10周年に寄せて音楽監督・首席指揮者 ケン・シェ
優れた若手音楽家にプロと同じ様な設定でオーケストラと演奏するチャンスを与える。10年前、VMOはそんな使命を持って誕生した。
お手本はマイアミにあるニューワールド・シンフォニーオーケストラ。世界各国からオーディションで優れた若い演奏家を選び、訓練してプロとして送り出すというトレーニング・オーケストラだ。
「始めは15人のオーケストラでスタートしたVMOも毎年メンバーが増え、高い演奏技術を身に付けてきました。ソリストとしてVMOと共演したり、VMOを経てプロのオーケストラに移るなど多くの演奏家が巣立っていきました。プロの演奏家がVMOに加わることもあり、うれしい限りです。メンバー、スタッフ、ボランティアたちの協力と献身なしにはできなかったことだと思います」と音楽監督で首席指揮者のケン・シェ氏。
2009年には恩師、故岡部守弘氏を偲んで、日系合唱団を交えて『千の風になって』を演奏し大きな話題を呼んだ。
楽しく習える音楽教育を
子どもに音楽の英才教育を、と夢中になる親が多いが、シェ氏の両親は息子をプロの音楽家に育てようと思ったことはなかったという。「大切なのは楽しく習い事をすること」。
シェ氏はUBCでピアノと打楽器を専攻後、桐朋学園と洗足学園にて指揮課程を修了。2003年にVMOを設立した翌年にはVSO(バンクーバーシンフォニーオーケストラ)のアシスタント指揮に抜擢された。
現在は兵庫芸術文化センター管弦楽団ほか日本での活動も多く、昨年12月には東京と大阪でベートーベンの『第九』を指揮。この夏は九州交響楽団とともに九州各地を回るなど、日本での人気も高い。
スーパーキッズも夢の一つ
故岡部守弘氏からバトンを受け取ったように、後輩にもスポットを当てていきたいという考えから、VMOのコンサートではアシスタント指揮者がタクトを振ることもしばしば。
兵庫の『スーパーキッズ』のようにトップクラスのジュニア演奏家を選び、合同練習や合宿、ステージ経験など、小学生から高校生までのオーケストラを指導していくことも一つの夢。
10周年を迎えたVMOは、さらに次の10年に向かって計画中だ。
4人のソリストたち
9月9日のコンサートでは長井明氏(VSO終身名誉コンサートマスター)がコンサートマスターおよびメンターとしてVMOをリード。10周年に寄せたアラン・メイナード氏の新作も発表する。ベートーベンの交響曲第7番や、各楽器の特色を生かした音色で妖精や動物の住む幻想的な世界を表現するメンデルスゾーンの『夏の夜の夢』も聴きどころ。
ハイドンの『協奏交響曲変ロ長調』ではオーディションで選ばれた4人のソリストが、バイオリン、チェロ、オーボエ、バスーンの魅力を紹介してくれる。
スーファン・イウ(Su-Fan Yiu)バイオリン
台湾生まれのバンクーバー育ち。音楽家の両親のもとに生まれたスーファンさんは4歳でバイオリンを始め、1999年にバンクーバー・ユース・シンフォニー・オーケストラと共演してソロ・デビュー。現在ミシガン大学の博士課程(バイオリン演奏)に在籍。
「数年前にVMOに参加したことがありますが、ソリストとしてVMOと共演するのは初めてです。マエストロ(ケン・シェ氏)はダイナミックでカリスマ的でした。アートとしての音楽から感化される気持ちを演奏を通して皆さんに伝えられるよう、今後も追及していきたいと思います」
ルーク・キム(Luke Y. Kim)チェロ
深い響きが好きでチェロを始めたというルークさんは11才でソウル・シンフォニー・オーケストラと共演後、数々のコンクール優勝を果たしながらソリストとしてVSOやUBCシンフォニーオーケストラと共演した。2年前のVMOのコンサートではソリストとしてバイオリンの松本蘭さん、ピアノのエイミー・リーさんと一緒にベートーべンのトリプル・コンチェルトを演奏した。定期的にVSOでも演奏している。
「将来は幅広い知識を持った演奏家になりたい」と、9月からUBC大学院の音楽学部演奏科修士課程に入る。
エミリー・ユー(Emily Yu)オーボエ
UBC音楽学部(オーボエ演奏)、ボストン大学で修士課程を修了後、メキシコに渡ったエミリーさんは、市営や国営のオーケストラなどで演奏活動を行った。2010年にバンクーバーに戻ってからはVSOやVMOで演奏しながら、キャピラノ大学でアート&エンターテイメント管理証書を取得。現在バンクーバー・ユース・シンフォニー・オーケストラの運営にも携わっている。
トリスタン・ランバート(Tristan Lambert)バスーン(木管楽器)
『ピーターと狼』(プロコフィエフ作品)に影響されて11才でバスーンを始め、翌年にはバンクーバー・ユース・シンフォニー・オーケストラに参加。UBC大学院音楽学部で修士課程を修了。メンデルスゾーンのバイオリン・コンチェルトなど、通常のバスーンのレパートリー以外の曲でもデリケートで微妙なバスーンの魅力を紹介している。
人当たりの良さとソフトな語りの音楽談義が好評。今シーズンでVMO参加3年目を迎える。
VMO バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ 10周年記念オープニングコンサート
9月9日(日)
マイケルJフォックス・シアター
7373 Macpherson Avenue, Burnaby, BC V5J 2B7
ケン・シェ(指揮)、スーファン・イウ(バイオリン)、ルーク・キム(チェロ)、エミリー・ユー(オーボエ)、トリスタン・ランバート(バスーン)
会場1:15pm (1:30pmよりプリ・コンサート・トーク)開演:2:00pm
チケット:25ドル(10枚以上割引)
電話(604)876-9397 メール: This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.
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