2019年11月14日 第46号

第6回目となる「テリー・フォックスラン(TFR) in 札幌」が10月13日、北海道インターナショナルスクール(札幌市豊平区)で開催された。当日は過去最大級の台風19号が日本に上陸する中で開催も危ぶまれたが、会場は台風を免れたため、無事に決行。今年度はランニングコースとルールを変更し、競技性を弱めることでTFRの目的である「テリー・フォックスの求めたがん研究資金集め」という開催時の原点に改めて立ち返った。肌寒い中でも、大会方針に賛同する150人の参加者が集まり、思い思いに歩いたり、走ったりしながら「希望のマラソン」を楽しんだ。

 

︎みんなで記念写真

 

TFRとは

 TFRは1981年に亡くなったカナダ人の義足ランナーのテリー・フォックスの遺志を継いで世界各国で開催されている、がん研究資金を募るチャリティーイベントだ。札幌では2014年に現在の体制で初開催され、今回が6回目となる。今年度は実行委員会委員15人、当日ボランティア約20人、医療関係者による救護班6人でイベントを運営した。ボランティアはカナダ人や日本人、10〜60代まで、様々な年齢層が参加した。

 開会式では実行委員会のKaori Ratzliff委員長がこのランの意義や、がんとの闘いのための寄附金協力を呼びかけた。また、閉会式の中ではカナダ人のMark Hamiltonさん(東海大学札幌キャンパス、教授)が本場カナダのTFRでの様子を語り、北海道インターナショナルスクールのBarry Ratzliff 学校長は「当校にもがんで命を落とした生徒がいる。学校にとっても生徒たちにとっても、この Run に参加する意義は大きい」と話した。

 

2019年の新しい試み

 今回はランニングコースとして有名な豊平川河川敷から、北海道インターナショナルスクールの校庭に会場を変更した。河川敷の会場は自転車の接触事故の可能性が高いことや、コース上にトイレ設備が少ないことなどもあり、将来の運営を見据えての変更となった。また、昨年までは1〜10キロメートルの距離別で行っていたマラソンを15分と60分の時間制に変更した。「スピードや順位を競うためのマラソンではない」というイベントの趣旨があるものの、回を重ねるにつれ、参加者の中からも競技性が高まっていると不安視する声があったという。当日は天候の兼ね合いから60分を30分に短縮したが、時間制となったことで参加者は自分のペースで和気あいあいとラン&ウォークを楽しんだ。親子連れの参加者も多かったという。寄付金額は速報値で約48万円となった。

 会場ではラン&ウォークのほか、お菓子すくいなど子ども向けの露店や生バンド演奏、北海道庁による2020年「北海道・アルバータ州姉妹都市提携40周年記念」PRのブースが設置された。特に露店は子どもたちに大好評で、多くの寄付金を集めた。

 

日本開催までの道のり

 TFRの日本開催への道は簡単ではなかった。2014年以前にも札幌において個人でTFRを開催したカナダ人がおり、彼がカナダ政府札幌通商事務所の辻尾晋一代表に、カナダ国旗などの貸与について相談したことがきっかけとなった。辻尾代表はTFRの趣旨に賛同し、組織として北海道で長期的に開催していきたいと活動を開始。しかし当時は取引先やマスコミ関係者に話を持ちかけたものの、なかなか理解を得られなかったという。そこで現実行委員会のMarkさんに相談したところ、すぐに賛同を得られ、Barryさんや北海道カナダ協会の協力の下、2014年にようやく札幌での開催が実現した。TFRはカナダでは有名な活動であるものの、日本ではほぼ無名。第1回目の開催は広報活動も十分ではなく、参加する人がいるのだろうかと当日まで不安だったという。だが、当日は天候に恵まれ、約80人もの参加者が集まった。その後はイベントの参加者の口コミにより、参加者が年々拡大。スポーツ用品店やスポーツ施設へのポスター掲示やチラシの配布、ラジオ局のマラソン番組での告知など広報活動も積極的に行った。その結果、2018年に開催した第5回目のランでは過去最大となる約600人以上の参加者が集まる大規模のイベントとなった。

 

今後のTFR in札幌

 しかし参加者が増えた一方で、ランの競技性が増し、TFRの開催当初の趣旨と方針が少々ずれてきてしまったと運営関係者の多くが感じ始めたという。そのため運営方針を見直し、大会を一新した。今大会ではランの距離制を止めたことで、競技性を求める参加者は不参加になったとみられる。台風の予報なども重なり、参加者は減少した。寄付金も昨年に比べると減ったが、実行委員会の金子邦之さんは「一時的に参加者、寄附金は少なくなったとしても、TFRを少しずつでも拡大していくことが、このランを長く継続するためには意義がある」とTFRの長期的な活動を視野にいれている。

 TFRの日本での知名度はまだ低く、TFRの活動を日本中に広げるための道のりはまだまだ険しい。だが、関係者らは前向きに日々活動に取り組んでいる。「日々がん研究は進歩しているものの、がんで苦しんでいる人たちやそのご家族が1日でも早くその苦しみから解放される日のために、私たちが今できることを多くの人たちと一緒に取り組んでいきたい」と遠い日本でもテリーの遺志を伝え継いでいる。

(取材 猪木原 由貴/写真提供 北海道テリーフォックス・ラン実行委員会)

 

︎歩く人、走る人

 

︎思い思いにRun&Walk

 

︎バンドに合わせ疾走する人

 

︎いつも車いすで参加してくれる参加者

 

︎子ども向けの露店

 

︎音楽のボランティア

 

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