①非常用持出し品

防災用品チェックリストは2種類に分かれる。まずは非常用持出し品だ。これは非難時に持ち出すもので、リュックサックに入れておくことを勧める。やはりリュックサックだと両手が使えて便利。しかも小さな子供がいる家庭では、震災時に大人がひとりの場合、空いている手で子供を抱くことが可能だ。
そして肝心の中身だが、まずは食料。成人の水の一日の摂取量は2~3リットルと言われており、これを家族の人数分準備してしまうと、例えば大人2人、幼児2人の4人家族の場合、10リットルすなわち10キロ分が必要となってしまう。緊急時に水10キロに加え幼児2人を素早く運ぶのは、女性にとってはかなり難しいのは言うまでもない。ここでは、人数分関係なく、自分ひとりで持てる分だけを準備しておくことを念頭に置いて欲しい。また食料のリストに、チョコレート・飴とあるが、一見健康のことを考えて躊躇してしまうかもしれない。だが、これらの菓子は軽く、また糖分が多いので空腹感を紛らわしてくれる。しかも精神的安心感も与えてくれるため、非難時には大活躍すると言う。
次に救急用品。ここには普段服用している薬と、薬の情報をコピーして入れておくと良いだろう。災害現場に医者が来た際、病状を長々と説明する手間を省き、さっと見せるだけで理解してもらえる。衛生品では、オムツ、生理用品、靴下、下着は必需品となってくる。日本の災害現場ではどうしても食糧が中心に届けられ、衛生品は手に入れるのが困難だと言う。
現金・貴重品に関しては、ふだんから緊急時のリュックサックに入れておけないので、いつでも持ち出せる場所に置いておきたい。生活用品は、自家発電式懐中電灯と乾電池式懐中電灯があれば便利だろう。また缶きりやアーミーナイフ、殺菌ティッシュあるいは殺菌ジェルも忘れずに。
非常用持出し用品を準備するポイントは「いかにコンパクトにするか。ただリスト通りに詰めるのではなくて、各家庭の事情に応じて準備すること。そして詰め終ったら実際に持ってみること。重たすぎて運べないなどならないように」と小川さんは強調する。

②非常用備蓄品

非常用備蓄品は、災害時に住居はまだあるが、水や食糧など必要物資が手に入らない場合を想定して常備しておくものだ。よって、救助隊や他機関の救出までの最低限食料確保として3日分を準備しておくのが好ましいだろう。「72時間の壁」と言う言葉が存在する通り、災害が起きてから最初の72時間すなわち最初の3日間が、生存率が一番高いと言われている。
だが、今回の東日本大震災の時のように、場所によっては陸路・空路も途絶え、しっかりとした救援物資が届くのに一週間以上経った場所も出てくる。なので居住地によってはそれ以上の準備をしておきたい。また実際に災害に遭い非常用備蓄品を使用する場合も、もしものことを考え、すべて3日以内に使ってしまうのではなく、できるだけ長く使用していってもらいたい。
また「ふだんから備蓄品の置き場所の確認も」と小川さんは加える。どうやら準備していたものの、どこに置いたか忘れてしまったというケースもあるようだ。

家にいる時に地震が起きた。どうする?

まずは火元の確認。火を消す。それから家族の安全確認。子供たちは家のどこにいるか。テーブルの下、ベッドの下など、安全な位置へ移動させる。(ふだんから自分の家で安全な位置はどこかを確認しておくこと。ガラス張りが多いバンクーバーの住居は地震の際にガラスが落ちてくる可能性が高いと言われているのでそこは避ける)揺れが落ち着くまで必ず安全な場所でじっとしておくこと。そして揺れがおさまったら①の持出し用品を持って外へ。ふだん自分たちが予定している避難場所(本紙1月17日号に記載)へ行く。

最後に

防災対策で一番大切なのは、今回紹介したリストを交えて、ふだんから緊急時に関して家族で話し合い認識しておくこと。家庭の事情に合わせて防災用品リストを準備し、さらに避難場所はどこにするか、家族の安否確認はどうするか、携帯電話が使えない場合はどうやってコミュニケーションをとるか、日中なら誰が子供たちを迎えに行くかなど、しっかりと決めておけば、災害に遭ったときに慌てふためくことなく冷静に行動できるだろう。

 

小川学 プロフィール

1976年 千葉県九十九里町生まれ
1998年 山武郡市広域行政組合消防本部にて消防吏員 拝命、消防・救助・救急隊員として活躍
2003年 渡加
2006年 Body Project & Co.設立

現在もBody Project & Coの代表として、日本・カナダ代表選手から一般スポーツ愛好家の体調管理/マネージングまで幅広く活動中。仕事の傍ら日本警察消防スポーツ連盟カナダ支部長として自身の経験を踏まえた防災意識・リスクマネージメント向上にも努めている。
◆Body Project & Co:www.bodyprojectfamily.com
◆日本警察消防スポーツ連盟事務局:www17.ocn.ne.jp/~jpfsf/index2.html
◆Japan Police Fire Sports Federation Canada Branch (Facebook)
■参照
防災用品チェックリストは下記ウェブサイトからダウンロードできる。
www.honda.co.jp/bosai/check/index.html
(取材 小林昌子)

読者の皆様へ

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