瓦礫清掃
これまでの経過

東日本大震災で起きた巨大津波により約500万トンの瓦礫が太平洋に流出。その一部は日本沿岸付近の海底に堆積し、残りの約150万トンが北米西海岸に漂着するであろうと推計されている。
今年3月13日、日本政府はカナダへ100万ドル(約9400万円)の瓦礫清掃見舞金を支払うことを発表。通常は漂着した国で清掃・処理するものだが、これは日本政府がカナダ政府と付近住民への配慮から資金援助を提供したもの。
今年に入り、バンクーバーの日本人学生ボランティア団体『Japan Love Project』がバンクーバー島で瓦礫清掃と分別を実行した。
1回目の3月9・10日には同メンバー10人とボランティア22人が参加し、ユクーレット市とトフィーノ市約20キロ間に流れ着いた瓦礫を清掃し、発泡スチロール、ペットボトル、家屋の木材ほかタイヤ、釣具などゴミ袋43袋を回収。終了後、全員で献花・黙祷を行った。
2回目の5月18・19日にはプライベートで在バンクーバー日本国総領事館の岡田誠司総領事を含む4人が加わり、ボランティア、現地サポートなど合計66人が参加。ボートで離島に向かい、無人島での清掃も行った。
「海岸線には行きにくいところもたくさんありました」と報告した岡田総領事は、学生らの献身的な貢献に感謝の言葉を述べた。

 

震災瓦礫清掃見舞金
その分配は?

これまでに連邦政府が約40万ドル、BC州政府が20万から30万ドルを瓦礫清掃のために費やしており、日本政府が提供した100万カナダドルについては、BC州政府が分配を検討中。沿岸地域の自治体、ファーストネーションは清掃助成金の申請ができると、連邦政府環境省のポール・クラックナー氏が説明した。(www.tsunamidebrisbc.ca参照)
BC州環境副大臣補ジム・スタンデン氏によると、震災瓦礫はBC州沿岸に漂着してはいるものの、その量は現時点で予測以下である。これは季節や気候、偏西風、海流の影響で、到達時期に差が出ているものと推測される。
まず初めに発砲スチロールのように軽いもの、次に木材が漂着する。遺体の漂着に関しては、これまでに確認されたものはない。
瓦礫は回収後、リサイクル、再利用、ゴミ処理地へと分別され、船の一部やセメントタンクなどはビクトリア港に引船され、放射能調査に回された。

 

 

洋上漂流物の危険度

津波によって太平洋へ流出した家屋や自動車、海上にあった漁船やボートが震災直後、塊となって洋上に漂流する様子が報道されたが、その塊はどうなったのか。一部が海中に沈んだことや、散らばったり陸に引き揚げられたことが考えられる。
バンクーバー水族館にはカナダ海岸線清掃プログラム(Great Canadian Shoreline Cleanup)があり、毎年9月の3週目に大規模な清掃が行われている。震災瓦礫に関しては現時点で2000人がボランティアとして登録している。(www.shorelinecleanup.ca参照)
「瓦礫の破片を詰まらせて死ぬ魚や水鳥がいます。魚の体内にプラスチックの破片から出る化学物質が吸収される危険性もあります。がれきの中には灯油やガスの容器もあり、海洋生物や生態系に悪影響がないかも調査しています」と同プログラムのマネジャーのジル・ドワイヤー氏。
BC州の海岸には毎年煙草の吸殻、食べ物、ビニール袋、ペットボトル(数量順)など大量のゴミが流れ着き、震災瓦礫はその6分の1に過ぎないことも事実だ。

 

 

沿岸での分別作業

ハワイ大学の研究発表では、震災瓦礫の漂着は津波発生後2年から5年続くと見られ、BC州沿岸では3年後にあたる2014年春にピークを迎えるであろうと予測されている。  アラスカや太平洋上にあるハイダ・グアイ島の海岸には、無数の発砲スチロールが打ち上げられた。ユクーレット市環境・緊急対策課マネジャーのカーラ・ロビソン氏は、バンクーバー島沿岸は入り組んだ地形や崖、小さな島々も多くアクセスが難しいほか、悪天候の秋から冬場は収集作業が困難であること、またバンクーバー島沖で大きな瓦礫がボートに衝突するなど、海洋上でのトラブルについても言及した。
「5月の瓦礫清掃では岡田総領事がテーブルを見つけました」と写真を見せながら、漂着した柱や梁の一部は、日本家屋の材料や規定のサイズを知ることで分別しやすくなったと報告した。

 

続けていくことが大切

学生たちが中心となって始めたJapan Love Project(www.japanlove.ca)からは代表で村田功輝さんと横田花子さんが活動状況を報告。募金活動による3万ドル以上の義援金はカナダ赤十字社を通して日本へ送られた。
今年からは活動の中心を瓦礫清掃へと移行。地元のボランティアにはわかりにくい日本語表記がある容器などの分別に大きな手助けとなった。ボートでユクーレット付近を回ったメンバーは、満ち潮で危険な場所や入って行けない岩場にも大量のがれきを確認した。
アルバイトで貯めたお金をバンクーバー島への交通費にあてており「僕たちは学生なので試験もあり、お金もありません」と村田さんが一般への協力を訴えた。
学生にとって夏は交替時期でもある。日本に拠点を移す村田さんは「9月になってまた新しい学生が加わってくれることに期待しています。8月にはカナダの軍人が、有給休暇を使って清掃ボランティアをするという話を聞いています。続けることが大切だと思います」と話している。

 

 

震災瓦礫は、毎年海に流される地上のゴミの6分の1に過ぎない点、洋上に漂流するペットボトルは容易に分解されないという事実を聞き「なぜ今になって」と問う地元メディアに対し、岡田総領事が「みんなが一緒に協力しあう時期ではないでしょうか」と提唱した。

 

 

取材 ルイーズ阿久沢

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。