急速に変化する時代を生きるためのヒント

コンピューター技術が進歩し続け、経済と社会が急速に変化する中で、人の働き方も進化することが求められている。不安定な世の中にあっても時代の波に流されず、自分らしく成長していくにはどうすればいいのだろう。常に自己投資を怠らず、さまざまなことに挑戦し続ける本田氏は、意外にも自らを「面倒くさがりや」と表現する。だからこそ工夫を重ね、少ない労力と時間で大きな成果が得られる働き方を模索してきた。その結果が、ビジネスパーソンとして多くのタスクをこなしながらも年の半分をハワイで過ごし、トレーニングを重ねてトライアスロンにも取り組むという本田氏の魅力的な生き方なのだ。今回のトークイベントでは、Blue Tree Management社社長で人気ブロガーの岡本裕明氏が聞き手を務め、本田氏から働き方・生き方のヒントとなるユニークな言葉の数々を引き出した。

 

組み合わせること〜トライアスロンから学ぶ働き方

Tシャツとジーンズにサングラスという爽やかな出で立ちで登場した本田氏は、トライアスロンの魅力について語ることでトークを始めた。マラソンも走る本田氏だが、走るだけだと身体への負担が大きい。それに比べてトライアスロンは、走ることを水泳と自転車という他の競技と組み合わせるため、身体への負担が軽減される。その上、やり遂げた時の達成感は非常に大きい。このように違うものを組み合わせ、変化を楽しむことは、働く上でも重要な考え方だ。情報技術の発達により、時代の流れはどんどん速くなってきている。高度経済成長時代には一つのことを極めることに重きが置かれたが、同じことが長くは続かない「非連続の時代」である現代には、さまざまなものを組み合わせて相乗効果を生み出すことが重要になってきているのだ。

 

組み合わせが生み出すオリジナリティ

では、何を組み合わせるのか。本田氏は「始まりはちょっとしたことかもしれない」と語る。例えば本田氏の知るハワイの不動産エージェントは、サーフィン好き。そこでサーフィンと不動産業を組み合わせ、サーファーにとって理想的な住宅に詳しいユニークな不動産エージェントとして競合相手との差別化に成功した。また、今回のトークイベントに客席から飛び入り参加した講談社の古賀義章氏は、インド版の「巨人の星」であるアニメ「スーラジ ザ・ライジング・スター」を企画・制作したことで知られる。これも、インドと「巨人の星」という意外な組み合わせでオリジナリティ溢れるビジネスを生み出した例だ。まずは、自分の得意なことや好きなこと、やりたいことを書き出した「タグ」を50個でも100個でも作ってみよう。反対に、自分の苦手なことややりたくないことを書き出した「アンチタグ」を作るのも良い。そうすることで、自分の目指す方向性や自分なりの組み合わせが見えてくるだろう。

 

パーソナル・ブランディング

自分の進みたい方向性が決まれば、次に重要になるのがパーソナル・ブランディング。自分がどういう人間で何ができるかということを他人に対して表現することだ。本田氏のように本を書いて出版することを目指しても良いし、ソーシャルメディアを活用しても良い。例えばダンサーならば、自らの踊る姿を撮影し、その映像をYouTu be で発信できる。あるいは岡本氏のように、ビジネスパーソンとしての考察をブログで発信することもできる。世の中に出してみると、自分にとっての自信作でも反応が薄いこともあれば、思いもよらなかったことに大きな反応が返ってくることもあるだろう。その反応を見ることで、自分の強みが他の人の役に立つかどうかを知り、パーソナル・ブランドを強化することができるのだ。

 

自分のユニークさを知るためには人と話すこと

もう一つ重要なのが、人と話すこと。特に好奇心旺盛な人と話すのが良い。実は本田氏は最初の著書を出版するずっと前から、さまざまな本のアイデアを出しては出版社に持ち込んでいた。しかし結果は「箸にも棒にも引っかからなかった」という。それがある時、自身の多読の方法について編集者に話すと「それ面白いですよ」という反応が返ってきた。そこで、それまで自分ではごく普通のことだと思っていた多読の方法を紹介する著書「レバレッジ・リーディング」を出版すると、これが大ヒットしたのだ。自分の強みについて客観的に考えるのは難しい。だからこそ一人で考えるのではなく、人と話すことが重要なのだ。

 

選択した生き方を楽しむこと

海外で生活する日本人は、すでに生き方に関して大きな選択したと言える。それは勇気のいる選択だ。しかし、選んだその生き方を十分に楽しんでいない人も多いのではないか。常に移動している本田氏には、それぞれの土地の良さがよくわかるという。バンクーバーでは到着早々スタンレーパークを走り、その素晴らしい環境に感動した。「あと一週間しかバンクーバーにいられなかったらどうするか」と考え、ここにいるからこそできることを楽しんでほしいと本田氏は語った。そうすることで、ビジネスのアイデアや自分なりの組み合わせも見えてくるかもしれない。

 

働き方・生き方について深く考えさせられたトークイベント

「僕は頭が固まっちゃうのが一番怖い」と話す本田氏。経営者としての仕事や執筆活動に加えて、日本の大学で教壇に立ったり、国内外で講演したりしながら、常に頭を柔らかくしている。今回のイベントでは参加者からの質問も多く、本田氏はそれぞれに丁寧に答えていた。「日本で就活に失敗してバンクーバーに来た」と話した若い参加者に対して本田氏は「就活に失敗はないと思う。失敗じゃなくて、よく考える時間。考えて自分の道を見つけたらすごく良いんじゃないかと思う」と語りかけた。

 

 

 

(取材 船山祐衣)

 

 

本田直之氏プロフィール

レバレッジコンサルティング株式会社 代表取締役社長兼CEO。外資系企業を経て、バックスグループの経営戦略、IR、IT戦略担当常務取締役として売上高15 億円から100億円へ成長させる。現在は東京とハワイに拠点を構え、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。上場企業を含む会計コンサルティング・アウトソーシング業個人向けファイナンシャル教育業、エンジニアアウトソーシング業、飲食業、ライフスタイルコンサルティング業など8社の社外取締役・顧問を兼務。

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