社が毎年発表する「エアライン・スター・ランキング」で去年に続いて2年連続で最高評価の「5スター」を獲得した。「空港・客室のフロントラインのサービス品質に重点が置かれている」ことが評価されたと自負している。
松橋氏は、「いつも、お客様と同じ目線で、お客様の立場に立った質の高いサービスを提供させて頂くことが、私たちの基本姿勢です。運航機材のプロダクト(現在はB767―300ERを使用)や、羽田到着後の乗り継ぎ利便等、時間を頂きながら改善して参りたいと思います。まずは、ANAのスタッフのサービスマインドと、羽田発着という利便性にご期待頂いて、是非一度ご利用頂ければと思います。5スター品質のサービスで、皆様にご満足頂けるよう頑張って参りますので、ANAのバンクーバー・羽田線をよろしくお願いし致します」と語った。
(取材:三島直美)