気さくで京ことばが素敵な通円さん
バンクーバーで宇治茶を求めて
京都・宇治生まれの通円さんは、小学校の水道の蛇口をひねったらお茶が出る、といわれるような環境で育った。周りにはお茶の老舗が多く、お茶について知らない人はいなかった。しかし2003年バンクーバーでお茶のビジネスを開始した当時、ティーハウスのオーナーでさえ日本茶のことを知らず、がっかりした。ある日偶然出会ったSHAKTEAのオーナーと意気投合し、日本茶の知識・淹れ方などを教える事になったという。
通円さんはここ数年間、「宇治の通圓」という名前を掲げずに、バンクーバーで地道な日本茶の普及をしてきた。通圓は850年以上続いている茶屋なので、どうしたら宇治茶をカナダで長く普及できるか考えていたという。また通円さんはカナダ人にも、ジュースやコーヒー同様日本茶も気軽に飲んでほしいと思っていた。しかしバンクーバーと京都では同じように淹れたお茶の味が違った。
通圓をささえた歴代の女性達(右の赤ちゃんが悠花さん)
茶職人のこだわり
「日本茶で大切なのはお水と茶葉です。でもバンクーバーの水は京都より硬水なんです」と通円さんは言う。硬水はコーヒーには合うが、日本茶に不向きといわれる。そこでフィルターで濾した水を、やかんのふたを開けたまま沸騰させる。できたら鉄瓶がよい。鉄のミネラルは水を軟水にしてくれるそうだ。しかし通円さんはそれでも満足しなかった。そこで実家である「通圓」に相談してみた。研究熱心なお父様と通圓24代目の弟さんがバンクーバーの水にも合うお茶の製作を試みてくれた。
そして完成したのが通圓ハウス・ブレンド。通圓が心をこめて、バンクーバーの人のために開発した新製品だ。玉露の茎の入ったこのお茶を口に含むと、なるほどとうなずける。ありきたりな表現であるが「おいしい」と思える味わいだ。現在SHAKTEAで一番人気があるそうだ。このお茶は、他のお茶と比べても甘味と旨味がよくミックスしている。夏は冷茶でもいただける。
心を和ませてくれるお茶の時間
通圓ハウス・ブレンド(上)とオーガニック玄米茶、玄米茶、煎茶、玉露(下、左から)
お茶は自分へのごほうび
「お茶の魅力はそれだけで飲める、食事中でも飲める、そして日本食に合うこと」と通円さんは語る。お茶はおもてなしでもあるが自分にとってのごほうびでもある。通円さんは毎朝お子さんを学校へ送って行った後、お湯を沸かして自分でお茶を淹れる。特に決まったお茶でなく、その日の気分で選ぶそうだ。たとえば気分を引き締めたいときは抹茶、夜はカフェインのないほうじ茶などいろいろな味を楽しんでいる。
気になる作法について伺うと、通円さんは「お点前」でストレスを感じないでほしいと語る。手間をかけずに「あるもんつこうて無精流」でよいそうだ。例えば急須、湯冷まし、湯飲みがないなら、ストレーナー、計量カップとマグカップで代用できる。「何分待ってお湯の温度を何度まで下げてという化学実験みたいに肩ひじ張るのでなく、『今日はおいしく淹れられたね』、『あっ、今日は渋くなってしもた。お湯を足したらええか』という風に楽しんでリラックスして下さい。そして余裕があれば.お気に入りのうつわを探したり、お点前にもチャレンジしてみてください」と言う。
近いうちに日本酒とのコラボレーションを計画している。「抹茶マルガリータ」や「焼酎の緑茶割り」などを考えているそうだ。コーヒー、紅茶に比べると20ドルのお茶パックは高級品かもしれない。しかし宇治の厳選された日本茶は四季を通じてカナダ人を魅了する。また普段の忙しさから自分を癒すひとときを楽しむこともできる。お茶は長年一緒に暮らす家族のようなもの。心静かにリラックスして、日本茶がもたらすまろやかな時間に浸ってみよう。
(取材 ジェナ・パーク)
お茶を淹れるさりげない動作が和を感じさせる
〜お茶の豆知識〜
- 少量の抹茶を茶筅でたてて、泡立てたミルクを入れると抹茶ラテになる。
- 市販のケーキミックスの粉に大さじ2杯の抹茶を混ぜると抹茶ケーキができる。通円さんはBetty Crockerのフレンチバニラ味のケーキミックスがお気に入り。
- 真空パックで開封前なら冷凍庫で2年程もつ。ただすぐ開けると結露が出るので一度常温にもどしてから封を開けるとよい。
- 封を開けたらクリップするか缶に入れ毎日飲むなら常温、飲まない場合は密封し冷蔵庫に保管する。
- 古くなったお茶はガーゼに包んでお風呂で活用。まぶたにのせたり、入浴剤みたいに浮かせたら香りも出てリラックスできる。
- 家庭菜園などの肥料にも使える。
- お茶のテアニンにはリラックス効果がある。またカテキンやビタミンCが含まれているので肌によく、虫歯や老化予防になるともいわれる。
- 二日酔いには朝一番の濃いめに淹れた緑茶がおすすめ。
〜通圓とは〜
通圓とは宇治川のたもとで通行人に茶を供したという茶人。通圓茶屋は 茶人通圓が宇治橋の東詰めで茶を売っていたお店のこと(岩波書店 広辞苑第五版による)。創業は平安時代末の永暦元年(1160年)までさかのぼり、初代通圓は源頼政に仕えて平家の軍とも戦った武士だという。この主従関係を物語った「通圓」という狂言が現代でも上演されている。
通圓
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SHAKTEA
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