第三回日系プレース・コミュニティ賞で、コスモス・ボランティアグループ、代表大河内南穂子さんが特別功労賞を受賞する。日系プレース・コミュニティ賞は、日系プレースで活気溢れるコミュニティの実現を担った地域のリーダーや団体に感謝の意を表するものだ。

 

「今回の日系プレース・コミュニティ賞特別功労賞は、コスモス・ボランティアグループとともに、私が代表としてなら、受賞させていただきますとお願いしました。なぜなら、今まで会員の皆さんの多くが協力してくださり、私個人の実績ではないからです」と、大河内南穂子さん。

 

受賞は、コスモス・ボランティアグループが日系プレースの活気あるコミュニティ作りに、非常に大きな役割を果たしてきたことが評価された。代表して、9月21日に賞を受ける大河内南穂子さんは、日系プレース(現・日系文化センター博物館、以下日系センター)建設募金共同委員長、ナショナル日系ヘリテージセンター協会理事として、資金調達・募金活動に努めてきたほか、プログラム実行委員会で現在の基盤となる各クラスの設立にも尽力してきた。日系女性の会、すみれ会や弥生会を設立し、活動にも関わり、さらにコスモス・セミナーを立ち上げ、毎月、日系センターの会場で、ゲスト・スピーカーによるセミナーを開催している。

 

コスモス・ボランティアグループは会員数100人を誇るコスモス・セミナーを母体としている。そのうち20人というから、会員の5人に1人がボランティアの世話役と、ボランティア精神に溢れたメンバーが集まっている。

 

インタビューに先立つ8月31日、9月1日も、『日系祭り:日系の心』で、コスモス・ボランティアグループから実行委員として大河内さんをはじめ、お手伝いを快諾した16人の皆さんが活躍した。』日系祭り:日系の心』は、子どもや家族連れが楽しむことができる日本式の祭りで、彩月会による盆踊りや太鼓演奏、落語などのパフォーマンス、フード屋台、ヨーヨー釣り、射的といったゲームとアクティビティ満載のイベントで、日本文化のカナダへの紹介などを目指して、日系センターで行われた。

 

「先日の日系祭りでもピンクのはっぴ姿で、中心となって活躍されておられるのはコスモスの皆様でした。思わず平成の新撰組!?かと思ってしまうほど。バンクーバーの街にはなくてはならない存在になられていると感じます」と話すのは、Cascadia Eco Homesの社長で元企友会会長の吉武政治さん。吉武さんはコスモス・セミナーで講師を務めたこともある。

 

144回を数えるコスモス・セミナー

コスモス・ボランティアグループが役員や事務局スタッフなどを務める、コスモス・セミナーは、生涯学習として、カナダと日本の知識を高めることを目標に掲げて、日系センターがオープンした2000年から毎月、セミナーを開催していて、今年で14年目を迎える。国際人として異文化を学ぶために、在バンクーバー日本国総領事館の協力を得て、楠本祐一さん、多賀敏行さん、伊藤秀樹さんなど、歴代総領事、また大塚聖一総領事夫人のはるひさんが講演を行ったほか、「Octopus' Garden」のオーナー・シェフ、星加定俊さんの『家庭でできる年末の一品』、9月11日の新保豊さんによる『日本・世界の経済-私たちの生活はこれからどうなるのか?』など、多彩な内容が魅力だ。

 

「一人でなかなか経験できないことを学べるのも長続きした要素でしょう」と、大河内さんが語ったとおり、2007年度ドナルド・キーン日本文学翻訳賞を受賞された鵜沢梢さんの現代短歌に関する記念講演、御家流香道の宇野京子師範による香道と、充実したラインナップに、まるで玉手箱を開くような気持ちで次のセミナーを待つ会員が多いという。「セミナーが終わってお帰りになる際、コスモスの花が開くように、参加した方たちの顔が生き生きと輝くのを見ると、嬉しくて、準備の苦労など吹き飛んでしまいます」(大河内さん)

 

好評のセミナーには、毎月、会員約70人、一般参加者10人ほどと、計80人近くが集まり、日系センターを大いに活気付けている。「盛況をいただいているのは、6年前から間口を広げて、会員の方以外にも参加いただくようにしたのが大きいと思います」と、事務局長の中山佳子さんは語った。

 

「コスモス・セミナーは設立から数年間は、会員のみが参加できましたが、7年目を迎えて、これまで毎月、セミナーを続けてきて、十分、機は熟したのではないか。そろそろ一般広報してみては?との一言をきっかけに、2007年9月から会員以外も受け付けるようになりました。コスモス・セミナーは日本語のわかる女性であることが、入会の条件になっていたため、当初、講師以外はほぼ全員女性でしたが、現在、男性の参加者も増えました」(リトンかおりさん)。

 

「賞を頂くまでに成長できたのも運営方法にも秘訣があり、また、主宰の大河内さんが『柔軟かつ即決力がある』ということも、このバラエティーに富んだセミナー内容と共に、長続きしている秘訣かもしれません」(リトンかおりさん、中山佳子さん)

 

着物ファッションショーを日系センターで共催

セミナーだけではない。2008年4月には日系センターで、』着物から作る洋服ファッションショー』を愛知県豊橋市の松操学園と共催した。このショーは日加修好80周年記念イベントとして在バンクーバー日本国総領事館から認定された特別企画で、松操学園から10人が来加。学園側で50〜60年前の訪問着をはじめ、タンスの底に眠っていた着物などを、洋服にリメイクしたものを、コスモス・セミナーの会員やその知人がモデルとして登場し紹介した。

 

続いて2011年には、日系センターの依頼で、『日系秋祭り』の一環として、日系センターとコスモス・セミナーの共催で『着物ショー』を行った。『日系秋祭り』は、今までセンターに来るきっかけのなかった新移住者や、ローカルのカナダ人にもその存在を知ってほしい、利用してもらいたいという願いを込めたものだ。『着物ショー』では、すべてローカルでそろえた美しい振袖、訪問着、紬、江戸褄などを、『さくらさくら』といった日本の歌をBGMに、コスモス・セミナー会員や関係者合わせて25人がモデルとなって披露した。色とりどりの着物に加え、男性モデルによる羽織袴などで300人の観客を魅了。文化交流の場としての日系センターのアピールに大いに寄与した。

 

「特別功労賞受賞については、スティーブストンのゲリーポイントパークにある桜の樹に、真っ先に報告に行きました」という大河内さん。この桜の樹は、コスモス・セミナーの名付け親でもある、亡くなった夫の訓夫さんのお墓は不要との遺言により、和歌山県人会で行っていた植樹に参加して寄贈したものだ。また、インタビューの翌々日には、今後の日系コミュニティの募金活動で役立てるためと、アボツフォード空港の格納庫を利用した大規模バザーにもボランティア参加した程のフットワークの軽さだ。コスモス・ボランティアグループのチームワークと和の心を大切にした、今後の益々の活躍に期待したい。

 

 

(取材 西川桂子)

 

 

コスモス・セミナー
www.cosmos-seminar.com

 

主宰大河内南穂子さんのホームページ
www.naokocanada.com

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