2019年11月21日 第47号
今年5月、山口に斉藤光一カメラマンと一緒に工藤壮人選手を訪ねた。Jリーグに復帰後、これが2回目となる。2年前には広島県吉田にある広島サンフレッチェの練習場に会いに行った。
工藤壮人選手がバンクーバー・ホワイトキャップスFCに所属していたのは2016年シーズン。日本人選手初のフォワードとして期待されたが、シーズン途中にあごの骨を折る大けが、後半は出場機会に恵まれず消化不良のままシーズンを終えた。 そしてシーズンオフにJ1広島サンフレッチェに電撃移籍。今季は期限付きでJ2山口レノファに移籍しプレーしている。
山口では維新みらいふスタジアムでレノファの試合を観戦した。ファンも含めて会場全体がアットホームな雰囲気に包まれていたのが印象的だ。そういう意味ではホワイトキャップスに共通するものがあるかもしれない。5月の試合では残念ながら工藤選手のプレーは見られなかったが、試合後に会うことができた。会うと必ず笑顔で迎えてくれるホワイトキャップス時代と変わらない工藤選手だった。
その時にインタビューする時間はなかったが、後日メールで答えてくれた。J2での経験、バンクーバーへの思いなどを聞いた。
︎大宮アルディージャ戦での試合前練習で
チームが変わってもサッカーに向き合う姿勢は変わらない
Q:2016年にホワイトキャップスから、2017年サンフレッチェ、2019年レノファとサッカー環境が変わっていますが、自分自身のサッカーが変わったと感じることはありますか?
A:ストライカーとして、ゴールに直結するような動きを常に意識してプレーすることは今も2016年の時も変わりません。その点は、プロの世界に入ってから何一つ変わってないといえます。
ただ、歳を重ねるにつれてチーム内での役割は変わってきたように思います。プロに入りたての頃はがむしゃらに、得点を取ることだけにフォーカスしていましたが、今はチームにとって何が勝利のために最善なチョイスなのか、チームメイトとのバランスや試合の流れを考えてプレーできるようになりました。経験を積んだことで、視野を広くもてるようになった、といったところでしょうか。
Q:今季はレノファでここまでフル出場の機会が少なく、ホワイトキャップス在籍時の状況に似ているように思います。その中でも現在(質問時点)3得点(今季4得点)をあげていますが、常に状態をベストに保つために心がけていることはありますか?
A:どんな時でもブレないマインドでいること。毎試合、自分がゴールを決めてチームが勝利するイメージで試合に臨むこと。
そのために日々の練習で試合時に120%のパワーを出せる準備をしています。念入りなマッサージやストレッチはケガをしない身体づくりには欠かさないですし、疲労を溜めないために睡眠のとり方にも気を付けています。
食事の管理は妻に任せていますが、そのおかげでプロの世界に入ってから風邪や体調不良で練習や試合を休んだことは1度もありません。たった1日の練習でも序列が変わってしまうことがあるので、しっかり体調管理をすることもプロの仕事だと思っています。
J2で試合をするということ
Q:J2で選手生活を送るのはサッカー人生では初めてだと思いますが、J2のサッカーはJ1とは違いますか? 違いを感じるとすれば、どのようなところか教えてください。
A:実は、柏レイソル時代のプロ1年目にチームがJ1からJ2へ降格しているので、翌年のプロ2年目でJ2リーグを経験しています。
J2はJ1より若い選手の試合出場が多く、いい意味でみんなガツガツとしていて前のめりな印象を受けますね。
地方クラブが多いので、長時間のバス移動もあり、移動の負担はJ1と比べると確かに大きいです。MLSでは飛行機を乗り継ぎながら北米中を飛び回っていましたから、だいぶ鍛えられましたけど。笑
Q:J2には、以前J1だったチームも多く、試合を見に行った日も大宮でしたし、前に所属していた柏レイソルも現在J2です。J2のサッカーのレベルについて感想を聞かせてください。
A:僕がJ2を経験した2010年の頃より、確実にレベルは上がっていると思います。今のJ2には誰もが知っているようなスター選手(中村俊輔選手、小野伸二選手など)も活躍しています。彼らのように長年日本代表をけん引してきた選手と対戦できるというのは、やはり気持ちが高ぶりますね。
今季はJ2クラブの力が拮抗しているので、順位表を見ても勝ち点に大きな差はなく、毎試合ごとに順位が入れ替わるほど。混戦状態が続いているので、最終節までJ1昇格の目標は諦めません。
山口レノファについて
Q:5月に山口へ行った時に、チームを支えている人々やファンの感じがすごくアットホームな雰囲気に感じたのですが、ファンも含めたチーム全体の感想を聞かせてください。
A:地域リーグから2006年にJリーグに参入したばかりの新しいクラブなので、昔からサポートしてくださっているスポンサーさんも多く、地域をあげて応援してくれているのが伝わってきます。
僕の応援歌もシーズン開幕前にはできていましたし、移籍後すぐの選手にも応援歌を作ってくれていて。他チームに移籍した選手でも対戦後のあいさつの際、当時の応援歌で鼓舞するサポーターの姿を見て、あたたかさを感じましたね。
レノファ山口は山口県で唯一のプロのスポーツクラブ。勝ち負けに関係なく、どんな時でも背中を押してくれるサポーターに支えられています。
今年はバンクーバーでのサッカー教室開催を楽しみに
Q:昨年末には家族も増え、チーム環境も変わり、忙しい日々だとは思いますが、今年の12月にバンクーバーでサッカー教室を開く予定はありますか?
A:昨年はちょうど長女の誕生時期と重なり、スクールを開催することができませんでしたが、今年こそはまた12月のシーズンオフに実施できるよう、現在日程などを調整中です。詳細が決まり次第、アナウンスさせてください!
Q:最後に、バンクーバーのファンにメッセージをお願いします。
A:日本に帰ってきてからも、ホワイトキャップスのユニフォームを着て試合へ応援に来てくれた方がいたり、Instagramでメッセージをくださったり、とても励みになっています。またお会いできる日を楽しみに! 残りのシーズン頑張ります。
質問への回答は10月に届いた。そのため多少のタイムラグがある。工藤選手は11月14日に右腓腹筋損傷と診断され、復帰まで3週間程度の加療予定とチームが発表した。レノファは今季11月24日を最終戦とするため、今季中の復帰はない。
しかし、12月にバンクーバーでサッカークリニックが開催されることが決定した。選手として1年しか滞在しなかったバンクーバーだが、サッカーファンや日系コミュニティの人々との出会いに恵まれ、今でもバンクーバーに戻りたいという思いが強いという。「だから1年に1回でもバンクーバーでみなさんに会えるのを楽しみにしています」とメッセージを送った。
*サッカークリニック情報*
KUDO FAMILY SOCCER CLINIC 2019 in VANCOUVER
12月14日(土)2時-4時 Grade 1-3
12月15日(日)2時-4時 Grade 4-6
参加費:70ドル(参加特典あり)
会場: Urban Soccer Centre; 20 Orwell St. Unit A, North Vancouver
申し込みなど詳細情報: www.facebook.com/masato.kudo.official/
(取材 三島直美/写真 斉藤光一)
︎巨大スクリーンで紹介される。レノファでは背番号は19
︎5月11日大宮アルディージャとの試合は2-2の引き分けに終わった
︎ハーフタイムでの工藤選手。この日はサブでベンチ入り